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母が入院してから一ヶ月。
最近、妹の機嫌が悪い。

「いや!ゆき、みつあみはいや!おだんごがいい!」

朝から髪型に文句を言い、ひっくり返り、幼稚園にいきたくないと泣き出す。
ただでさえ時間がないのにイライラしてしまう。

「いい加減にしなよ、雪。あなたがみつあみって言ったんでしょう?」

「いってない!」

「言った!」

「いってないー!!おねえちゃん、きらい!」

「なっ…」

カチンと来そうになるが、そんな私たちの間に父がサッと割って入ってきた。

「まあまあ、雪。お姉ちゃんにそんなこと言ったら駄目だろう。みつあみ似合っているよ、ほら幼稚園に行こう」

父は半ば強引に妹を抱き上げると、まだぐずぐず言う彼女をそのまま連れ出す。

「じゃあ、晶。いつも悪いな。よろしく頼む」

「…うん」

モヤモヤした気持ちで二人を見送る。そして姿が見えなくなると大きくため息をついた。

…妹が荒れている気持ちもわかる。
もう一ヶ月も母とろくに会えなくて寂しくて不安なのだろう。
入院は仕方ないことだといつも言い聞かせてはいるが、まだ幼い妹にきちんと理解しろと言うのも無理な話だ。

だから、きっとイライラしてはいけない。
そんな不安をちゃんと受け止めてあげないと。

だけど……

「私だって…色々我慢してるんだからね」

そう呟いた言葉に、答える人は誰もいなかった。