「元々、妖退治が十一家の使命……その本来の役目に戻ったという事か」

 蒼装束はつと日和から視線を外し、ふっと内で息をついた。やはり聞かねば良かったと後悔する。日和の瞳、その強さと悲しみの一端を触れ、心が揺らいでいる。

「しかし、これで我らの世界が騒がしいのも合点がいった。動くかもしれんな、大きく世が」

 蒼装束の代わりというわけではないが、紅装束が面白くもなさそうに呟いた。元来、騒ぎも戦いも嫌いではないが、祭りであれ合戦であれ騒ぎの質によって楽しみはなくなる。面白い相手でなければ苦痛しか生まれない。
 そんな面白くない人間を相手してきた境遇を思い出し、紅装束は益々陰鬱に溜息をついた。そんな仲間の顔を視線の隅にいれ、蒼装束は再び日和へと目を向けた。二人して不景気な顔をしていてもしょうがない。今は目の前の大事をなんとかしなければならなかった。

「お前が戦う理由も退けぬ訳も分かった。だが、だとしても、話は変わらぬ。これからどうするのだ?」

 蒼装束は内に力を込め、鋭く問いただした。長く話してしまったが、結局は、なのだ。結局、互いの境遇を知ったとして立場は変わらない。話はいたずらに戦いを苦しくしかしない。

「我らとて、大人しく退治されるわけにもいかぬ。さりとて、お前も退くわけにもいかないのだろう……話は詰まった」
「……そうですね」

 蒼装束の想いが伝わり、日和も内に迫る苦しく重い気持ちと共に小さく呟いた。