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家に帰り着替えてから幼稚園に向かう。徒歩10分の場所にあり、私も昔通っていた。
朝は父が通勤途中に妹を送っていき、夕方のお迎えは私。
母が退院するまではそうやっていく予定だ。

園庭は園児とその保護者でにぎわっていた。お迎えのあと園庭で遊んでもいいらしく、楽しそうに駆け回る園児と見守る保護者の姿がたくさん見られた。

「…確か、雪は…年中のコスモス組」

父から教わった情報を頼りに、妹の教室へと向かう。
やがてピンクの花の下に「こすもすぐみ」とかかれたプレートが出ている部屋を見つけた。

「すみません、…倉原(くらはら)雪のお迎えにきました」

ドアから声をかけるとすぐに担任らしき保育士さんが駆け寄ってきた。

「こんにちはー。今日から雪ちゃんはお姉ちゃんのお迎えですね!うかがっています」

「は、はい……しばらくよろしくお願いします」

「雪ちゃん、今日もとても頑張ってましたよ。お遊戯のときは、振り付けがわからない友達に教えてあげたりしていて……」

「………」

保育士さんは妹の様子を丁寧に伝えてくれた。
うなずいて聞きながら、妙な居心地の悪さを感じる。妹に全く興味がないというわけではないが、私はこの場所にはそぐわないという気持ちの方が膨らんでいく。
母は毎日こんな会話をしていたのだろうか。