住んでいるこの家は、豪邸だと周りからは羨ましがられるけれど、私にとってはただの檻のようなもの。そんな檻の中で大きな溜息をつきながら、花魔法を使い、花を庭園いっぱいにしている時だった。
「そなたを迎えにきた」
突然、声がした。
声する方を向くと、キラキラと眩しく見える程の、凛とした美しい男が立っていた。黒い衣を身に纏うその男の身長は高く、漆黒の長い髪も美しい。顔立ちもひとつひとつのパーツが整っている。はっきりとした二重の目力も強く、その男の世界に引き込まれそうになる。
一目見ただけでドキリと心臓が高鳴る。
この彼に纏った空気を知っている。かつて出会ったことのあるような、どこか懐かしい香りがした。
そして、確実に人間じゃない気配もした。地位の高い悪魔とは出会ったことはないけれど、彼らは美貌で人々を惑わすという。もしかして――。
「私が嫁ぐ予定の悪魔ですか?」
「……」
聞き方が不味かっただろうか。目の前の男は何も返事をしない。嫁ぐまではあと一年だし。私が嫁ぐのは、別の悪魔だろうか。けれど今「君を迎えに来た」って……。
「そう、だ。我の名は悪魔ヴェルゼ。詳しくいうと、君を知りに来た」
「私を知りに?」
「どうか一年間、共にすごして欲しい。それから我と一生を共にするか判断して欲しい。我はそなたと共に一生を過ごしたい。だが、無理強いは、しない」
真剣な眼差しでその悪魔は見つめてきた。
どうせ、どう足掻いてもこの悪魔とは一緒になるしかない運命だし、でも――。
「花か、懐かしいな」
言葉に詰まっているとヴェルゼは庭園を眺めながら言った。
「そなたを迎えにきた」
突然、声がした。
声する方を向くと、キラキラと眩しく見える程の、凛とした美しい男が立っていた。黒い衣を身に纏うその男の身長は高く、漆黒の長い髪も美しい。顔立ちもひとつひとつのパーツが整っている。はっきりとした二重の目力も強く、その男の世界に引き込まれそうになる。
一目見ただけでドキリと心臓が高鳴る。
この彼に纏った空気を知っている。かつて出会ったことのあるような、どこか懐かしい香りがした。
そして、確実に人間じゃない気配もした。地位の高い悪魔とは出会ったことはないけれど、彼らは美貌で人々を惑わすという。もしかして――。
「私が嫁ぐ予定の悪魔ですか?」
「……」
聞き方が不味かっただろうか。目の前の男は何も返事をしない。嫁ぐまではあと一年だし。私が嫁ぐのは、別の悪魔だろうか。けれど今「君を迎えに来た」って……。
「そう、だ。我の名は悪魔ヴェルゼ。詳しくいうと、君を知りに来た」
「私を知りに?」
「どうか一年間、共にすごして欲しい。それから我と一生を共にするか判断して欲しい。我はそなたと共に一生を過ごしたい。だが、無理強いは、しない」
真剣な眼差しでその悪魔は見つめてきた。
どうせ、どう足掻いてもこの悪魔とは一緒になるしかない運命だし、でも――。
「花か、懐かしいな」
言葉に詰まっているとヴェルゼは庭園を眺めながら言った。