これは、まだ野鳥を飼育してはイケナイという、法律が定まる前の、昔むかしのお話です。

後に私に、つくつんと名付けられる、虫だらけのツバメのひな鳥は、巣から落ちて地面でモガイてたそうです。
姉が野鳥の親鳥とひな鳥の、以外を警戒するから関わってはダメな習性を知らなかった為に救助され、サラリーマンでない私にその救命は任されました。
私は幼い頃からフィンチが大好きだったので、何を食べさせたらイイか?と、ドキドキワクワクしていました。
ひな鳥にシリンジでやるパウダーフードが手に入らない時代で、思いつく事もなく、かといって、ツバメのくちばしはタキなどの虫食い鳥の形をしている為に、殻付き餌(あわやひえ等)を食べれるくちばしの形をしておらず、釣具店で、釣り餌として売ってる、ミルワームという白い幼虫を、売ってる店を探さねばと、読んだ本に教えられ、想いながらも、田舎で電車や車などの交通アクセスが無く、とりあえずは質の良い牛乳(ミルク)を右手の人差し指に付けて、くちばしのスキマを撫でて体内に含ませました。それはそれは美味しそうに飲んでました。
その給餌は、くすぐったくて温かくって、とても気持ちが良かったです。つくつんも私に懐いてくれました。私はとても嬉しい気持ちで、温かいつくつんを私の冷たい体温で冷なやさない様に気をつけながら、スキンシップを楽しみました。
ところが、やはり家族はミルクはもう卒業しなければイケナイのではと、昔からある、香料と着色料で声が出ないくらい腹水が貯まり悶絶死すると危険視される、九官鳥のふやかしたペレットを妹が器用に与えてくれ、家族みなひとまず安心しました。くちばしは、ぱかーんとあけれれ、まだ、つくつんの馬蹄斑はくっきりと付いてました。室内放鳥も楽しむつくつんの為に、私達は鳥かごを探しにお店に出かけました。読んだ本によると日頃から止まり木の間をよけい目にあけ、ジャンプジャンプジャンプと脚力をつけて、長生きを目指すものと書いてたので、ツバメは野鳥と言う事もあり、メジロサイズの竹籠を選び、糞や尿で身体がぐちゃぐちゃにならない様に、糞切網を付けたまま、つくつんに使用しました。
この時は誰も、あんな事が起こるとは考えてもいませんでした。
そうです。悔しい事に何羽か文鳥で竹籠を使用していた私ともあろうものが、糞切網を外す安全対策を、完全に忘れきっていたのです。
それと平行して、つくつん、馬蹄斑無くなってきたね。大人になるんだね。と、餌の恐怖が再び私達家族を襲いました。九官鳥のふやかしペレットは馬蹄斑の位置にダマになってこびり着く様になりました。その頃は器用にペレットを与える妹に一番懐いていたつくつんは、何度も何度もダマを取ってもらっていても、気持ち悪そうでした。
そんなつくつん、まんまるのスイカや九官鳥のあーちゃんと一緒に写真に収まったり、鳥ではなく犬好きな義弟の首元でくつろいだり、部屋をびゅーんと飛んだりしてました。可愛らしいつくつんに家族は迫りくる恐怖に気づきもしなかったのです。そう、つくつんの爪は伸びてました。つくつんの竹籠の止まり木は、つくつんの指や爪の長さに対して細すぎたのです。そして家族の誰もバカすぎて、糞切網の真の恐怖を予測出来なかったのです。
止まり木から滑落したつくつんは、糞切網に足を絡ませ、凄まじくモガイてたのでしょう?
保定して爪を切ってあげれば良かった。太い止まり木と糞切網を外して掃除しやすい鳥かごに変えてあげれば良かった。悔やんでも時は戻りません。だから野鳥ではなく、繁殖された、飼い方がしっかり確立された、鳥しか飼ってはイケナイのです。私達のしくじりです。馬蹄斑が完全に消え、ペレットすら、食べられなくなる前に、愛しいつくつんは旅立ちました。