全て、全て、忘れられたらいいのにな。
第1話『あの春、私はすべてを忘れられなかった』
いつも通りの朝に私は何か少し違和感を感じていた。
何かが壊れていくような音がどこからか聞こえた気がした。
ベッドの上で腕を伸ばしグーッと伸びをするとクローゼットから服を取り出した。
緩めのスウェットに書かれた「love」の文字、少しダボッとしたジーパンを穿いて鏡の前に行く。髪を高く持ち上げポニーテールを作っていくと鏡の中には“いつもの自分”が立っていた。
一階に降りリビングで朝ごはんの支度を始めていると、皆が続々と起きてきた。私はひとりひとりに挨拶をしていく。
ここは、
【夢見荘】夢を追いかける若者たちが集まるシェアハウス。夢を叶えるために共同で生活したい人が集まる。3階建ての1軒家に男女10人で生活をしている。
「今日は何を作ってるの?」と聞いてきた「波留」に「スクランブルエッグだよ」と返事をする。「へぇ~!そうなんだ!美味しそうだね!」ニコニコと笑いながら返事をする彼女に「今日のは特別な隠し味が入っているのさ!」と微笑みながら答える私。
次に「おはよっ!」と挨拶をしたのは「悠人」とってもイケメンで、とっても優しい男の子。今日は青のトレーナーを着ていた。
髪型は耳にかからないほどの短髪で髪に気を使ってるらしい。浴室にはヘアケア用品がたくさんおいてある意識高い系男子だ。
悠人に挨拶をし終わったところで声を掛けられた。「朝珠は今日何するの?」
料理をしている手を止め顔を上げると波留が首を傾げている。何するという問いはおそらく「今日のやるべきこと」を指しているのだろう。私はそう考え、「今日のプランは…」と話し始める。
「うんうん!」と頷きながら聞く波留を視界の端に収めつつ、料理をする手は止めなかった。
「まず、買い出し、その後夢叶えプランのチェックリストに書いてあるやる事をやってリラックスタイムかな。」
「教えてくれてありがとうっ!私も夢叶えプランをやらないとな〜!ご飯楽しみにしてるね!じゃっ!」
タッタタッと可愛らしい足音を立てて去って行く波留を見ながら、元気な子の印象が朝珠の中で段々と作られていた。
ーーー
「ご飯できたよー!」
「「「「はーい!」」」」
ゾロゾロとリビングに集まってくる仲間達におはよっと声をかけていく中に私が気になっている子がいた。
長い髪はボサボサで猫背の女の子と思われる子が私はずっと気になっていた。
丸眼鏡をかけた「宇治原」さんは、いつも下の方ばかり向いていて、誰とも目を合わせないような子だった。
「宇治原さん、おはようございます。」
私が声を掛けると宇治原さんは体をビクッと揺らし、震えながら挨拶をしてくれた。
「お、おお、おはよう、ござ、い、ます。」
かたことな口調で答える宇治原さんに私は、ニコリと笑顔を向け、
「良かったら、食べてください。お口に合うか分かりませんが・・・」
と、さりげなくご飯を一緒に食べないかと誘ってみる。
「私なんかが、い、いただいても、、、良いんでしょうか?」
不安そうな顔をしているように見えたので、
「大丈夫ですよ。一緒に食べましょ。」
と、答えると少し表情が明るくなった気がした。
「いただきまーす!」
「「「「いただきまーす。」」」」
皆で食べ始めると2,3人でおしゃべりをする人たちが殆どだ。
ちなみに私は、適度に会話に混ざりながら黙々と食べるタイプだ。
「あ、そういえば今日はみなさんなにかするんでしゅか?」
シェアハウスのメンバーの一人、「夕愛」が皆に今日何をするのかと聞く。
「あー、今日ね。今日は、とりあえず学校行くかなー。」
問いに答えたのは意外にも、悠人だった。
「そうなんでしゅね。がんばってきてくだしゃい!」
「うん。」
まるでカップルかのような会話にみんなが和んでいるとメンバーの一人、「命」が口を開いた。
「私は、今日はお茶会がございますの。皆さんも頑張って下さいまし。」
「そうなんでしゅか!楽しんできてください。」
「えぇ。」
今度は友人とお嬢様のような会話に皆が清らかな気分になっている中、私は口を開いた。
「夕愛、命、今日も頑張ってね。」
「「はい!」」
日常会話すら幸福を感じる要素の一つになっていることに感謝しながら私は今日も幸せをかみしめていた。
ーーーーーーーーーーーーーー
そんな夢を見た。
今の私「朝珠」は「乾いた心」を持つただのダメな人間だ。
「波留も、悠人も、宇治原さんも、夕愛に命も、」
「みんな、、、」
居なくなってしまった仲間のことを考えながら、私はただ泣くことしかできない。
合えない寂しさは想像以上のもので、
私は、『心を無くしてしまった。』
生きる意味も、目指していた夢も何もかも失うことが``出来なかった。``
私が私である理由すらなくすことが出来なくなってしまった。
みんなが居なくなったのに私は、何もかも失うことが出来なかった。
これは、仲間を失った私が失えなかったものを追いかけるそんな物語だ。
