彼女は引っ越していったらしい。舞先生が、

「ひーちゃんはもっと元気になるようにお引越しをしました。みんなにお別れを言うと泣いちゃいそうだからって。代わりにお手紙を預かっています」

とみんなに伝えた。

「あおくーんおてがみです」

名前を呼ばれ受け取った手紙にはただ一文字「♡」としか書かれていなかった。

他の子には「なかよくしてくれてありがとう」とか
「またあそぼうね 」と書かれていたようだが、俺には一切なし。

昨日の出来事との手紙の内容の差が、あまりにも激しく気持ちを上手く整理できなかった俺は、早くこの話題が終わることを願って、ただひたすら上履きを床に擦り付けるという動作に専念していた。

しかしその動作に、俺が拗ねていると勘違いした舞先生が近づいて来て

「蒼くん大丈夫。お互い元気でいたら、ひーちゃんとは必ずまた会えるからね」

と俺の頭を優しく撫でてくれた。

そして数年後、俺は舞先生の言葉通り緋彩との再会を果たすことになる。