「燈燕さん……きっと、日愛の言葉のままだと思います」

 日愛が教えてくれた。母と……日和と自分は共に在ると。ずっと一緒だと。
 そして、日向もまた、それを信じることができた。何故だか分からない。けれど、きっとおそらく、一緒だったのだ。今までずっと……この十四年間、ずっと共に。

「日愛は一緒だと言ってくれました。わたしと日和母様はずっと一緒だと……きっと、共に居てくれたのですね。ずっとずっと……」
「……成程。日愛なら、分かるかもしれぬな。人の心の奥を、纏う全てのものを」

 燈燕の後ろで二人の会話を見守っていた灯澄は静かに頷いた。

 日愛は神の血筋の者。いわば神に近い者。生命の輪廻や万象の理も……幼いゆえ言葉に現すのは難しいようだが、感じることができても不思議ではなかった。いや、幼いからこそ感じているのかもしれない。
 そして、それは母と慕っていた日和の生命ならば尚の事。日愛が日向の中の日和を見出すのは当たり前かもしれない。現に、日愛は迷いなく日向を『ははさま』を呼んでいた。あの鎮守の森で目覚めた、あの時から。

「ありがとう、日愛」

 お礼を伝え、日向は日愛をぎゅっと抱きしめる。慕うように甘えるように日愛もまた日向の胸に顔を埋めた。
 日愛の背中に手を回し――日向は少しだけ瞼を伏せる。

(日愛……)

 心で呟き、気持ちを共にする。悲しい気持ちを――母ではなく日向として。日和の子である日向として。
 一緒の子供だからこそ分かったこと。日愛の瞳の奥に宿った一つの悲しみ――触れているからこそ分かる日愛の心が感じていること。

 ――きっと日愛は気付いている。日和がもうこの世に居ないことを。亡くなっていることを。

「ははさま……日向ははさま」

 呼ぶ日愛に応えるように、日向はもう一度ぎゅっと抱きしめた。
 日和と一緒の子として、そして、母として、日向は優しく日愛を抱きしめ続けた。
 日愛の全てを受け止め、包み込むように、ずっと……