「日咲ちゃん」
「ひなちゃん……」

 驚いて見つめる日向と、日向が居たことに時が止まったかのように立ち尽くす日咲。二人はしばし見つめ会い、その場を動けなかった。

「やれやれ、日向のことを話すと我を忘れるからわざわざ伝えなかったのに」

 溜息をつき、ただ、面白がりもしながら話す妃紗に、ようやく止めていた息を大きく吸い、日咲は姉の顔を睨むように見つめた。

「姉さまがこんなにも朝早くに学園に行くなんて珍しいと思ったから……もしかしてと思って」
「それだけで、日向が居るかもしれないって思ったの? 本当に、あなたは……」

 もう一度溜息をつく。本当に、この妹は……と、思う。
 だが、日咲の気持ちは分かるつもりではいた。日向が居なくなったあの日から日咲は泣き続け、学園に行くようになっても魂が抜けたように虚ろな日々を送っていたのだ。ようやくにして、最近笑顔を見れるようになってきたばかりだった。それだけ日向を望み、求めていたのだ。些細なことで日向に感づいても不思議ではなかった。
 日咲は改めて日向に視線を向け、じっと見つめた。
 日向の姿は変わらず、桜の花のように可憐で愛らしいまま――だけれど、

(……ひなちゃん、変わった)

 姿は変わらない。けれど、いつも一緒だった、誰よりも日向を見ていた日咲だったからこそ、その変化はすぐに分かった。

(大人になってる……ううん、違う。何だろう……)

 しかし、明確に何が変わったのかを表現することができない。だが、確かに、そして、大きく日向は変わっていた。