1、春に始まり、春で終わる恋だった



✾踏み出せない君との恋

 桜が散る公園のベンチに座り、
 君と私、ふたりきりでピンクが風に流れているのを
 ただ、眺めているのは、
 ドキドキするけど楽しい。

 だけど、お互いに
 「きれいだね」としか言いあえてないから、
 私は勇気を出して、
 詰まり気味に、君の名前を初めて呼んでみると、
 君が微笑んでくれたから、
 私の心臓はさらに破裂しそうになった。



✾何度も散っても、君の優しさは散らない
 
 
 時間が経っても、きっと君のことを忘れないよ。
 
 あの日、一緒に見た桜は何度も咲いては散っているけど、
 君の優しい言葉が今でも忘れられないよ。

 その言葉のおかげで、
 今も君との関係は続いているけど、
 君はあの日のこと、覚えているかな。



✾嘘の自分が好きな周りへ

 
 簡単な嘘で周りにあわせて、
 作った自分は本質を見失うから、
 今、周りに微笑む自分はきっとぎこちない。

 小さい嘘が数え切れないほど、
 心の底に降り積もって、
 もう限界だと思ったから、
 そっと、今ある関係から抜けようと思った。




✾もし、君との思い出を消す力があっても


 愛を青で塗るように君との恋は一瞬だった。

 もし、君との過去が消える装置があっても、
 諦めの悪い私は、きっと赤いボタンを押さないと思う。 




✾私が片思いしていることを君は知らない


 片思いなんて、無意味なのかもしれない。

 だけど、君が私にくれた優しい言葉が忘れられず、
 もっと君のことが知りたくなったんだ。

 だから、君との関係が終わってもいいから、
 明日、君に伝えてみる決意をした。



✾季節が巡るたびに大人へ近づく

 
 コーヒーを飲みながら、
 窓から差し込む春の黄色い日差しを眺めている。

 去年を引きずったまま、
 冬は簡単に終わってしまった気がする。

 もう、10代も数本指を折れば終わるけど、
 まだ、コーヒーをブラックで飲めるようになったことくらいしか、
 大人になれていないような気がする。
 


✾新しいイメージを手に入れたい

 
 まだ空気に馴染めないまま、
 春が深まっていく。

 人見知りの私でも、
 なんとか、心を開く努力をして、
 新しいイメージを作る努力をしている。

 だけど、このままこのイメージで、
 自分を続けられるのか不安だけど、
 行き詰まったら、
 そのとき、また考えることにした。



✾テイクアウトしたい春

 
 テイクアウトしたフラペチーノを飲みながら、
 ふたりで桜のしたのベンチに座って、
 暖かいなかにいるのは、
 ただ単に幸せすぎるのは君のおかげだよね。

 「おいしいね」って君が言ったから、
 「おいしいね」って返すことができる今を、
 今、膝の上に落ちてきた、
 花びらと一緒に保存したくなった。



✾お互いに慣れすぎたのかもしれないね


 わがままを言いあえるくらい、
 君との仲はもしかしたら、
 ありきたりになっていたのかもしれないね。
 
 君との恋は楽しかったけど、
 君を傷つけてしまったかもしれないね。
 
 だから、最後くらい素直になるね。
 「ごめんね」



✾君に頼まれたから


 君に頼まれて、君のバッグと一緒に
 放課後の誰もいない教室で君を待っている。
 
 君に頼まれたのは、偶然だったけど、
 君とふたりきりで話したかったから嬉しかったよ。

 君が戻ってきて、
 「一緒に帰ろう」って言われたから、
 それが嬉しくて、
 心臓が一気に爆発しそうになったけど、
 冷静さを装って、静かに頷いた。




✾平日はひとりだけど

 
 レモンキャンディを口に含みながら、
 オレンジ色の住宅街をゆっくり歩いている。
 
 クラスガチャを外して、
 憂鬱な気持ちは晴れないから、
 このまま、去年の春にタイムスリップしたいけど、
 そんなことなんてできないから、
 とにかく明日の土曜と日曜を仲間と一緒に楽しみたい。



