「だって…ゆきちゃんがオレのおもちゃとったから…」

ポツリ。
気まずそうに平太くんがつぶやく。
でも灰島くんはそれを「言い訳するな」と一蹴した。

「どんな理由があっても先に手を出していいことにならねえよ!言いたいことあるなら、ちゃんと謝ってからにしろ!」

「は、灰島くん……」

そんなに怒らなくても……
そう思ったが、灰島くんは真剣な顔で平太くんを見つめている。口を挟める雰囲気ではなかった。

やがて平太くんが妹の前に歩み出る。

「…ゆきちゃん、ごめん」
「……うん。ゆきもごめんね」

そう言うと、二人は微笑みあい手を繋いだ。
無事に仲直りと言うことらしい。

灰島くんが渡しに向き直り、再度頭を下げた。

「本当に悪かった。妹さん怪我は大丈夫か?」

「う、うん。本当にかすり傷だから。妹も痛くないって言ってるし、そこはホント気にしないで」

「そうか……ありがとう」

ホッとしたような、まだ気まずそうな複雑な表情を浮かべる灰島くん。
そのあまりに真面目な様子から、不良だと思っていた印象が薄くなっていく。

「灰島くん、いつもこうやって弟くんのお迎えに来てるの?」

「…まあ…うちは両親が遅くまで働いてるから。倉原は、どうしたんだ?いつもはお母さんが来てるだろ」

「うちは…ちょっと入院しちゃって。…あ!でも大丈夫!安静にしてれば再来月には退院できるから!」

入院と言った途端、灰島くんが心配そうな顔になったので慌ててフォローする。

「そうか。…その、何か困ったことあれば言えよ。平太、倉原の妹さんと仲良くしてもらってるし、手伝えることあれば手え貸すから」

「……あ、ありがとう」

優しい言葉に戸惑いながらもうなずく。
灰島くん……本当に今までのイメージとは全然違う人だ。

なんだかホッとして、暖かい気持ちになった。
母が入院してから初めての気持ちだった。