「「「妹が幽霊を見た?」」」
「そう、幽霊。」
龍哉くんと僕はクラスメイトであるサッカー部の田浦くんと野球部の本山くんと4人で昼ご飯を食べていた。田浦くんにお昼を誘われたからだ。
「うっそだぁ〜お前な、UFOだって誰かの見間違いって言われて結局誰も見なくなったんだぞ?それもなんかの間違いだろ〜」
本山くんが馬鹿にしたように返す。違うよ、本山くん。UFOは『あやかし』だったし、君も『あやかし』…『ヒダル神』に憑かれていたんだから、幽霊を馬鹿に出来ないよ。心の中で返す。龍哉くんも本山くんを少し呆れた顔で見ている。「こいつ、死にかけたくせに呑気だな」とでも思っているんだろう。
「で、その幽霊が?」
龍哉くんが話の続きを聞こうとする。田浦くんが続ける。
「妹が言うにはさ、「斬りたい」って言って彷徨うようにうろうろしてるらしくて、保育園の近くをうろついてるのが見えるんだけど保育園に入っては来ないんだとよ。んで、俺が迎えに行くタイミングで消えるらしい。」
「ふ〜ん…保育園の近くにはいるけど入って来れなくて、田浦くんが近づくと消える…」
僕が頭の中で考えたことを龍哉くんも考えたようで田浦くんに少し乗り出して話を続ける。
「なぁ、田浦。お前、瑞桃の守り、どこにつけてんの?」
「え?部活のスポーツバッグだよ。部活ない日でも大抵持ってるしな。これ、持ち歩かなきゃいけないんだろ?」
「そうだな。おい、聖仁、ちょっとこっち。」
龍哉くんが僕を廊下に連れ出して小声で話す。
「お前も思っただろうから言うけど、おそらく田浦が近づくといなくなるのは瑞桃の守りが関係している。」
「でも本山くんはヒダル神に憑かれてたよ?」
「瑞桃の守りの効果が3回の理由、知ってるだろ?」
「3回も危険に飛び込むやつは自己責任…」
「それは冷たく言い過ぎだけどそういうことだ。本山が『ヒダル神』に憑かれたのは洞窟を覗き込んだからだ。瑞桃の守りはな、自分から『あやかし』に接触した場合、効果は薄くなる。『あやかし』を避けるための守りだから、危険に飛び込んでるやつは守れる対象じゃなくなるんだよ。それこそ憑くことが可能になるくらいにな。」
「つまり、田浦くんはたまたまそこを歩いてるってことで自分からの接触には入らないから守られている…?」
「そういうことだ。でも妹から霊の存在を聞いた。存在を認識したということになる。そうなると同じように通ってても話が変わってくる。」
「存在を知ってその場に行くことは自分からの接触になっちゃうってこと?」
「あぁ。まずいな。」
「やっぱり、『あやかし』がいるの?」
「おそらく。」
「いるな。それは『アカシサマ』だ。」
「わぁあ⁉︎」
突然の低い声に驚く。龍哉くんは僕の後ろに目線をやった。
「なんだよ、武。盗み聞きかよ。」
「龍哉、廊下で『あやかし』の話は控えるように。『あやかし』の話をすることで聞いた生徒が不安や恐怖を感じ、その感情が新たな『あやかし』になりかねない。怪異とはそうやって生まれてきたんだ。」
「へいへい。」
黒岩くんのお説教を適当に流す龍哉くん。まるで先生と不良だ。
「四方、お前もだぞ。」
僕も黒岩くんに注意される。
「黒岩くん、ごめんなさい。」
これは素直に謝っておいた方がいいと思ったので謝ると黒岩くんはうなずいた。
「分かればいい。あと黒岩じゃなく、武でいい。」
「友達になりてぇってさ。」
「おい、龍哉‼︎」
黒岩くんをからかうように龍哉くんが言った。
「えっとじゃあ、武くん。僕も聖仁って呼んでね。」
「聖仁、よろしく頼む。」