✾当たり前がわからない


 当たり前や普通がわからなくて、
 いつも上手く立ち振る舞うことができない。

 我慢も、とっさのやり取りも、
 思わず口にした失言も、
 すべてなくなってしまえばいいのに。

 いつもそう思うから、
 今日くらい、ずる休みをして、
 明日からまたへこまず、
 頑張れるように今はひとりになることにした。



✾春色ロマンス


 桜並木の下で、
 白いセーターを着て、
 両手を広げて回る君はかわいい。

 セミロングでピンクが混じった茶色の髪で弧を描いたあと、
 ピンクの花びらが舞うなかで
 君が微笑んだから、
 僕はそっとシャッターボタンを押し、
 君のその姿をiPhoneでデータ化した。



✾夜に鬱が現れ始めたから

 
 いつも、夜更けに決まって、
 勝手に出てくる悪い妄想は頭の中で広がり、
 つらい黒さでおかしくなりそうだけど、
 とりあえず、今は、
 帰りにファミマで買った
 コーヒーゼリーの苦みと甘さをしっかり味わおう。


✾別に頑張りたくなんてない


 いつも頑張りたくなんてないのに、
 まわりのことを気にしすぎて、
 頑張りすぎる癖を
 自分でもどうにかしたいって思っているよ。

 だけど、頼まれたり、勝手に期待されたりするのは、
 どうやって断ればいいのか、わからないんだ。

 だから、今日の夜みたいに
 頑張りたくない日は、
 エキナカで買った期間限定の
 桜色のシュークリームとか買って、
 甘さで自分を満たすことにしている。



✾たまに弱い刺激のなかに沈みたい


 電球色で落ち着いた色をしている夜のスタバで、
 一息つきながら、さっき本屋で買った文庫本を読み始めている。

 抹茶ティーラテで甘さを補充して、
 たまにひとりになりたい時間を今、充足している。

 世界って思ったほど、悪くないんだと思うけど、
 人間関係の刺激が強すぎて、
 たまに疲れちゃうんだ。



✾このままの君でいて


 君の左耳についているイエローゴールドが、
 午後の柔らかい日差しで反射している。

 君はピアスが似合うくらい、
 華奢で、繊細で、優しいから、
 このままの君でいてほしいなって、
 勝手にいつも思っちゃうんだ。



✾ねぇ、なんでわかるの


 今日、そして、今、カフェの中で、
 君に話すつもりなんてなかった。

 なのに、君は私の異変に気がついたんだね。

 聞き上手すぎる君の所為で、
 最近の黒いところ言っちゃったじゃん。

 だけど、それすら肯定してくれる君は、
 優しくて、最高だよ。
 ありがとう。



✾春に始まり、春で終わる恋だった


 君との恋は桜が散るときに始まり、
 桜が咲いてすぐに終わったね。

 この一年、すれ違いとか、多かったし、
 君のことをしっかり理解できているつもりで、
 理解できていなかったし、
 お互いに妙にすれ違っていたんだね。

 もっと、君との心の距離を近づければ、
 簡単に別れることなんてしなかったのかもしれないね。



✾雨の日に桜を君と見る 
 
 
 今日も冷たい雨が降っていて、
 せっかく咲いた桜も濡れたコンクリートに沈みそうだね。

 「桜、見たいな」って君が言ったから、
 雨の中、ビニール傘をさして、
 ふたりで川沿いの桜を眺めながら、
 ゆっくり歩いている。

 「もっと早くいけなくてごめんね」 って君に言うと、
 「いいよ、雨の桜って印象に残るから」と返して、
 君は微笑んだから、少しだけ罪悪感が弱くなった。





2、恋愛は何色の言葉で表現すればいいの?


