思わぬ話に絶句する。

「平太は知ってるよ。両親が死んで、家にいるのは祖父母だって。でも物心つく前から一緒に暮らしてるから、多分今はそれが当たり前だと思ってる。これから先はわかんねえけど」

「……」

「兄貴は俺と正反対のやつでさ。外面がよくて要領がよくて、俺はいつも兄貴にいいようにされっぱなしで貧乏くじばかり引かされてて…すげえムカついてた。マジどっかいけって思ったこともあったよ」

灰島くんは平太くんを見ながら微笑む。どこか切なげな笑顔だった。

「でも…事故のとき、兄貴は平太をかばって死んで……だから平太はほとんど怪我もしていなくて。あの面倒を人に押し付けてばかりの兄貴が、自分の全部で平太を守ったんだって知って……。
そういうの……いつか平太に伝えてやらないとって、教えてやらないとって思ってんだよ」

「灰島くん…」

ポンと、灰島くんが私の頭に手を置く。励ますように優しく、力強く。

「難しいよな。俺も、平太といると苦しいこともある。きっと平太はこの先、俺よりも苦しい思いをするのかもしれねえ。両親がいないことで欠けているように思うのかもしれねえ」