「……やめよ、考えても仕方ない」

どうせ答えなどでない思考を打ちきり、昇降口から外に出る。
お迎えの時間まであまり余裕がない。
少し急ぎ足で帰らなきゃ。

「……きゃっ」

急ぎすぎたのか、うっかり前を歩いていた人にぶつかってしまう。
広い背中に私の頭が激突。

「ご、ごめんなさい!」

慌てて謝り、身体を離す。

「…!」

すると、振り返ったその人に思い切り睨まれた。

「は、灰島(はいじま)くん……!」

「あ?」

高い身長から私を見下ろすように睨み付けてくる彼。短い髪に、鋭い目付きの三白眼。威圧的な雰囲気。
クラスメイトの灰島くんだ。

「……」

灰島くんの鋭い目。ハッキリ言ってめちゃくちゃ恐い。
実際、灰島くんはいわゆる不良として周りから恐れられていた。喧嘩などの話をよく聞く。

やばい。クラスメイトを殴ったとかは聞いたことないけど、これは私ピンチかもしれない。

こうなったら……

「ご、ごめん!本当にごめん、わざとじゃないの!それじゃあ私急ぐからバイバイ!」

そう捲し立てるようにいうと、ダッシュでその場から逃げ出した。
灰島くんは何か言いたそうにしていたが、わざと気づかない振りをする。ごめん、灰島くん。