✾閃光アクティベート


 そろそろ桜が咲くころになり始めても、
 未だに眠いのは春の所為かな。

 ゆっくり暖かくなった風を受けて、
 揺れる木々にまたはが芽吹く季節になったね。

 憂鬱を抱えたままのわたしと君たちに伝えたい、
 木の葉と移ろう季節が時代を見守っていることを
 大切にして生きてほしい。

 目覚めの瞬間は今だから、
 君の奥に囚われた鎖を開放しよう。
 忘れた感触を思い出しながら。

 黄金の空に舞う龍を眺めるように
 大好きな世界を作り上げよう。

 シリウスの果てまで手を伸ばすようにね。



✾すべて忘れてしまおう

 手帳に書ききった黒くぎっちり詰めた思いを
 ページを切り取って、ハサミで切り刻み、
 それらをベランダからそっと春風に乗せたい。

 当たり前だった充実感は消えて、
 退屈が日々押し寄せてくる。

 透明なコップにオレンジジュースを注いで、
 溢れてもなお、
 白いテーブルをオレンジの海にして、
 しばらくの間、指で泳いで、気を紛らわそう。

 抑えきれない感情の波は、
 やられたことを忠実に再現してくる。

 無視されたサイン、
 粉々になったハートにクッキー、
 すべて忘れて頑張ろう。



✾スプリングファンタジー


 ゆっくりとヒレを動かして、
 空を泳ぐクジラに君は子供のように
 無邪気に手を振っていた。

 僕はそれを黙って見守っていようとしたら、
 「ノリが悪いね」と言われたから、
 仕方なく小さく手を振ってみた。

 弱い春風で制服のスカートの裾が揺れている。
 もうすぐ、君の制服姿も見納めになるね。

 春らしい薄ピンクが青にかかって、
 空は最高に綺麗で、
 このまま、ぼんやり春の陽気にやられて、
 君との時間をゆっくり紡いで
 大人になるのを辞めたくなった。


 
✾十分だよ


 泣いてもいいよって、
 言われると途端に泣けなくなるのは、
 君に気心を許してないからじゃないよ。

 雨の中で愛を誓うみたいに、
 急に恥ずかしくなってるだけだから、
 私のことなんか気にしないで。

 大好きなレモンのキャンディを
 口の中でコロコロさせても、
 つらいことなんて消えないからさ。

 だから、今、このまま、
 一緒に過ごしてくれるだけで十分だよ。



✾憂鬱を飾りたい


 スタバでぱっとしない将来のことを
 考えると憂鬱が溜まっていく。
 フラペチーノを飲んで、
 気分を変えようと思ったけど、
 急な無気力と漠然とした不安を
 せき止めるにはまだ足りなさそうだ。

 心を上手く開けないのは昔からだから、
 大好きな歌を口ずさんで、
 自分の世界を守ることを優先してきた。

 臆病で嫌な気持ちは
 ソーダ水で満たした水槽の底に沈めて、
 ジェリーフィッシュっと一緒に眺めて、
 LDEで淡く照らしてしまいたい。



✾終わったあとになって、傷がジクジクする


 シャンディガフを飲みながら、
 君が去ったことをずっと考えていた。
 電球色の薄暗い店内。
 窓ガラス越しには雨が打ちつけていた。

 なにか直接的な原因があったわけではない。
 ただ、砂時計がしっかりと時間を知らせたように
 最初から期限付きの恋だったのかもしれない。
 一口、含むと、苦みと甘さが一気に広がった。

 雨滴の縦線が街の光をにじませる。
 うっすらガラスに反射する
 自分のアホ面を人差し指でそっと刺したけど、
 今更、君を取り戻す方法は、
 もう存在しないことをより自覚するだけだった。


