暗闇からようやくきらびやかな街にたどり着く。
 帰りは幾分短いが、それでも五時間近く座り続けるのはつらかった。
 部下に起こされ、ぐっと伸びをする。専用機はもうすぐ、イシリアンテ王国宇宙開発局本部裏にある滑走路に滑り込もうとしていた。

「いざとなればいちいち往復十時間。陸路を使う場合はさらに時間がかかる。ロスだ」

 年の割には白くなった髪をなでつけ、イアンは部下からカップを受け取った。

「まさかテッドが、あんなに噛みついてくるとは思ってもいませんでした」

 イアンの向かいに座った部下は、細い目をさらに細くし、苦笑いを浮かべながら、紅茶を一口含む。

「マサル、だから困るのだ。軍の一部でありながら、開発局、特にアグノゥサ支部は独自の権限を持っている。軍の予算を使い、それで得られた成果を軍備の開発に還元する、それが本来の開発局の在り方だ。それを……」
「局長、冷めますよ」

 言い尽くした苦言を飲み込むために、イアンはカップに口をつけた。