「は、灰島くん!?」

振り返ると、ギロリと鋭い三白眼。見上げるほどの長身のクラスメイト…灰島くんだ。

なんでこんなとこに灰島くんが!?
もしかしてぶつかったことを根にもって追いかけてきたの?

「……て、あれ?」

一瞬震え上がったが、ふと灰島くんの隣に小さな男の子がいることに気づいた。
大きい目の、やんちゃそうな男の子。
男の子の胸元には花の形の名札。「はいじま へいた」と書かれている。

はいじま…灰島……
男の子と灰島くんを交互に見比べた。何となく似ているような気がする。

「もしかして、この子、灰島くんの弟?」

尋ねると、灰島くんはバッと頭を下げた。

「は、灰島くん?」

「倉原、ごめん。今日、倉原の妹にコイツが怪我させたみたいで」

「怪我!?あ、もしかして引っ掻き傷のこと?」

妹の方を見ながら聞く。すると妹はうんと大きくうなずいた。
つまり、灰島くんの弟と喧嘩して、妹は引っかかれた…ということらしい。

「き、気にしないで灰島くん。小さいかすり傷だし、それに喧嘩なんだからお互い様だよ」

「いや、でもそれだけじゃなくて。こいつ、まだ謝ってないみたいなんだよ。おい、平太(へいた)!ちゃんと謝れ!」

灰島くんは、隣でムスッと俯く平太くんにそう言った。