✾千切りたい思いをページに詰めた


 大嫌いでぐちゃぐちゃな気持ちを、
 手帳にぎっちり書き終わり、
 一息ついてコーヒーを手に取った。
 灰色の街は傷ついた自分自身みたいだ。

 気持ちは晴れない、苦みは身体中に染み渡る。
 食べかけのシナモンロールは、
 ご褒美のはずだったのに、機嫌はなおらないや。

 ひとりきりで気楽に過ごしたいって、
 現実逃避に憧れるけど、
 現実は許してくれなさそうだ。

 少しだけ冷たくなった手に
 そっと息を吹きかけ湿られて、
 カーテンを開け放つように
 次のページを自分で褒めよう。

 そんなことを考えていたら、
 窓越しの世界は雨が降り始めていた。


✾一歩踏み出したい


 海につながる大きな川辺をゆっくりと歩いている。
 春の陽気につられて外に出たけど、
 こんなところを歩くつもりなんてなかったのに。

 風に揺れるワンピースと、
 一緒に踊りながら、
 また芽吹き始めた世界で感性を磨こう。

 ひとりぼっちで過ごすことはもう慣れて、
 悲しさすら簡単に乗り越えられるようになった。

 だけど、たまに寂しいから、
 誰かに話しを聞いてほしくなっちゃうのは本能だね。

 理性では強がり、だけど、根は怖がりだから、
 新しいことを踏み込むのに戸惑う。
 だから、この春はしっかり自分を作りたい。
 もっと、世界が違って見えるように踊ろう。



✾青い夜はイリュージョン


 センチメンタルを袋詰して、
 走り抜けよう青い夜の街を。

 未来はきっと明るいだなんて、
 誰かが呑気に言っていたのを思い出した。

 立ち止まって、深呼吸して、
 まだ冷たさが残る春の空気を吸い込み、
 現実にトリップして、
 叫びたい衝動をそっと抑える。

 生きているだけで、
 それで十分なんだって、
 今更だけど、思い出して、
 過去を断ち切る決意を今、そっと心に誓う。


✾それでも一瞬を楽しみたい


 雨の中、ライトアップされている
 桜は濡れていても綺麗で、
 さしているビニール傘の上に落ちた花びらが
 ワンポイントになって、
 ちょっとだけ奇跡な気持ちになった。

 濡れて落ちていくピンクで、
 黒くなったアスファルトは染められ、
 それを踏むのが少しだけ、嫌だな。

 寒いけど、仕事帰りに寄ってよかったなって、
 ふと思いながら、
 今の面倒なことをすべて捨てたいなって、
 すっと、ため息をひとつ吐いた。


✾きっと、ふとした時にまた、君のこと思い出しそう

 
 君との恋愛はあっという間だった。
 春になると、制服姿のあのときの君を思い出すよ。

 透き通った青みたいな日々は、
 時計の針に押されて、消えた。
 叶わなかった願いは永遠になったね。

 朝のカフェの中から、行き交う人の波を眺める。

 もし、あの中に入ったら、
 もう一度、君に会えるのかな。

 あの日の約束は有効期限があったんだね。
 それなら、最初から、
 そう言ってくれていたら、
 君のことなんて思い出さなくても
 済んだのかもしれないのに。



✾ただ、君の隣にいたかった


 やっぱりなって、すぐに感じた。
 君への付きない思いは水槽の底を泳ぐ
 エンゼルフィッシュを
 ガラス越しでそっと触ってあげるように
 実際には触れられない壁を感じた。

 玄関のフローリングにバッグを
 そっと置いたあと、
 今日、ここにはかえってきたくはなかったなって、
 思ったけど、別に、もういいよ。

 私のこと、もてあそんだ、だけでしょ。




✾もっと、君を春色にしたい


 ピンクの中で両手を広げて、
 はしゃぐ君は最高に素敵だね。
 
 回転と一緒に弧を描く茶色のボブの端は
 春の白い光をしっかり反射して、
 君の無邪気さがより引き立っているよ。
 だから、一生忘れないようにiPhoneで撮ったよ。

 春色のプリズムを
 柔らかいフィルターで補正をかけて、
 あとでもっと、かわいくしてあげる。

 だから、あとでゆっくり、
 スタバで限定フラペチーノを飲んで、
 思い出をしっかり刻もう。


 
✾無敵になりたい


 毎日を淡々とこなし、
 季節は簡単に巡ってしまい、
 一人きり、まるで取り残された気分になる。
 咲き始めた桜の所為じゃないのはわかるけど、
 勝手に恨んじゃう余裕がないよ。

