「成程、そうか。お前はそういう人間なのだな」

 パンパンと膝を叩き、紅装束は笑い続けた。愉快な人間だと思っていたが、これほどとは思わなかった。相当な馬鹿か、相当な器かとは最初に会った時から感じていたことだが、そのどちらも当たっていたようだ。
 笑い続ける紅装束にきょとんとする日和。そんな光景にまたおかしさが込み上げてくるが、さりとてこのままでもいけないと思い蒼装束は先程とは違う柔らかい口調を日和に向けた。

「どうして、友人になりたいなどと思った?」
「幼子のお話を聞かなければ、あるいは、そんなことを思わなかったかもしれません。お二人は幼子を守りたいと仰いました。それは、人でも妖でも同じこと。わたしも同じ気持ちです」

 蒼装束の問いに、日和は真っ直ぐな視線のまま答えた。どこまでも純粋に穢れなく真っ白に、真から願い望んで言葉を伝えた。

「わたしはお二人を尊敬し、好きになってしまいました。戦うことなどできません」

 そのありのままの真っ直ぐさに、

「そうか」

 蒼装束は微笑んで頷くしかできなかった。笑いは治まり、代わりに豊かで清々しい気持ちに包まれる。この少女は、本当にこういった空気を持っている。接しただけで全てを和ませてしまうような――そう、名の通り、日を当て和ませるように。
 何かが満たされ、内に淀んでいた想いが全て消える。そして、

「こちらへ来い。我が子を見せよう」

 そういって蒼装束は日和を誘った。