「魔力を渡そう」

 ヴェルゼの手から青っぽい光が出てきて、それを私に向かって放った。

「花を、もう一度出してみるといい」

 魔力を本当に送ってくれたのか、力がみなぎる気がした。軽く魔法で花を出してみると、すごい勢いで手から花が沢山出てきて、辺り一面花だらけになる。はっとして、手の平をみた。

「ヴェルゼ様が、ルピナス様のために魔力を……」

 手の平を眺めていると、後ろから声がした。振り向くと白い衣を身に纏い、短く艶やかな白髪(はくはく)が似合っていて、これまたヴェルゼに負けない程に美しい男が立っていた。

「初めまして、わたくしは悪魔エアリーと申します。ヴェルゼ様の執事をしております。以後、お見知りおきを」
「わたくしは、ルピナスと申します」
 お互いに自らの手を胸に添え、自己紹介をし合う。

「ヴェルゼ様の魔力はまだ完全に復活したわけではないのに、それでもお渡しになるとは……やはりあの時から本当にヴェルゼ様のお心の中にはルピナス様が……」

 ヴェルゼの表情が尖る。

「おふたりはもっとお互いを知っていた方がよかったのです。あの時もお互いをもっと知っていれば……」
「だまれ……」

 ヴェルゼは手から何かを出そうとした。

「申し訳ございません、ヴェルゼ様」

 エアリーはヴェルゼにバレないように、私に向かって目配せをした。これは後で教えてくれるという合図だろうか。解読は難しい。


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