「はい!というわけで、学祭の出し物決定!うちのクラスは、執事&メイド喫茶!青春、青春!」
担任の元気な声が響く。
「聖仁、頑張ろうな。キッチン担当。」
「ね。田浦くんとなら安心。」
田浦くんと僕が穏やかに話す中、隣がうるさい。
「私、キッチンでいいのに…。」
「あたしも…。」
「朱音はぜってぇダメだろ。それはそうとして、なんでオレまでこっちなんだよ!」
「いいじゃん、楽しんだもん勝ちだぜ!」
「なんで、本山はノリノリなんだよ!」
凛さん、朱音さん、龍哉くん、本山くんのホール担当たちが騒ぐ。
「頑張ろうな。…客寄せパンダたち。」
「田浦、てめぇそんな風に思ってたのかよ!」
田浦くんに掴みかかる龍哉くん。
「そんな、ビジュ担当なんて…照れるな。」
満更でもない本山くん。
「お前は、面白賑やかし枠だよ。」
田浦くんは、龍哉くんに掴みかかられながらも本山くんにツッコミを入れた。
放課後、図書室の近くをうろつく。凛さんたちはホール担当だから、衣装の採寸があるらしい。カメラを持ち、学内の紅葉を撮る。山の方は枯れてきてるが、校内はまだ鮮やかな赤が残っていて、いい写真が撮れそうだ。
「よっ。」
「あ、弥太郎先輩。」
少し影が出来たと思ったら、真後ろに弥太郎先輩が立っていた。
「学祭の出しもん、決まったか?」
「…執事メイド喫茶です。僕はキッチンで。」
「へぇ〜そういうの、絶対1クラスはあるんだよな。毎年。」
「弥太郎先輩は?」
「演劇〜。碧が採寸で、今、暇なんだよ。」
近くのベンチに弥太郎先輩が座る。僕もカメラをしまい、隣に座った。
「ちなみに、かづと美宇は瑞桃の歴史展示だってさ。どこまで真面目なんだよ。な?」
「瑞桃は歴史があるから、展示しがいあるんですかね?」
「さぁな〜。あ、1本やるよ。当たったけど2本も飲まね〜。」
「えっ、ありがとうございます!校内の自販機でも当たりとかあるんですね。」
缶ジュースを差し出される。受け取ると弥太郎先輩はもう一本ポケットから出して、開けた。カシュッ!と軽やかな音が、秋の乾いた空気に響く。ふと、気になったことを聞くことにした。
「先代の四神の皆さんって何を使って戦うんですか?弥太郎先輩は刀でしたよね?」
初めて弥太郎先輩に会った時に、朱音さんが言っていた。
「ん?あぁ。美宇は御幣と札だな。あいつはまじないの力が強いから。」
御幣…あの棒に紙のついたやつだ。いかにも巫女さんらしい。
「んで、碧は拳鍔。」
「え、それって…」
「そう、武が前線に出るときに使ってる武器だよ。武は碧の戦闘スタイルをみて、盾を拳サイズにするという着想を得たんだよ。まぁ、碧はもっと格闘に近い感じだけどな。」
「へぇ〜。」
人から着想を得るところが、努力家の武くんらしい。
「かづ生徒会長は?」
僕が聞くと、弥太郎先輩が目の前に、デコピンの形にした手を出した。
「あいつはな〜。指弾って知ってっか?指でな、物を弾くんだよ。」
そういって弥太郎先輩は、デコピンのふりをして、「ポン!」と、舌で音を鳴らす…ポッピングをした。
「それって…武器を持ってる人たちより…なんというか…」
「弱そうだろ?」
言葉を選んでいると、弥太郎先輩が言った。はぁ〜っとため息をつく。
「それがなぁ〜。まじでやべぇの。ほぼ銃だしな。」
「銃⁈」
「そ。しかも予備動作いらねーから、急に攻撃できるし。暗殺とかできんじゃねーの?みたいな。そこらの石とかでいいし、あいつ、色んなとこに弾になるもの仕込んでるし。」
「…なるほど。」
弓を引く、刀を抜く、その予備動作がいらないことは強みだろう。素早く敵を撃ち抜く、かづ生徒会長を想像した。
