(――果たして)

 帰路の途中、灯澄は内で静かに呟いた。改めて、再度思う。果たして、後どれくらいか。
 延ばそうと思えば、まだ一月は延ばせるだろうと思えた。だがそれは、ただ延ばすだけに過ぎない。解けかかった結界から洩れる妖気は絶えず広がっていく。
 ただでさえ巨大な日愛の力。周囲に気付かれるのも直ぐだろう。そうなれば、日愛だけにとどまらず日向の命をも狙われることになる。それは絶対にあってはならない。
 であれば、後はどれくらいか。どれくらいの時があるか――

 今更ながら、陽織に任せた年数を呪う。準備はできていると信じていた。しかし、日向はすぐに戦える状態ではない。が、悔いたところで今ここに至っては仕様がなかった。
 日向を鍛え上げ、万全の状態で望みたいという気持ちはある。だが、日愛と日向の居場所が知れることは防がねばならない。鍛える時と隠せる時。その二つが交わる時はどれくらいか。
 十日……では危ない。すでに洩れている妖気を考えれば、迂闊な賭けはできない。七日、五日……鍛える時はほしいが、果たして。

(…………)

 灯澄は、三日と見た。いや、三日と定めた。三日で鍛え上げる、そう決意しなければ時を逸してしまう。時を逸すれば、巻き戻すことは敵わない。だからこそ、確実な時を定めた。
 日向の元へ行く前から考えていたことだった。初めから時が迫っていたことは分かっていたことだ。それを改めて信念する。強く、揺るがず。
 我らでは日愛を受け止めることができない。だからこそ、日向に強くなって貰わねばならない。