「ほんとうに久しいこと。こうして二人でお茶を楽しむことも」
「そうですね」

 弥音の呟きに、日和も頷いた。日和にしてみても、今は心地いい愉しい時間だった。陽織や家の者も友人と思い、愉しい時はあるのだけれど、弥音との会話はまた久しく忘れていた時を思い出させてくれた。
 大小母様が生きておられた時――祖父母も、父も母も、そして、夫も居た、笑顔の日々のことを。たった数年前の日常を。

(――だけれど)

 今は戻らないことも、感傷に浸るべき時でもないことは知っている。

「弥音様」

 日和はスッと背を正すと、布団の上で正座した。膝に手を当て、まるで合図のように弥音へと視線を向ける。

「お話しなさってください。今回のこと、わたしの身体の様子だけを見に来たわけではないことは知っております」
「…………」

 弥音は咄嗟に言葉を返せず黙った。知っていた――日和が聡いことは。感ずかれることも、分かっていた。だからといって、迷いがなくなるわけではない。例え、上首の命だからといっても――親友だからこそ。

「弥音様」

 強い瞳。凛とした日和の眼差し。
 変わらない――些かも惑っていないその強さ。

「……本当に貴女は」

 弥音は悲しく微笑み、そして、自身も覚悟を決める。日和が覚悟をしているならば、こちらが迷うべきではない。

「包み隠さず話しましょう。私の気持ちも含めて、偽ることなく」

 弥音はまずそう話した。話すのであれば本心の全てを話す、日和に会うと決意してからそう決めていた。また、その機会は二人きりの今しかないと思っていた。本家に近づけば、本心は話せない。だからこそ、言葉を選ばず弥音は明快に伝えた。

「上首は、貴女を屋敷へ連れて来いと命じました。病で臥せっているということを分かって、それでもなお直ぐに連れて来いと」

 日和は黙って聞いていた。その事は予想していたことだった。弥音は続ける。