「こいつ、この前のヒダル神の件を聞いてから五神の加護もないのにクラスメイトのためによく立ち向かったとかなんとか言ってたんだよ。」
「えぇ…そんな。」
恥ずかしい。他の五神のメンバーは僕を手荒に扱うことが多いのでそんなストレートに褒められると照れてしまう。武くんがコホンと咳払いをする。顔が少し赤くなっている。武くんも暴露されて恥ずかしいよね。落ち着いたイメージの彼のそんな姿は僕にとってはかなり好印象だ。
「とりあえずだ。それに関しては俺が対応しよう。」
「えっ、凛さんに言わなくていいの?」
「構わない。」
武くんが即答する。
「えぇ…凛に言わねぇの?う〜ん…念のためオレも行く。相手は「斬りたい」って言ってるんだろ?だったら、オレが適任だろ。」
龍哉くんが面倒くさそうに言った。確かに刀を扱う龍哉くんがいれば心強いだろう。
「僕も行くよ。龍哉くんたちじゃ勘付くかもしれないなら、僕が囮として、御守り外したまま行こうか?」
「おい、聖仁!それは危ないだろ。」
龍哉くんが慌てて僕を止める。
「龍哉くんたちがいるなら大丈夫だよ。それにがしゃ髑髏のときは御守りが僕を守ってくれたんだ。作ってくれた武くんにはお礼をしたいし。」
「聖仁、協力を頼めるか?」
武くんが僕に言った。
「もちろん!」

田浦くんから聞いた話によると保育園に迎えに行く少し前の時間に『アカシサマ』は出るらしい。放課後、保育園の方に向かいながら話す。
「アカシサマは人を斬りたいという欲で乱心している殿様の霊だ。欲を抑えきれず、家からこっそり外にでていた幼子を斬った。そして、それを憎んだ幼子の親によって殺されて霊になったとされている。」
武くんが説明をしてくれる。
「だから「斬りたい」と言って彷徨っている…?」
武くんに確認するように話しかける。
「そうだ。まだ欲を抑えきれず、子どもを探している。それで保育園の近くに出るんだろう。だが、アカシサマは外に出ている子どもにしか接触出来ない。『アカシサマが出るから子どもは夜に外に出て行ってはいけない』という言い伝えがある。怪異などの対策方法は怪異の成り立ちに影響する。外に出ていた子どもを斬ったという成り立ちが「外にいる子どもにしか接触できない」という縛りになったんだ。」
「武くん、詳しいんだね。」
『あやかし』に関わるからと言えど、こんなにしっかり説明をしてくれるとは。
「俺の家は由緒正しい神社だ。姉も巫女をしている。なので『あやかし』のことも幼い頃から知っている。」
武くんが誇らしげに言った。そのあと少し顔を曇らせる。
「学校の守りはまだ完全ではない。姉が玄武の加護で瑞桃を守っていた頃はもっと強固なものだったはずだ…。」
「お姉さんも玄武の加護があるの?」
加護って代々みたいな感じなのかな?僕が驚いていると龍哉くんが続ける。
「瑞桃高等学校附属中学校では五神…というか四神が5年ごとに学校を守るのが伝統なんだよ。」
「四神…」
「そ。青龍、朱雀、白虎、玄武。これで四神。」
龍哉くんが説明してくれる。
「凛さんの麒麟は…?」
「麒麟に加護を与えられる人間は100年に1度いるかいないかの存在なんだよ。だからなのか加護は強力だし、まじないも強くなる。」
「そうなんだ。凛さんってすごいんだね。」
感心したようにいうと武くんがムッとした顔になった。
「別に黄野がすごいわけではない。麒麟の加護があっただけで本人は信心深いわけでも修行をつんでるわけでもないし、別に血筋だって他の四神のような…」
「武。それ以上はやめろ。」
武くんが続けようとしたときに龍哉くんが遮った。横を見ると龍哉くんが武くんを睨んでいた。
