仲良くても喧嘩するときはする。友達なんてそんなもの。ほのかな記憶の自分の幼稚園時代を振り返ってもそうだと思う。

「わかりました。ありがとうございます。喧嘩については家でも話しておきます」

たぶん夜に母から電話がかかってくるだろう。そのときに心配かけない程度に伝えておこう。
先生は優しく微笑むと、うなずいた。

「お母さんが入院して大変だと思いますが、雪ちゃんのことは園でもしっかりフォローしていきます。だから、何かありましたら遠慮なく言ってくださいね」

「あ、ありがとうございます…」

私は先生に頭を下げると、雪の手を引いて教室を出た。

☆☆

「おねえちゃん、ゆき、あそんでいきたい」

園庭に出ると、妹が遊具を指差して声をあげた。
母が入院する前は帰りに遊んでいたようだ。
でも今はいつもと違う。

「駄目。帰って晩ごはんの用意しなきゃ。お父さんが帰ってくるまで間に合わないよ」

「えー」

「雪、約束したでしょ?お母さんが帰ってくるまでみんなで助け合おうって」

「…ん」

渋々という様子でうなずく妹。
彼女の手を引き、今度こそ園庭を出る。

……はずだったが

「倉原!」
「!」

突然、呼び止められた。