「……ふぅ」
しばらくの後――日和の言葉に紅い装束の女は深い息をつくと、嗜めるように口を開いた。
「本当に何をしに来たのだお前は。童女の遊戯で戦いを挑むものではない」
「遊戯ではありません。わたしは真剣に――」
日和は紅装束に言い返そうとし……自身の戦いの姿勢にすぐに気付き言葉を止めた。
「……いえ、そうですね。言われる通り、遊戯なのかもしれません。わたしはまだ、覚悟すら決められてはいませんでした」
顔を伏せ心の内を確かめるように自らの胸へと拳を当て、そして、日和は謝罪した。
「申し訳ありません。半端な気持ちでいること自体、戦いに臨む者の心ではありませんね。わたしは戦いの無礼を犯したまま、お二人に向き合っていました」
「まったく、これでは子を叱っているようではないか」
紅装束は隠すことなくもう一度深々と溜息を付く。声も出さず表情にも出さないが、蒼装束も同じ気持ちのようだった。それなりの長い付き合いだ。蒼装束の空気を感じれば大体の考えは分かる。
かといって、お互いの気持ちが分かったとしても仕様のないことではあった。困惑も迷いもなくなるわけでなく、今更戦う気が起こるわけでもない。とはいえ、このままでいるわけにもいかない。完全な手詰まりだった。