「…かっこいいですね。」
「あ?お前も、かづがいいの?」
ぷく、と頬を膨らませる弥太郎先輩。その表情、美形だから似合うけど可愛くはないです。
「お前もって…凛さんのことですよね?そういえば、凛さんはなんであんなにかづ生徒会長が好きなんですか?」
「あ〜…それはなぁ…」
弥太郎先輩が少し遠い目をする。僕は、話を聞くお供として、カバンの中のお菓子を取り出し、箱を開けた。弥太郎先輩がひとつ取り、口に入れた。そのまま缶ジュースを飲み、ペロリと唇を湿らす。
「あれは五神が揃ってから数日経ったとき…」
―
――
―――
あの頃は、まだ五神は全然うまくいってなかった。
「だぁかぁらぁ‼︎凛と朱音は後ろの方にいて、オレが前線やればいいだろって‼︎」
「あたしだって、前線向きの技もあるし!それにいつも、あやかしを見つけた時に龍哉といるとは限らないでしょ⁉︎」
戦い方で揉める龍哉と朱音。
「姉さんは何を考えてるんだ。いくら麒麟といえど、歴を重ねてきた玄武が主体となるべきじゃないか…」
「先代からの指示ならしょうがないでしょ。ぼくは別に何だっていいけど。」
五神としてのこだわりが強い武は、凛を認めない。そして、逆に五神としての気持ちが圧倒的に薄い白水。武は凛を睨み、その横で白水がチラチラ凛を見る。
「みんな、怒らないでよぉ…」
他のメンバーと違う、稀の存在だった凛。凛はそもそも気が強い方じゃねぇ。あのときはもっとメソメソしたイメージだった。突然リーダーになった凛の言葉は弱々しくて、頼りなくってな。先代としてどこまで口をだしていいものか、おれらも五神の扱いに迷っていた。
「うーん…。どうしたものかしら。」
「こいつら、想像以上に…。」
「凛には向いてないでしょ…。」
美宇、おれ、碧が、ため息をついた。その時だった。
「こら。リーダーを困らせるんじゃない。」
それまで、黙っていたかづが、静かに言った。
「かづ生徒会長!でも…‼︎」
「先代だからって口出さないで。」
武、朱音が反論し、龍哉がムッとした顔をした。かづはその瞬間に…3回、小さく指を弾いた。コココッ‼︎と変わった音が響いた。
「「「っ…⁉︎」」」
3人が額を抑えてうずくまる。
「「えっ⁉︎」」
何もなかった白水と凛が動揺する。コロコロと床に転がるものを白水が拾う。
「小さく切った…消しゴム?」
「おい、かづ。お前のそれ、いてぇんだよ…。」
「お仕置き用だから、痛いに決まってるだろ。」
かづの指弾。それは、その気になれば、頭に風穴があく。
「麒麟がリーダーとなることは、先代であるぼくたちの意見だけではなく、歴代で決まっていることらしいじゃないか。それに、戦い方も話し合うべきだ。全員の意見が通るのではなく、全員が納得する形にするんだ。」
かづの言葉に、額を抑えていたメンバーは口をつぐむ。白水と凛は、じっと、かづを見つめた。目元の濡れた凛が、驚いたように目を開くと、コロンと雫が落ちる。
「黄野、もうメソメソするんじゃない。…ほら。」
かづが、しっかりとアイロンされた清潔感のあるハンカチで凛の涙を拭く。
「んぶ…。」
軽く涙を拭いてもらったあと、ハンカチを渡される凛。
「美宇たちも見てるだけじゃ駄目だろう。五神が100年に1度とはいえ、四神自体はずっと引き継いできたものだ。ぼくたちだって、先代に導いてもらってきたんだから、それを後輩に同じように…いや、それ以上に力を貸すべきだと思うけどな。君たちが、身内に対する感情だけで動くのはよくないんじゃないか?」
かづの言葉に、おれらはギクリとした。少なくとも、おれと碧は、身内に甘い自覚があったからだ。