第1話『あの春、私はすべてを忘れられなかった』
いつも通りの朝に私は何か少し違和感を感じていた。
何かが壊れていくような音がどこからか聞こえた気がした。
ベッドの上で腕を伸ばしグーッと伸びをするとクローゼットから服を取り出した。
緩めのスウェットに書かれた「love」の文字、少しダボッとしたジーパンを穿いて鏡の前に行く。髪を高く持ち上げポニーテールを作っていくと鏡の中には“いつもの自分”が立っていた。
一階に降りリビングで朝ごはんの支度を始めていると、皆が続々と起きてきた。私はひとりひとりに挨拶をしていく。
ここは、
【夢見荘】夢を追いかける若者たちが集まるシェアハウス。夢を叶えるために共同で生活したい人が集まる。3階建ての1軒家に男女10人で生活をしている。
「今日は何を作ってるの?」と聞いてきた「波留」に「スクランブルエッグだよ」と返事をする。「へぇ~!そうなんだ!美味しそうだね!」ニコニコと笑いながら返事をする彼女に「今日のは特別な隠し味が入っているのさ!」と微笑みながら答える私。
次に「おはよっ!」と挨拶をしたのは「悠人」とってもイケメンで、とっても優しい男の子。今日は青のトレーナーを着ていた。
髪型は耳にかからないほどの短髪で髪に気を使ってるらしい。浴室にはヘアケア用品がたくさんおいてある意識高い系男子だ。
悠人に挨拶をし終わったところで声を掛けられた。「朝珠は今日何するの?」
料理をしている手を止め顔を上げると波留が首を傾げている。何するという問いはおそらく「今日のやるべきこと」を指しているのだろう。私はそう考え、「今日のプランは…」と話し始める。
「うんうん!」と頷きながら聞く波留を視界の端に収めつつ、料理をする手は止めなかった。
「まず、買い出し、その後夢叶えプランのチェックリストに書いてあるやる事をやってリラックスタイムかな。」
「教えてくれてありがとうっ!私も夢叶えプランをやらないとな〜!ご飯楽しみにしてるね!じゃっ!」
タッタタッと可愛らしい足音を立てて去って行く波留を見ながら、元気な子の印象が朝珠の中で段々と作られていた。
ーーー
「ご飯できたよー!」
「「「「はーい!」」」」
ゾロゾロとリビングに集まってくる仲間達におはよっと声をかけていく中に私が気になっている子がいた。
長い髪はボサボサで猫背の女の子と思われる子が私はずっと気になっていた。
丸眼鏡をかけた「宇治原」さんは、いつも下の方ばかり向いていて、誰とも目を合わせないような子だった。
「宇治原さん、おはようございます。」
私が声を掛けると宇治原さんは体をビクッと揺らし、震えながら挨拶をしてくれた。
「お、おお、おはよう、ござ、い、ます。」
かたことな口調で答える宇治原さんに私は、ニコリと笑顔を向け、
「良かったら、食べてください。お口に合うか分かりませんが・・・」
と、さりげなくご飯を一緒に食べないかと誘ってみる。
「私なんかが、い、いただいても、、、良いんでしょうか?」
不安そうな顔をしているように見えたので、
「大丈夫ですよ。一緒に食べましょ。」
と、答えると少し表情が明るくなった気がした。
「いただきまーす!」
「「「「いただきまーす。」」」」
皆で食べ始めると2,3人でおしゃべりをする人たちが殆どだ。
ちなみに私は、適度に会話に混ざりながら黙々と食べるタイプだ。
「あ、そういえば今日はみなさんなにかするんでしゅか?」
シェアハウスのメンバーの一人、「夕愛」が皆に今日何をするのかと聞く。
「あー、今日ね。今日は、とりあえず学校行くかなー。」
問いに答えたのは意外にも、悠人だった。
「そうなんでしゅね。がんばってきてくだしゃい!」
「うん。」
まるでカップルかのような会話にみんなが和んでいるとメンバーの一人、「命」が口を開いた。
「私は、今日はお茶会がございますの。皆さんも頑張って下さいまし。」
「そうなんでしゅか!楽しんできてください。」
「えぇ。」
今度は友人とお嬢様のような会話に皆が清らかな気分になっている中、私は口を開いた。
「夕愛、命、今日も頑張ってね。」
「「はい!」」
日常会話すら幸福を感じる要素の一つになっていることに感謝しながら私は今日も幸せをかみしめていた。
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そんな夢を見た。
今の私「朝珠」は「乾いた心」を持つただのダメな人間だ。
「波留も、悠人も、宇治原さんも、夕愛に命も、」
「みんな、、、」
居なくなってしまった仲間のことを考えながら、私はただ泣くことしかできない。
合えない寂しさは想像以上のもので、
私は、『心を無くしてしまった。』
生きる意味も、目指していた夢も何もかも失うことが``出来なかった。``
私が私である理由すらなくすことが出来なくなってしまった。
みんなが居なくなったのに私は、何もかも失うことが出来なかった。
これは、仲間を失った私が失えなかったものを追いかけるそんな物語だ。