少年は僕を昨日の場所まで連れてきてくれた。部屋に入ると大量の本。普通の教室ではないと思っていたけど、昨日の部屋は図書室だったのか。昨日は必死すぎて本の存在に気づかなかった。くるりとまわって部屋を見る。大きな学校なだけあって図書館のようだ。
「連れてきたぜー。」
少年が言うと、奥の方から昨日の大きな男と青年、少女2人が出てきた。朱音と呼ばれていた少女がツカツカと僕の方に歩いてくる。
「生徒手帳。」
短く言い、手を出す。怖い。生徒手帳を奪ってどうする気なんだろう。助けたんだからお金を払えとか言われたらどうしよう。
「お、お金は持ってません…」
怯えながら返事すると
「はぁ⁉︎カツアゲじゃないんですけど!」
少女は烈火の如く怒る。赤みがかった髪をポニーテールにしていて身長は僕と変わらない。美人なこともあって、圧がありすぎる。僕はチワワのように震えた。
「玉城、その睨みは怖いよ〜」
「カツアゲにしか見えないな。」
青年は笑いながら、男は頷きながら、言うと少女はそちらをキッと睨んだ。目を逸らす2人。
「よっと。」
「あっ⁉︎」
僕の隣にいた少年が僕のポケットから生徒手帳を奪いとる。
「えーと、2年2組、よん…せいじん…?」
「「「「聖人(せいじん)???」」」」
他の4人が首を傾げる。
四方 聖仁(しかた せいじ)!です!」
変わった名前だけど!僕はクラスメイトの3人を見る。
「僕、転校初日、自己紹介したよね⁉︎」
「興味ない。」
「オレも聞いてなかったな。」
「あはは。」
朱音?さん、少年、後ろの席の少女がそれぞれ反応する。つ、冷たい…!僕も3人の名前を知らないけど!流石に僕は自己紹介したばっかりだよ⁉︎ショックを受けていると青年が場の空気を変えるように手を叩く。
「はいはい、2年2組の四方 聖仁(しかた せいじ)くん。とりあえずこっちどうぞ。」
図書室の奥に案内される。
「管理室…?」
ここは司書さんか先生しか入れないのでは?と思ったけど、青年を含め、他の4人も当然のように管理室に入った。管理室に入るとさらに奥に部屋がある。隠し部屋…的な?ついていき、隠し部屋に入る。
「うわ…!」
入ってみるとその部屋は思いの外広くて、応接室をもっと豪華にしたような場所だった。キッチンとベッドもあるようだ。
「はい、どうぞ。」
「あ、どうも…」
椅子に座ると青年がお茶を出してくれる。いい匂い、高そうな紅茶だ。青年の方を見ると、にこりと笑いかけてくれた。品のある微笑み、グレーの瞳や色素の薄い茶色の髪はまるで王子様のようだ。
「自己紹介が遅れたね。ぼくは白水 晶(しらみず あきら)だよ。2年1組。」
「2年3組、黒岩 武(くろいわ たけし)。」
青年に続いて男が自己紹介をしてくれる。真っ黒の髪に、がっしりした筋肉。運動部が取り合いになりそうな見た目だ。僕は腕相撲でもしたら秒で負けるだろう…。
「2人とも…お、同い年…」
「見えねーよな。」
衝撃を受けていると少年が同意してくる。白水くんは、ふふ、と笑ったが、黒岩くんは「どうせ…老け顔…」とショックを受けていた。
「あ、オレは青山 龍哉(あおやま たつや)な。」
青山くんは爽やかな笑顔で言った。深い緑のような青のような髪が少しツンツン跳ねている。白水くんとは違うタイプだけど女の子に人気がありそうだ。スポーツマンって感じというか…。青山くんが少女たちを見た。紅茶を飲む少女にせっせとクッキーを用意する朱音さんが僕たちの視線に気づく。
玉城 朱音(たまき あかね)。」
玉城さんはクッキーを用意する手を止めず、それだけ言った。紅茶を飲んでいた少女がティーカップを置く。そしてこちらを見て微笑み、
黄野 凛(おうの りん)だよ。よろしくね、聖人(せいじん)くん。」
「いや、聖仁(せいじ)です…。」
黄野さんは「せいじん」呼びを気に入ってしまったのか訂正しても、にこりと笑うだけだった。あと、黄野さん、ほっぺにクッキーついてます。