「全く原因がわからないなんて……!」
スズカの顔がみるみるうちに青ざめていく。イーハンはさっきから何度も大量の手順書を繰っていた。
管制室全体がそれぞれに原因を突き止めようと動いている。見知った顔も数多い。ということは、三年前の事故の経験者である。よからぬ可能性が脳裏をよぎっているだろう。
席に座ったロイを横目で確認すると、ソーイチはひらりと机に飛び乗り、煙草を探るスズカの右手をしっぽではたいた。
「スズカ。吸い過ぎだ。またテッドに怒られるぞ」
手をはたかれ、こちらをキッとにらみつける。が、机の上にいる存在に、スズカはぽかんと口を開けた。
「ちょっと! 誰!? ここに猫を入れたのは!」
「おいおい。ずいぶんなあいさつじゃねぇか。三年ぶりのご対面だってぇのによ」
三年ぶりという言葉に、スズカの顔色がさっと変わる。スズカは何度か口を開くも、言葉が出ない。ようやく、喉の奥底から声をしぼりだした。
「そんな……バカな……!」
「ま、無理もねぇや。だけど現実だぜ。なんなら、お前が吸ってるの煙草の銘柄、全部言ってやろうか?」
十ある銘柄を一つ一つ挙げていく。周りにいた管制官もスズカの異変に気づき始めた。
「おう。イーハン。いつもありがとうよ。ミラがお前の事を弟みたいに心配してるぜ」
「なんでアンタが……!」
「そう怒るなよ。オレだって気づいたらこうなってたんだからよ」
全くそりが合わなかったイーハンは、汚らわしいものでも見るかのように、にらむ。
スズカの机にある、うずたかく積み上げられた書類の上に飛び乗ると、固唾を呑んで見守る管制官を見渡した。
「よう、みんな久しぶり。……声色は一緒だから気づいてくれたか?」
はっきりと姿を見、声を聞き、ざわつく。証拠を示すようにソーイチは言った。
「ジミー、緊張したら右肩回す癖、まだあるんだな。アスカ、息子は元気か? グレイグ、言っとくがあれは濡れ衣だ。オレもだまされたんだからよ」
グレイグが顔をゆがめる。片目にロイを映しながら、ソーイチは話を続けた。
「エントランスに写真、飾ってくれてるんだな。……正直、うれしかったよ」
イーハンがぴくりと眉を動かす。ソーイチは照れくさそうにひげを上げた。
「意外か? まぁ、三年もたてば人は変わるさ」
言いながらイーハンの後ろにいる気配を探る。耳をぷるんと振るわせると、声を張り上げた。
「みんなどうした? もう一度調べ直そうぜ。三年かけて準備してきたんだ。絶対、原因は見つかるって」
ソーイチが目配せをする。ロイは心得たように通信回路のスイッチを押した。
「スバル? 聞こえる? スバル?」
「……ロイ……!聞こえる!」
管制室中に涙ぐんだスバルの声が響く。張りつめた空気がこみあげる熱気に吹き飛ばされた。
「ようし! 再開だ!」
「カウントは?」
「止めていません。大丈夫です!」
ソーイチはロイに目をやる。お互い一瞬すれ違ったが、何事もなかったかのように、正面モニターを見据えた。
スズカの顔がみるみるうちに青ざめていく。イーハンはさっきから何度も大量の手順書を繰っていた。
管制室全体がそれぞれに原因を突き止めようと動いている。見知った顔も数多い。ということは、三年前の事故の経験者である。よからぬ可能性が脳裏をよぎっているだろう。
席に座ったロイを横目で確認すると、ソーイチはひらりと机に飛び乗り、煙草を探るスズカの右手をしっぽではたいた。
「スズカ。吸い過ぎだ。またテッドに怒られるぞ」
手をはたかれ、こちらをキッとにらみつける。が、机の上にいる存在に、スズカはぽかんと口を開けた。
「ちょっと! 誰!? ここに猫を入れたのは!」
「おいおい。ずいぶんなあいさつじゃねぇか。三年ぶりのご対面だってぇのによ」
三年ぶりという言葉に、スズカの顔色がさっと変わる。スズカは何度か口を開くも、言葉が出ない。ようやく、喉の奥底から声をしぼりだした。
「そんな……バカな……!」
「ま、無理もねぇや。だけど現実だぜ。なんなら、お前が吸ってるの煙草の銘柄、全部言ってやろうか?」
十ある銘柄を一つ一つ挙げていく。周りにいた管制官もスズカの異変に気づき始めた。
「おう。イーハン。いつもありがとうよ。ミラがお前の事を弟みたいに心配してるぜ」
「なんでアンタが……!」
「そう怒るなよ。オレだって気づいたらこうなってたんだからよ」
全くそりが合わなかったイーハンは、汚らわしいものでも見るかのように、にらむ。
スズカの机にある、うずたかく積み上げられた書類の上に飛び乗ると、固唾を呑んで見守る管制官を見渡した。
「よう、みんな久しぶり。……声色は一緒だから気づいてくれたか?」
はっきりと姿を見、声を聞き、ざわつく。証拠を示すようにソーイチは言った。
「ジミー、緊張したら右肩回す癖、まだあるんだな。アスカ、息子は元気か? グレイグ、言っとくがあれは濡れ衣だ。オレもだまされたんだからよ」
グレイグが顔をゆがめる。片目にロイを映しながら、ソーイチは話を続けた。
「エントランスに写真、飾ってくれてるんだな。……正直、うれしかったよ」
イーハンがぴくりと眉を動かす。ソーイチは照れくさそうにひげを上げた。
「意外か? まぁ、三年もたてば人は変わるさ」
言いながらイーハンの後ろにいる気配を探る。耳をぷるんと振るわせると、声を張り上げた。
「みんなどうした? もう一度調べ直そうぜ。三年かけて準備してきたんだ。絶対、原因は見つかるって」
ソーイチが目配せをする。ロイは心得たように通信回路のスイッチを押した。
「スバル? 聞こえる? スバル?」
「……ロイ……!聞こえる!」
管制室中に涙ぐんだスバルの声が響く。張りつめた空気がこみあげる熱気に吹き飛ばされた。
「ようし! 再開だ!」
「カウントは?」
「止めていません。大丈夫です!」
ソーイチはロイに目をやる。お互い一瞬すれ違ったが、何事もなかったかのように、正面モニターを見据えた。