 いつも、都会の中で
 不安に押しつぶされそうになりながら、
 なんとか、毎日をこなしているよ。

 こういうとき、過ごしの時間でも、
 スタバに行って落ち着きに浸ればいいことは
 わかっているんだけど、疲れてそれもしたくない。
 だから、自分を力いっぱい最大出力する。

 不安なんて幻想だよって、
 無敵で若かった君に言われたのを思い出した。



✾もとに戻す魔法を唱えたい


 公園のベンチにそっと缶を置いて、
 桜で鮮やかになった世界をぼんやり眺める。

 記憶とリンクする春の空気、
 君が好きだったフレンチクルーラー、
 トレーに落ちる砂糖、
 クーラーで満たされた停滞する空気感。
 今でも、きれいに再生できるよ。

 風で弱く揺れる小枝にそっと囁きたい。
 あのときはすべて本気だったんだよと。

 いらない言葉ですべてを汚して、
 黒い懐かしさをそっと水に馴染ませたい。
 そして、すべてを元に戻したあと、
 変わった自分で仲良しの魔法をかけて、
 君を丁寧に扱いたい。



✾見ている世界はきっと良くなる


 指先でそっと曇ったガラスをなぞり、
 これから遠くへ行くバスから、
 雨で濡れた街のファンタジーを眺める。

 嫌な思い出をたくさん作った街は、
 これで見納めなんだって思うと、
 少しだけ傷が癒えたような気がした。

 春は桃色のはずなのに色褪せるくらい
 雨は降り続けている。

 iPhoneを眺めてもきっと、
 いい情報は見つけられない気がするから、
 このまま、見慣れた街を
 なんとなく目に焼き付けて、
 これから始まる遠くの街での暮らしが、
 上手く行けばいいなって、
 ぼんやりした憂鬱をボトルコーヒーを飲んで、
 希望を浄化した。



✾きっと、いつか今日のことを思い出しそう


 君といると不思議と時間が過ぎていくのは、
 君が素敵な春のマジックにかかっているからだよ。

 桜吹雪の中で笑顔でいる君は、
 吹雪の中、微笑んでいた君と同じで、
 真冬の世界を一気に暖かくしたように
 明るい君といると嫌なことも忘れられるよ。

 今、尽きない会話が、
 もし、尽き始めたときは、
 今日のことをしっかりと話題にだすよ。



✾嫌な傷をしっかり癒やしたい


 フラスコ水に水色を足すように
 一滴ずつ、思い出をそっと混ぜていく。
 それを水瓶に移して、
 大好きなロックの周波数をあてて、
 踊る楽しさに増幅させたい。

 アパートの窓越しの世界は、
 今日も雨が降っていて、
 冷たい春は暖まる気配はない。

 フラッシュバックする嫌なことは、
 コーヒーをのむことくらいじゃ、
 消えなさそうだから、
 大好きな曲をiPhoneで流して、
 大嫌いな過去をしっかりと忘れる努力をしよう。



