「お二人のお話、分かりました。本来なら俄かには信じられぬことなのでしょうが、現にわたしは女として生き、仰るように力もあります。何より、お二人に出会ったその時から不思議と疑う気にはなれませんでした。そして、お話を伺う前から覚悟はしておりました。いえ、今思えば、力を自覚したその時から、自然と覚悟をしていたのかもしれません」

 日向は言葉を続けた。その声には迷いも惑いも濁りもない。ただ真っ直ぐに純粋にありのままの己の内を明かしていった。

「ですが、覚悟は決めたものの、正直にいえば今だ混乱しています。全てを受け入れるには重く……安易に『はい』と返事することはできません。助けなければならないのなら、救う人がいるのならば尚更」

 話す日向の気持ちは当然だったろう。陽織に苦しい表情が過ぎり、灯澄や燈燕の顔にも影が走る。だが、日向は変わらずに真っ直ぐに蒼紅の二人を見つめ、スッと頭を下げた。
 何の意を持って頭を下げたか――謝すためではない。願い、誓うために日向は頭を下げた。

「お願いします。わたしにその力があるというのなら、助ける術を教えてください。わたしの力で助けられるのであれば、わたしでしか助けられないのであれば、わたしは必ず成し遂げたい。祖先が約した誓約ではなく、わたしの気持ちとして。わたしの望みとして。お願いしてくれたお二人にお応えしたいです」

 ――その健気な日向の姿に、純粋な願いに。

「――――」

 見つめていた三人の胸には何が過ぎったか。何を与えたか――灯澄、燈燕、陽織はすぐに声が出せず、黙るしかなかった。
 内から湧く感情に拳を握る。そして、灯澄は口を開いていた。