「武、お前の努力は認めてるけど、それは凛を悪く言っていい理由にはならねぇ。」
「…すまない。」
武くんが素直に謝った。なんとなく、武くんには彼なりの考えがあって本心から凛さんが憎いわけではないのは分かった。
「ん。オレは武の努力も凛の才能も認めてる。」
龍哉くんの一言に武くんが返すことはなかった。

「じゃあ、ここからは僕が1人で行くね。」
保育園から少し離れたところで2人と別れる。
「聖仁、これを持っていけ。」
武くんに渡されたものを見る。
「これは…小さい木刀?」
「あぁ、これは俺が加護の力をこめて作ったものだ。『あやかし』に勘付かれないように強い加護ではないが、守ってはくれるだろう。」
武くんが僕を見た。自信のある目だ。武くんは自分の力に自信を持っているんだな。
「ありがとう。持っていくね。」
鞄に大切に入れておく。
「アカシサマがでたら、引きつけてここまで来ればいいんだよね?」
2人に確認する。
「この公園に俺の守りの陣を張っておく。がしゃ髑髏のときを覚えているか?あれと同じようなものだ。」
「この五芒星の模様の真ん中に来たら陣が発動する。そしたらオレらにも分かるから駆けつける。んで、オレがアカシサマを斬る。」
武くんと龍哉くんが手順を教えてくれる。
「分かった!待っててね!」
「頼んだ、聖仁!」
「気をつけろよ!」
武くんと龍哉くんは公園から少し離れた場所に待機しに行った。しばらくの間、うろうろしてみたがそれっぽいこともなく、空が暗くなり人通りが少なくなってきた。
「今日は出ない日かな…?」
一言つぶやいたときに、ぞわりとした感覚があった。『それ』はこれまでも何度か経験した命の危機の恐怖。
『キリタイ…斬りたい。』
バッと後ろを見ると歴史上人物のような殿様の格好をした男。『アカシサマ』だ。しっかり目があった。
『斬りたい…お前を斬りたい‼︎』
やばい。そう思った時には体は動いていて。思い切り走る。いける。これなら陣まで誘導できる。そう油断したのがいけなかった。
『ニゲるのか…『迷い子』、『連ぬ人の(ひざまず)き』』
「っ⁈」
急に足の力が抜けた。アカシサマが刀を振りかぶる。顔を守るように鞄を向けると
「うわぁ⁉︎」
鞄が真っ二つになった。一刀両断…。転校してきて、買ったばかりなのに…!咄嗟に鞄から木刀だけ拾うと足に力を入れて公園に入る。油断した…。ヒダル神のときと同じだ。アカシサマは(まじな)いをつかえるのか。でも陣まであと少しだ。
『キる、キリタイ…『幼子の泣き(とよ)み』』
「うっ…‼︎」
頭に爆音が響く。周りで響いてるわけではない。僕の頭の中に人の泣き叫ぶ声が聞こえる。(まじな)いをつかわれたんだ。音の情報はもう拾えないので目を頼りにする。後ろを振り向くとアカシサマは僕を追いかけてきていた。覚悟を決めるしかない。アカシサマが僕に刀を向ける。そして刀を振り下ろす。
『っ⁉︎』
「…っ‼︎やぁっ‼︎」
持っていた木刀でアカシサマの刀を受ける。受けきれなかった刀の切先は肩に当たって斬れて痛い。しかし、木刀が刀を弾くように火花を散らす。加護の火花だ。アカシサマが怯んだ隙に木刀を斜めにすると力を僕の方に入れていたアカシサマがバランスを崩す。バランスを崩した先には、武くんが張った陣。よし!と、思ったがアカシサマは陣の目の前で体勢を立て直した。
「くっ‼︎」
『!』