✾真夜中と明け方の間。

 冷たい風が吹きつける埠頭でひとりきり、
 起き出す前の青くて薄暗い街を眺めている。

 寒いし、誰もいないから、
 白いパーカーのフードを被って、
 日が昇っていくのをまっている。
 
 お気に入りの腕時計の秒針がしっかりと、
 時間を進めていくのを数秒、見たあと、
 もう一度、対岸を眺めなおす。

 すっかり、都会の孤独にはなれてしまったけど、
 たまに忙しさに疲れてしまい、
 そっと逃げ出したくなる。

 だけど、今の生活を抜け出すことなんて、
 できないから、
 夜明けを静かに待つよ。



✾君に触れる


 カーブミラーに映る制服姿の僕たちは
 奥に映る風に揺れる街路樹と電柱の間で、
 湾曲して、突っ立っていた。

 風で君のスカートの裾は揺れて、
 整ったボブの先もきれいに揺れていた。

 「ねえ、キスしよう」
 そう言われて、君の積極性を責めるより、
 僕の消極的な姿勢に、一瞬、自己嫌悪した。
 だけど、すぐに切り替えて、
 君の肩に手を回した。

 そして、とりあえずそのまま抱きしめて、
 路地裏で君の体温を奪うくらい、
 しばらくそのままでいたあと、
 そっと、君を離した。

 「あとでね」とわざと焦らしたけど、
 君がつま先立ちをした直後、唇が触れた。



✾君にエールなんてダサいから、そっと、君のこと肯定する


 君と抜け出した夜は、
 何もかも絶望的に思えて、実は希望的で、
 薄暗い公園の角で手を繋いだまま、
 無数の瞬く星をしっかりと眺めている。

 「世界なんて終わればいいのにね」って
 ポツリと君が言ったから、
 それも悪くないかもなって思った。
 だけど、君と一緒にいられなくなるのは嫌だなって、
 ちょっとだけ、ほろ苦くなった。

 もし、目の前に星が落ちてきたら、
 素直にサヨナラを言ったあとに、
 また来世でねって付け加えよう。
 
 だけど、今はこんなに平穏なんだから、
 明日から、また君が生きれるように
 今は静かに励ますよ。



✾前に進めないや


 コンプレックスのすべてを受け入れてくれる
 君とはなぜか、上手くいかなかった。
 冬は寒いまま過ぎていき、
 春が始まっても寒いままで、
 たまに怒るロマンスも君以上の人はいなくて、
 どうしても君と比べてしまうよ。

 もし、パラレルを選べるとしたら、
 パステル色の中で冷静にドキドキしたい。

 もし、夏までに前を向けなかったら、
 すべて君の所為にしてもいいよね?



✾始まってしまった遠距離恋愛


 ホームで電車を待ちながら、
 昨日、中途半端にしてしまった
 君とのメッセージの返信を考えている。
 
 君はきっと、上手くいくと思うよ。
 そう思えるくらい、
 眩しくてうらやましい内容だから、
 もう、別に返さなくてもいいんじゃないかと思ったけど、
 離れても君とのつながりを失いたくないから、
 しっかり、優しいメッセージを返してあげよう。



✾落ち込む君は美味しい


 落ち込んだ君を愛せるのは多分、俺くらいだし、
 とりあえず、まだ春は暖かくないから、
 君の大好きなココアをいれたよ。

 星屑をミキサーで崩して、
 それをバニラフレーバーと一緒に
 葉巻の中に包んで吸い込んでしまえば、
 きっと、少しは気分が上向きになると思うよ。

 そう言ったら、
 「やっぱり馬鹿だね。こんなときにそう言うこと、言えるんだから」
 と言って、硬かった頬を柔らかくしたから、
 俺も少しだけ頬の筋肉を和らげ、
 自分の分のココアを飲み、
 久々のココアって甘いんだなって、
 なんとなくどうでもいいことを感じた。



✾恋愛は何色の言葉で表現すればいいの?


 君への思いが届かないかなって、
 空想に浸りながら、スタバで思案して、
 限定のフラペチーノを飲んで、
 近いうちに一緒に飲めたらいいのにな――。

 ピンで装飾された君の言葉は素敵で、
 何度も脳内で再生しても飽きないや。

 また偶然を装って、
 君と離して距離を縮めよう。

 少しずつ、気づいてくれたら、
 それで十分だよ。

 君のことが好きな気持ちは、
 きっと、今は一方的かもしれない。
 君を振り向かせるには何色の言葉を操ればいいの?






 【初出】
 1章
 完全書き下ろし

 2章 
 蜃気羊X(@shinkiyoh)
 https://twitter.com/shinkiyoh
 
 2023.3.5~4.10