「──ねぇ、お姉ちゃん。明日、取り替えっこしない?」
両親ですら見分けがつかない双子の私と妹だけにできる、秘密の遊びだった。お互いの制服を交換して、別々の学校に潜入し、私は妹の『玲奈』になりすまし、妹は『私』になって一日を過ごしていた。
けれど、その日の帰り道。
玲奈はトラックに撥ねられて帰らぬ人となった。『私』の私物を持って、私の制服を身にまとって、私の姿をしたまま、妹の玲奈はこの世を去っていった。
その日から、私は『仁花』ではなく『玲奈』として生きていくことを余儀なくされた。
《――違うよお母さん!私は仁花だよ!『玲奈』じゃない!》
《いやよ!事故に遭ったのは仁花なの!玲奈ちゃんは……生きてる。だってほら、今だってお母さんの目の前にいるじゃない》
《だから、私は――……》
《お母さんには玲奈ちゃんが必要なの。玲奈ちゃんは生きてる。死んだのは……仁花のほうよ》
『私』はこうしてちゃんと生きているのに、仁花は世間から消し去られてしまった。
高校二年生の春、私の存在が消えた日――。