ここまできて引き下がれるか。陣に押し込むようにアカシサマに木刀を振り下ろす。アカシサマに刀で受けられるが押し込むつもりで力を入れる。頭に爆音が響いてクラクラするし、もうヤケクソだ。体重をかけて押し込む。しかし、相手は戦国を生きたとされる殿様の『あやかし』だ。力の差は歴然で。僕が徐々に押されていく。龍哉くんと武くんは陣の発動で駆けつける予定だ。陣さえ発動すれば2人は来る…!ジリジリと押しあい、僕の手が痺れてきたときに突然僕の後ろからアカシサマの刀が弾かれた。キィン…!という刀同士が当たった金属音が響く。
「聖仁、待たせたな‼︎」
爆音が響いていたはずの僕の耳に、頼りにしていた勇ましい声が聞こえた。アカシサマが弾かれた勢いで陣に入った。そして、出ようとしても陣からは出られない。
「龍哉くん‼︎」
「遅くなってわりぃ。アカシサマが何かしたのか、お前の姿があやふやになっちまって…」
「あ…。」
思い出す。僕が転けてしまう寸前。『ニゲるのか…『迷い子』、『連ぬ人の(ひざまず)き』』とアカシサマは言った。あれは僕を「迷い子」と言ったわけではなく、(まじな)いをつかったんだ。それで僕は迷子のように姿が見えなくなった。
「多分、(まじな)いをつかってた…。」
「やっぱりか。」
龍哉くんが陣の方を見るとアカシサマは自分の身に何が起きたか分からず混乱したように周りを見ている。武くんが陣の近くに立っていた。
「聖仁、協力感謝する。ここからは俺たちの仕事だ。」
武くんからの言葉を聞いて、安心した僕はその場に座り込んでしまった。龍哉くんが両手に刀を持ち、陣の方に走る。
黎明(れいめい)!』
横一閃の太刀筋。アカシサマは陣の中で器用に龍哉くんの攻撃を避けた。
「龍哉、任せろ!」
叫んだ武くんの方を見ると大きな盾を手に持っていた。その盾で勢いよく地面を殴る。
泥土陥穽(うきかんせい)!!』
武くんの低い声が響いた瞬間に、ドプンッとアカシサマの足元が沼地のようになる。足元の変化によりアカシサマがバランスを崩す。
『キル…きル、キリたい…キラセろ!!』
叫ぶアカシサマ。何を言っているのかは分かるけど、それが意思疎通出来る状態の言葉ではないことを感じる。
「龍哉!」
「分かった!」
武くんの目に強い光が入った。言葉を紡ぐ。
『天からの降り積む六つの花―――』
『抜けば玉散る氷の刃―――』
続ける龍哉くんの目が蒼く輝く。
『『(ささ)(ゆき)!!』』
ずしりと何かの重みがかかったような動きをしたアカシサマをキラリと光る刀で龍哉くんが一刀両断した。黒くどろりとしたものが陣に消えていく。
「やった…?」
「あぁ…」
「俺たちの勝ちだ…」
「「「やったーーー!!!」」」
3人で声を上げる。夕方で人通りも少ない場所なので声が響いた。
「聖仁、よくやってくれた…!」
武くんが思い切り僕を抱きしめる。うぎゅ、苦しい…。
「おい、お前ラグビー部なんだから。力いっぱい抱きしめるやつがいるかよ。聖仁、潰れんぞ。」
龍哉くんが止めてくれた。そして僕に拳を出す。
「やったな、聖仁!」
「うん!龍哉くんも、武くんもね!」
僕は2人に拳を出し、グータッチした。3人で力を合わせた『あやかし』退治だ。夕焼けが落ちてきそうな空の中、僕たち3人はわいわいとお互いを褒め称えながら、隠し部屋に帰ったのだった。

隠し部屋の扉を開けると待っていたのは地獄の時間だった。僕たち3人は今、椅子に座って脚を組む凛さんの前に正座している。凛さんは扇子を開いて目を細めている。迫力のある怒り顔だ。
「で?武、言い訳はある?私に言わないって決めたのは武だよね?」
「………」
武くんは黙っている。
「おい、凛…」
龍哉くんが助け舟を出そうとする。
「龍哉は黙ってて。」
「……はい。」
助け舟、沈没。
