「休暇、ですか?」

 スズカの机の前で、ロイは声が上ずった。

「そう。この先打ち上げまで、あなたにまともな休暇は、恐らくあげられないわ。だから、今のうちに羽を伸ばしていらっしゃい」

 打ち上げが迫った今、三日間の休暇を与えるというのである。

「で、でも、まだ準備が」
「今、とりあえず一区切りしているのでしょう。イーハンから聞いてる」

 今こそリラックスが必要だ、といったイーハンの顔が浮かんだ。余計なことを……、と思わなくもないが、仲間として気にかけてくれていることはわかる。なんだかこそばゆく、行き所のない手はつい、襟元に伸びていた。

「悪いけど、休暇が終わったら、ほぼカン詰状態よ。覚悟してね」
「わかりました。では、お言葉に甘えて、いただきます」

 軽く礼をすると、ロイはスズカの執務室を後にした。

 紅茶を飲もうと、階段を降り、管制棟と訓練棟をつなぐ渡り廊下付近まで来る。すると、向こうから私服のヴィクターが手を振りながらやってきた。

「どうした、その格好」
「オレ、今日から休暇なんだ。打ち上げ前にリラックスしてこいって」
「そうか。オレも明日からなんだ」

 イシリアンテに戻って、彼女に会って……、と細かく決めたスケジュールを楽しそうに話してくれる。ふと、あることが思い浮かんだ。

「ヴィクター、プラネタリウムに行かないか? 閉まる前に」
「お! いいねぇ! きちんとお別れしてやろう」

 お互いの空き時間を合わせ、じゃ、と足取りも軽く、ヴィクターは外の階段を駆け下りていった。

 ふと、誰かの視線を感じ、ロイはその方に目をやる。だが、そこには誰もいなかった。

「誰だ……?」

 真剣さだけを注がれたロイは、小首をかしげながら、スタンドで紅茶を買い求めた。