「そりゃ…まぁ、良くはねーよな。」
図星を突かれたおれは、そう返すので精一杯だった。かづは、柔らかくもあきれたように笑った。それは人を責めるものではなく、しょうがないと包み込むことを決めた笑い方だ。その笑顔で、凛に振り返る。
「黄野、何か困ったことがあるなら、ぼくに言うといい。美宇、弥太郎、碧だと、自分の身内を庇うこともあるだろう。それなら、ぼくが黄野の味方になるべきだ。平等にね。今日からぼくのことを兄だと思ってくれていいから。白水もね。」
「はぁ?」
白水は理解不能という顔をした。にこりと、かづが笑い、凛の頭を優しく撫でる。
「な。黄野、頑張ろうな。」
「ひゃい…♡」
凛は、かづに釘付けだった。凛が幼少期、駄々こねてまで欲しがったもの。それは兄だった。おれは、小さい頃に凛が「あかねとたつやは、あおちゃとやたろがいるのに〜‼︎」と泣いていたことを思い出した。碧もおれと同じことを考えているのか、何もない上の方を見つめていた。ちなみに、白水は、凛の様子を見て、ギリギリとかづを睨んでいた。
―
――
―――
「…というわけだ。」
「…なるほど。それで、凛さんは、かづ生徒会長にはあんな感じなんですね。」
うんうん。僕は頷いた。心許ない中、兄のように思っていいとフォローしてくれたかづ生徒会長にメロメロな凛さんの気持ちも分かる。あれは兄に甘える妹の姿でもあるのか。
「あ。碧の採寸終わったらしい。」
スマホを取り出し、通知を確認した弥太郎先輩が立ち上がった。
「そういえば、弥太郎先輩は採寸いらなかったんですか?」
「…いらねぇ役だな。んじゃな。」
何かをはぐらかすように詳細を話さなずに、そそくさと立ち去る弥太郎先輩。
「え、絶対面白い役だよね…。僕の記者の勘がそういってる…!」
当日、絶対見に行こう。僕は缶ジュースを握りしめながら、心に決めるのだった。
担任の元気な声が響く。
「聖仁、頑張ろうな。キッチン担当。」
「ね。田浦くんとなら安心。」
田浦くんと僕が穏やかに話す中、隣がうるさい。
「私、キッチンでいいのに…。」
「あたしも…。」
「朱音はぜってぇダメだろ。それはそうとして、なんでオレまでこっちなんだよ!」
「いいじゃん、楽しんだもん勝ちだぜ!」
「なんで、本山はノリノリなんだよ!」
凛さん、朱音さん、龍哉くん、本山くんのホール担当たちが騒ぐ。
「頑張ろうな。…客寄せパンダたち。」
「田浦、てめぇそんな風に思ってたのかよ!」
田浦くんに掴みかかる龍哉くん。
「そんな、ビジュ担当なんて…照れるな。」
満更でもない本山くん。
「お前は、面白賑やかし枠だよ。」
田浦くんは、龍哉くんに掴みかかられながらも本山くんにツッコミを入れた。
放課後、図書室の近くをうろつく。凛さんたちはホール担当だから、衣装の採寸があるらしい。カメラを持ち、学内の紅葉を撮る。山の方は枯れてきてるが、校内はまだ鮮やかな赤が残っていて、いい写真が撮れそうだ。
「よっ。」
「あ、弥太郎先輩。」
少し影が出来たと思ったら、真後ろに弥太郎先輩が立っていた。
「学祭の出しもん、決まったか?」
「…執事メイド喫茶です。僕はキッチンで。」
「へぇ〜そういうの、絶対1クラスはあるんだよな。毎年。」
「弥太郎先輩は?」
「演劇〜。碧が採寸で、今、暇なんだよ。」
近くのベンチに弥太郎先輩が座る。僕もカメラをしまい、隣に座った。
「ちなみに、かづと美宇は瑞桃の歴史展示だってさ。どこまで真面目なんだよ。な?」
「瑞桃は歴史があるから、展示しがいあるんですかね?」
「さぁな〜。あ、1本やるよ。当たったけど2本も飲まね〜。」