「神社生まれでもない、修行もしてない、血筋も別に由緒正しいわけではない私が、麒麟の加護のおかげでリーダーです。というのが気に食わないようだけど?」
「おい!凛、それは…!」
龍哉くんが立ちあがろうとする。
「龍哉、うるさい。」
「ごめんね、青山。凛ちゃん話してるから。」
「でも、朱音っ、ぐぇ、白水ぅぅ…」
朱音さんが遮ったあと、白水くんが龍哉くんに絞め技をきめた。綺麗なバックチョークだ…。黙った、わけではなく黙らせられた…。その様子を気にするでもなく凛さんは続ける。
「独断で動いて、協力者が怪我をしたんだよね?聖人(せいじん)くんにお手伝いを依頼したことは私もあるよ?それで怪我をさせてしまうこともあるかもしれない。でも危険度を下げることはできたよね?私に報告しなかったことが、武のミスだよ。」
はぁ〜っと凛さんが苛立ちを含めたため息をつく。見たことない姿だ。
聖人(せいじん)くん、ごめんね。痛かったよね。傷から『あやかし』の(まじな)いは感じないから物理的なものだし、普通に治るとは思うけど…」
凛さんが僕の肩をみる。『アカシサマ』に斬られた肩は、帰った瞬間に凛さんが気づいて手当てをしてくれた。
「大丈夫だよ!僕が囮になるって言ったんだし…」
僕は慌てて返事した。僕がやるって言ったんだし、武くんだけが責められるものではない。
「いや、俺の判断が悪かった。すまない。」
武くんが僕に頭を下げた。
「反省してるなら、もういいよ。私からの話はこれで終わり。」
凛さんは納得はしてなさそうだけど、そう言ってくれた。ほっと胸を撫で下ろす。どうなるかと思った。
「と、いうわけで、朱音、あとはよろしく。」
「「「え???」」」
「凛、任せて。龍哉、黒岩、四方。来なさい。龍哉のお祖父様の道場で稽古と掃除。話はつけてある。待ち構えてるわよ。反省したなら罰を受けなさい。」
朱音さんが外に出る準備をはじめる。
「はぁ⁉︎じいちゃんに言ったのかよ‼︎」
「青山先生の道場か…」
「僕も⁉︎五神じゃないのに⁉︎」
龍哉くん、武くん、僕がそれぞれに文句を言う。龍哉くんのおじいさん、むちゃくちゃ怖い剣道の師範って本山くん言ってたよね…。
「四方が囮になるって言ったんでしょ。自分で言ってたじゃない。連帯責任よ。」
朱音さんは相変わらず冷たい。
「はい、3人、どうぞ。」
白水くんが桃の匂いのする紅茶を出してきた。そうだ。浄化を忘れていた。武くんと龍哉くんと一緒にコップに入った紅茶を飲む。
「「「…!うげぇぇぇ…!」」」
に、苦い⁉︎桃のいい匂いなのに苦いっていうか渋いっていうか…!なんというか…まずい!白水くんを見ると白水くんは笑っている。
「悪い子専用。玉城特製の桃ジャム入り紅茶。味、紅茶じゃないよね。大丈夫だよ、浄化の効果はあるし。」
えぇぇ…桃ジャム?もしかしてこのおこげみたいなのが?よく見ればお茶に黒いものが浮いている。
「朱音、お前、料理苦手にもほどがあるだろ!」
「玉城…」
龍哉くんが朱音さんを責めた。武くんは憐れみの顔で朱音さんを見ている。僕たちの反応に朱音さんが般若の顔になる。
「うるさいわね!こっちもそういうつもりで作ったんじゃないわよ‼︎白水も変なことにジャム使わないで‼︎」
「玉城の作ったジャム残っちゃってたんだもん。」
白水くんはしれっと言った。ふん、と朱音さんは怒ったようにそっぽを向く。そして、勢いよく僕たちを振り返った。
「何してんのよ!早く飲んで準備しなさいよね!」
八つ当たりだ。僕たちは反論も出来ず、渋々紅茶を飲みきり、龍哉くんのおじいさんの道場に行く準備をした。