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 ヴェルゼとエアリーがここで暮らし始めて、ひと月が経った時だった。

「ルピナス様、大変です。奥様が……」

 朝目覚めてベッドから立ち上がったばかりの時、メイドが私の部屋に来て叫んだ。ただ事じゃない。床でモフモフに変身して眠っていたヴェルゼとエアリーも起き上がる。

「どうしたの?」
「奥様が倒れて……今医者がこちらに向かってきているところです」
「お母様が?」
「はい、今お部屋で横になっております」

 昨日まで普通に話をして元気だったのに。私は寝間着のままお母様の部屋へ飛びこんだ。
「お母様、どうしたの?」
「ルピナス、慌てなくても大丈夫よ」

 お母様はベッドの上にいた。そして口角を上げ微笑んだ。力のない微笑みを。

 医者の診断によれば、恐らく疲れが原因らしいとのこと。だけどなんだかいつもと違い、違和感が拭えなかった。

 しばらくするとお母様の顔色は落ち着いてきた。部屋に戻り、着替えてリビングの入口前に行くと、こそこそとテーブルの前でお姉様達が話をしていた。私の存在には気がついていない。

「中途半端な量だから失敗したのよ」
「じゃあお姉様がやってよ」
「嫌よ、私は人殺しにはなりたくないもの」
「私だって嫌よ」

 どういうこと?

 動揺しながらふたりの様子を見ていると、モフモフな状態のヴェルゼに足をコツンとされた。私は心を落ち着かせ、何事もなかったかのように、中に入っていった。