「その後、お前はどうなる日和。お前一人に責を負わせることはしないと、我らも話したはずだ」
「大小母様にはご恩があります」
「だが、その当主は後悔もしていたのだろう。月隠を席に入れてしまったことを」
「わたしたちは、代々月代家に仕えてきました。それを、わたしの一存で全てを捨てるわけにはいきません」
「だが、我らはそれを許さぬ」
灯澄の鋭い視線を正面から受け止める日和。少しも逸らさず、惑いなく、真っ直ぐに、どこまでも澄んで。
繰り返しだな――灯澄は自分で話した言葉をもう一度心で呟く。この事は何度も話したことだった。自分が話すことも日和が返すことも同じ――そして、日和の覚悟も全く変わっていない。
日和が不変であることは分かっている。まるで日和の覚悟の強さを確認しているようなものだ――そうも思う。そして、確認するほどに悔いが強くなっていった。
めぐり合わせの縁を呪う、日和と出会ったことを。
「……すまない。我らと関わったことで不幸を呼んだ」
「それは違います。わたしはお二人と……日愛と出会ったことを一度も不幸だとは思ったことがありません」
灯澄の言葉を強く否定し、日和は優しく微笑んだ。
「むしろ、嬉しく幸せでした。皆さんと過ごす日々は本当に愉しくて……灯澄さんたちと出会わなければ、こんな幸せは得られなかったでしょう。本当に感謝しているのです」
「だが、今こうなってしまっている。我らのせいで」
「違います」
日和は再び否定した。それは本心からの言葉だった。むしろ、責められるべきは自分……そう日和は感じている。巻き込んでしまったのは自分だと。
しかし、いくら悔い謝罪したとしても、その言葉はなお灯澄たちを苦しませることを知っている。だから、日和はニコリと微笑んだ。
「わたしは皆さんに助けられたのです。ただただ……暗く影ある日々に陽を照らしてくださいました。感謝してもしきれません」