何を返せばいいかわからず、灰島くんの顔を見つめる。
帰り道はゆっくり日が沈み、辺りは夕暮れに包まれていた。灰島くんの輪郭も夕焼けの赤に縁取られている。
それが胸が痛くなるくらい綺麗だと思った。

「ただこの先、平太が両親がいないからつらいとか、両親がいないのに幸せにやってる……とかじゃなくて。両親がいないことはそれはそれとして受け止めて、それで俺たち家族の形を受け入れてくれたらいいと……そうなれればいいと思ってるんだ」

「………」

「倉原は?」

「え…」

「倉原は、本当はどう思ってる?」

「私、は……」

私を産んだお母さんはもういない。
本当のお母さんのことは覚えていない。

それはもう変えようもないことで、この先も変わらないこと。

でも、お母さんがいないから、とか。
お母さんがいないのに、とか。
そうじゃなくて、もっと……もっとありのままに見られたら。