就寝時間。私は花の小屋の中で花魔法を使い、フワフワな花ベッドを作り眠る準備をした。ヴェルゼとエアリーは外で眠るという。

「おやすみなさい」
「ルピナス、結界を張ってあるから何も起こらないと思うが、何かあればすぐに鈴を鳴らせ」
「ルピナス様、それではよい夢を」

 ふたりは外に出ていった。小さなランプの明かりを消すと真っ暗。そして、しんと静まる中で遠くから獣の吠える音がした。けれど外にはふたりがいるから不安はなかった。

 エアリーが、ヴェルゼの過去の記憶を送ると言っていたから、ベッドに座り待機する。

 しばらくすると、キンと頭の中で音がした。するすると映像が頭の中に流れてくる。今流れている映像はヴェルゼの視点? だとしたらこの街は魔界だろうか。暗めだけど、人界でもありそうな街並みで、いくつも建物が立っている。目の前に、今日花魔法で作ったものよりも小さな花の小屋が現れた。それが炎の魔法でぼうっと燃え、一瞬で消えた。それからしばらくすると、とても大きくて立派な石造りの建物に入ってゆく。目の前にはひとりの女がいた。その人は私と同じ顔をしていた。時間が巻き戻る前の、ヴェルゼの元へ嫁いだ私だろう。表情は暗い。「無駄に魔力を使うな。あの小屋は消しておいた。花が嫌いだ。あの見た目も匂いも……目の前にあるだけで虫唾が走る」とヴェルゼが冷たく言い放つ。映像の中の私は、はっとした表情をした。だけど何も言い返さない。

――酷すぎる。私はともかく、花をあんな風に燃やすなんて……。