「そうです。日和母様(かあさま)は、日愛のははさまであり、わたしの母様です」
「…………」

 日愛は真っ直ぐに日向を見つめていた。綺麗で純真な瞳――その瞳に何が映っているか。瞳の奥に何が宿ったか。
 そして、自分はどう映っているのか――日向もまた日愛を見つめる。不安もある。惑いも……ある。日愛の親になると覚悟を決めていても、愛し護ると決めていても、日愛が自分を認めてくれるかどうかは別だった。
 母と同じように――知らぬ日和と同じようになれるかどうか。それは、日向にも分からない。
 しかし、

「……でも、一緒だよ。ははさまと一緒」

 日愛は真っ直ぐ見つめたまま、純粋な無垢な言葉を唱え、そして、頬を撫でていた日向の手に自分の手を沿えぎゅっと握る。

「同じだもん。全部、同じ。ははさまと同じ」
「……日愛」

 その言葉に日向は驚き――すぐに日愛の想いを悟り優しく微笑んだ。返事をするように、自分のこの深い想いの全てを伝えるように愛しい子の名を呼んで。

「違う、日愛。似ているが、日向は……」
「いえ、違います。燈燕さん」
「? どういう意味だ、日向?」

 燈燕は二人の居る布団へと近づき慌てて否定しようとし、返された日向の言葉に続けて問いかけた。
 日向は燈燕へと優しく微笑み、問いかけられた答えを聞くように日愛へと視線を向けた。もう不安もなく惑いもない。日愛の気持ちが分かったから……

「日愛……わたしと日和母様は同じ?」
「うん、おんなじだよ。ずっと、一緒」
「そう」
「だから、ははさまなの。日愛のははさま」
「うん、ありがとう、日愛」

 日向はお礼を伝え、もう一度燈燕へと視線を向けた。