ずっと、じぶんじゃないだれかに憧れた。
 お姉ちゃんのようになれたら。
 あの子のように、素直になれたら。
 あの子みたいに、芯の強い子になれたら。
 ……だって私は、なにも持っていないから。

 でも本当は、ほかのだれかになる必要なんて、ないのだ。
 私は、なにも失くしてはいなかった。
 私はただ、じぶんからじぶんの大切なものを手放していただけだったんだ。

 私たちは、だれもが主人公(ヒロイン)
 物語の始まりは、主人公はなにかが足りない。
 私たちは欠けているからこそ、物語の主人公になれるんだ。