「えっ、ありがとうございます!校内の自販機でも当たりとかあるんですね。」
缶ジュースを差し出される。受け取ると弥太郎先輩はもう一本ポケットから出して、開けた。カシュッ!と軽やかな音が、秋の乾いた空気に響く。ふと、気になったことを聞くことにした。
「先代の四神の皆さんって何を使って戦うんですか?弥太郎先輩は刀でしたよね?」
初めて弥太郎先輩に会った時に、朱音さんが言っていた。
「ん?あぁ。美宇は御幣と札だな。あいつはまじないの力が強いから。」
御幣…あの棒に紙のついたやつだ。いかにも巫女さんらしい。
「んで、碧は拳鍔。」
「え、それって…」
「そう、武が前線に出るときに使ってる武器だよ。武は碧の戦闘スタイルをみて、盾を拳サイズにするという着想を得たんだよ。まぁ、碧はもっと格闘に近い感じだけどな。」
「へぇ〜。」
人から着想を得るところが、努力家の武くんらしい。
「かづ生徒会長は?」
僕が聞くと、弥太郎先輩が目の前に、デコピンの形にした手を出した。
「あいつはな〜。指弾って知ってっか?指でな、物を弾くんだよ。」
そういって弥太郎先輩は、デコピンのふりをして、「ポン!」と、舌で音を鳴らす…ポッピングをした。
「それって…武器を持ってる人たちより…なんというか…」
「弱そうだろ?」
言葉を選んでいると、弥太郎先輩が言った。はぁ〜っとため息をつく。
「それがなぁ〜。まじでやべぇの。ほぼ銃だしな。」
「銃⁈」
「そ。しかも予備動作いらねーから、急に攻撃できるし。暗殺とかできんじゃねーの?みたいな。そこらの石とかでいいし、あいつ、色んなとこに弾になるもの仕込んでるし。」
「…なるほど。」
弓を引く、刀を抜く、その予備動作がいらないことは強みだろう。素早く敵を撃ち抜く、かづ生徒会長を想像した。
「…かっこいいですね。」
「あ?お前も、かづがいいの?」
ぷく、と頬を膨らませる弥太郎先輩。その表情、美形だから似合うけど可愛くはないです。
「お前もって…凛さんのことですよね?そういえば、凛さんはなんであんなにかづ生徒会長が好きなんですか?」
「あ〜…それはなぁ…」
弥太郎先輩が少し遠い目をする。僕は、話を聞くお供として、カバンの中のお菓子を取り出し、箱を開けた。弥太郎先輩がひとつ取り、口に入れた。そのまま缶ジュースを飲み、ペロリと唇を湿らす。
「あれは五神が揃ってから数日経ったとき…」
―
――
―――
あの頃は、まだ五神は全然うまくいってなかった。
「だぁかぁらぁ‼︎凛と朱音は後ろの方にいて、オレが前線やればいいだろって‼︎」
「あたしだって、前線向きの技もあるし!それにいつも、あやかしを見つけた時に龍哉といるとは限らないでしょ⁉︎」
戦い方で揉める龍哉と朱音。
「姉さんは何を考えてるんだ。いくら麒麟といえど、歴を重ねてきた玄武が主体となるべきじゃないか…」
「先代からの指示ならしょうがないでしょ。ぼくは別に何だっていいけど。」
五神としてのこだわりが強い武は、凛を認めない。そして、逆に五神としての気持ちが圧倒的に薄い白水。武は凛を睨み、その横で白水がチラチラ凛を見る。
「みんな、怒らないでよぉ…」
他のメンバーと違う、稀の存在だった凛。凛はそもそも気が強い方じゃねぇ。あのときはもっとメソメソしたイメージだった。突然リーダーになった凛の言葉は弱々しくて、頼りなくってな。先代としてどこまで口をだしていいものか、おれらも五神の扱いに迷っていた。
「うーん…。どうしたものかしら。」
「こいつら、想像以上に…。」
「凛には向いてないでしょ…。」
美宇、おれ、碧が、ため息をついた。その時だった。
「こら。リーダーを困らせるんじゃない。」
