「腹が決まったか?」
日和の瞳、空気の変わりように、蒼装束は静かに問いかけた。
互いに退けぬ理由がある。であれば、最後は戦うしかなかった。話で解決するような問題ではないのだ。日和は我らと話がしたいと望み、こちらも受けたが結局は意味がなかった。
戦う気はない。が、仕方がないのだろう。気持ちは悪いが、おそらく日和のような人間は動けぬくらいにしなければ退かない。
「美味い茶だった。久々に楽しい時を過ごせた」
と、傍にあった湯飲みを手に取り、茶会は終わりと遠ざけた。重い湯飲み。この湯飲みを返せば楽しい時は終わる。その内の重みを小さな湯飲みに重ねながら、遠くへ置いた。
「なにか礼ができればいいが、残念ながらできそうにもないな」
蒼装束は立ち上がり――
「続きだ、日和」
「わたしは、戦いたくはありません」
静かに向けた蒼装束の視線を真っ直ぐ受け、日和は迷いなく即座に答えた。
「何をいっている。互いに退けぬことはお前もわかっておろう」
厳しい眼差しと口調で問い詰める。どうにもならない状況で、これ以上の話など無用のことだ。そして、それは日和も分かっているはずだった。だからこそ、厳しく言い放った。甘さを出せば、戦いはできなくなる。
しかし、
「わたしは――できうるならば、お二人が許してくださるのならば、友人になりたいと思っています」
「…………」
日和の言葉に、蒼装束も紅装束も茶会に誘われた時と同様に再び目を丸くしてしまった。開いた口が塞がらないことなどないと思っていたが、その初めてを経験したような心地がする。
日和は真剣に二人を見つめ続けた。その瞳には戦いの惑いも恐れもない。ただ純粋に望み、願っている瞳。
「ふ――はははははっ!」
紅装束は笑った。声は出していないが、蒼装束も口元を押さえている。