「…………」

 ――日愛が目覚めたか。

 灯澄は日向と日愛を見つめ、嬉しさよりも先に時が来たことを感じ心を定めていた。
 自分の役割とはいえ、内の重みと苦しみがある――とはいえ、それは日和の時からそうだったが。思えば、日向には辛いことばかり強いている。しかし、今はそうしなければならなかった。

 これは、必要なことだ。日向の為にも――日和の願いの為にも。

「日向」

 灯澄は呼びかけ、加えて周りにも伝えた。

「話がある。陽織とスズも呼ぼう。日愛の準備が済んだ後でいい、この部屋に集まってくれ」

 日愛は目覚めたばかり。顔を洗わせ口をゆすがせて、新しい着物に着替えさせ――日向と一緒にゆっくりと準備を整え、日愛の食事も終わったのは半刻が過ぎたあたりだった。

 集まれ、と伝えても、この屋敷に居るのは六人だけ。片付けも終わり、自然と全員日向の元へと揃っていた。日向の傷もほぼ塞がり、日愛が目覚めたことで布団は片付けている。そんな部屋の中心で正座している日向の正面に四人もまた座った。
 灯澄、燈燕、陽織、スズ。日愛はまだ身体が慣れていないのか、日向の膝を枕にして眠ってしまっていた。

 誰もが何の話をするのかは分かっている――その為か、皆一様に神妙な表情をしていた。陽織は特に、神妙というよりも心配と悲しみが勝っている。
 そんな四人から視線を向けられる中、日向は静かに座っていた。まるで、日向の周りだけ別の空気が纏われているような、惑わず、静かに、そして、柔らかく。優しい微笑で日愛の頬を撫でてから、日向は顔を上げた。