それまで、黙っていたかづが、静かに言った。
「かづ生徒会長!でも…‼︎」
「先代だからって口出さないで。」
武、朱音が反論し、龍哉がムッとした顔をした。かづはその瞬間に…3回、小さく指を弾いた。コココッ‼︎と変わった音が響いた。
「「「っ…⁉︎」」」
3人が額を抑えてうずくまる。
「「えっ⁉︎」」
何もなかった白水と凛が動揺する。コロコロと床に転がるものを白水が拾う。
「小さく切った…消しゴム?」
「おい、かづ。お前のそれ、いてぇんだよ…。」
「お仕置き用だから、痛いに決まってるだろ。」
かづの指弾。それは、その気になれば、頭に風穴があく。
「麒麟がリーダーとなることは、先代であるぼくたちの意見だけではなく、歴代で決まっていることらしいじゃないか。それに、戦い方も話し合うべきだ。全員の意見が通るのではなく、全員が納得する形にするんだ。」
かづの言葉に、額を抑えていたメンバーは口をつぐむ。白水と凛は、じっと、かづを見つめた。目元の濡れた凛が、驚いたように目を開くと、コロンと雫が落ちる。
「黄野、もうメソメソするんじゃない。…ほら。」
かづが、しっかりとアイロンされた清潔感のあるハンカチで凛の涙を拭く。
「んぶ…。」
軽く涙を拭いてもらったあと、ハンカチを渡される凛。
「美宇たちも見てるだけじゃ駄目だろう。五神が100年に1度とはいえ、四神自体はずっと引き継いできたものだ。ぼくたちだって、先代に導いてもらってきたんだから、それを後輩に同じように…いや、それ以上に力を貸すべきだと思うけどな。君たちが、身内に対する感情だけで動くのはよくないんじゃないか?」
かづの言葉に、おれらはギクリとした。少なくとも、おれと碧は、身内に甘い自覚があったからだ。
「そりゃ…まぁ、良くはねーよな。」
図星を突かれたおれは、そう返すので精一杯だった。かづは、柔らかくもあきれたように笑った。それは人を責めるものではなく、しょうがないと包み込むことを決めた笑い方だ。その笑顔で、凛に振り返る。
「黄野、何か困ったことがあるなら、ぼくに言うといい。美宇、弥太郎、碧だと、自分の身内を庇うこともあるだろう。それなら、ぼくが黄野の味方になるべきだ。平等にね。今日からぼくのことを兄だと思ってくれていいから。白水もね。」
「はぁ?」
白水は理解不能という顔をした。にこりと、かづが笑い、凛の頭を優しく撫でる。
「な。黄野、頑張ろうな。」
「ひゃい…♡」
凛は、かづに釘付けだった。凛が幼少期、駄々こねてまで欲しがったもの。それは兄だった。おれは、小さい頃に凛が「あかねとたつやは、あおちゃとやたろがいるのに〜‼︎」と泣いていたことを思い出した。碧もおれと同じことを考えているのか、何もない上の方を見つめていた。ちなみに、白水は、凛の様子を見て、ギリギリとかづを睨んでいた。
―
――
―――
「…というわけだ。」
「…なるほど。それで、凛さんは、かづ生徒会長にはあんな感じなんですね。」
うんうん。僕は頷いた。心許ない中、兄のように思っていいとフォローしてくれたかづ生徒会長にメロメロな凛さんの気持ちも分かる。あれは兄に甘える妹の姿でもあるのか。
「あ。碧の採寸終わったらしい。」
スマホを取り出し、通知を確認した弥太郎先輩が立ち上がった。
「そういえば、弥太郎先輩は採寸いらなかったんですか?」
「…いらねぇ役だな。んじゃな。」
何かをはぐらかすように詳細を話さなずに、そそくさと立ち去る弥太郎先輩。
「え、絶対面白い役だよね…。僕の記者の勘がそういってる…!」
当日、絶対見に行こう。僕は缶ジュースを握りしめながら、心に決めるのだった。



