☆本日の作業用BGM一発目は、サブタイトルにちなんで『接吻』(オリジナル ラヴ)です。
今や独りでもオリジナル ラヴ……。
「独りでもハ○ンド・ド○グ」という方もいらっしゃいます。田島さんにも頑張っていただきたいと思うのであります。
☆もう一本、やはりサブタイトル絡み『炎のさだめ』(TETSU)。
『装甲騎兵ボ○ムズ』です。
ニコ動面白いっす。歌ってらっしゃるのが織○哲郎さんと知ったのはかなり後です。
ーーーーーー
週末金曜、開店準備に(だらだら)精を出しておりますと、
「お疲れちゃーん! 神幸ちゃんヤッテル?」
珍しくハゲ(兄様)が顔を出しました。
「……」
「ノリが悪いな。そこは『やってるやってる!』だろ」
「何の用です」
「おお、ちょっとお遣いに行って欲しいのである」
崩れ落ちるようにドッカと椅子に落下すると、作務衣の懐から千円札を二枚抜き取りました。
眼前でピラピラ揺らしてみせます。
「…………」
「要らないの? 要らないんなら脇汗拭いちゃうけど」
「待って待って、行きます、行きますよ。東M○Xの真似はよしてください」
「病院行って——薬局まで。薬貰ってきてほしいのである」
「ご自身で行かれては?」
「面倒臭いんだもん。よろしこ」
私は暫し兄様の顔と英世・野口のご尊顔をチラチラ見比べ。
男らしく「ピッ」とお札を抜き取ると、
「では、お客さんがいらしたら……」
「任せてくりょう!」
私はダッフルコートを掴むと、不本意ながらニヤつく男を残し、寒風吹きすさぶ街へと繰り出したのでございます。
☆☆☆
——平和だ。暇すぎるな。
仕様もない、神幸のタブレットで遊ぼ♥
……と思っていたら、表でカランて鳴ったぞ?
来たか。さすがに回避できなかった。
よし来た、気合入れてお相手仕るぜ。
あん? お客さんかと思ったら……晋三じゃねーか。
なんだ。尻から溜息みたいな屁が出ちまったよ。
あいつ、そんなツイてない高校生活を送ってるんかな。
可哀想に。足も引き摺ってるし……。
☆☆☆
晋三は椅子に腰掛けコインを投入すると、あっという間にボタンを押した。常連の所作だ。……哀れなヤツ。
『ワ○ズマンの後継者』か。釣れた釣れた! 古いアニメを知っているじゃないか。
ちょっと血が滾るな。いや「むせる」が正解か(笑)。
では、郷○さんの声で渋くいってみようじゃないの皆の衆(?)。
【こんにちは!】
おお、よしよし。ちゃんと機能してるな。
「ワ・レ・ワ・レ・ワ」って一度聞いてみたいもんだ。
「ツイてない御苑へようこそ。……足を怪我していらっしゃる?」
【いやだからこれはスキップで……あ、あれ? みゅ――(危ない)いつもの方ではないです?】
「ちょっと出張で(病院まで)。私は臨時のお助けPSなのです」
【プ○イステーション?】
「パー○ェクトソ○ジャーです」
【はぁ……噂のド○ンジョ様ではないですよね?】
「(ドロ○ジョ?)えーと……ン・ジョでしたら、タンザニアでイカ○ガーと一緒に支店を切り盛りしております」
【イ○ンガーと?! それは凄いですネ!】
よっく考えろ晋三。ちっせい寺にそんなツテがあるわけないだろ。
愉しそうな顔しやがって。ピュアかっ!
ふむ――。モニタだとちょっと見辛いな。前面はマジックミラーに改修するか?
【あのう……もしもし?】
「はいはい。なんぞツイてないコトがございましたか?」
☆☆☆
晋三は暫しキョロついた後、
【あ、あの、僕、彼女が出来まして】
「それはそれはおめでとうございます」
【ど、ども。……この間、ちょっといい雰囲気になりまして(※あくまで晋三の見解)】
「ほほう。付き合いたてですか?」
【10日くらいです……で、勢いで、せ、接吻を――】
「ワカチコワカチコ!」
【あ?! 知ってます! ゆ○てぃですね!】
「残念。少○隊です」
ゆ○てぃね。さすがにワコー●チカコ(元競走馬・GⅡ京都記念勝ちなど。名牝!)という返しは無いよな。
【……間合いを違えたというか、心が波打っていたというか……】
「フェード・イン出来ませんでしたか?」
【彼女の八重歯に激突してしまいまして……彼女は口を押えて悶絶、僕は唇を切って流血という事態に……暫く口を利いてくれませんでした】
「左様で。それはツイておりませんでしたな」
マズイ。何故かテンションが上がる。
この「匿名感」は新鮮だな。面白い。
躊躇もなく語るし。
【次は負けるわけにまいりません(?)。どうしたらよいものかと……】
両腕を突っ張って、じっと己が拳を見詰める晋三。
そんなに思い詰めたような顔をするな。
――弄りたくなるだろうが。
「……参考になるものかどうか」
【はいっ! なんなりとっ!】
「○○○というサイトで、『カテゴリ』内の『接吻』をチョイスして、FAQ内『トラブルシューティング』をご覧いただくとよろしいかもしれません」
【へえーFAQですか。どの辺を】
「そうですね……『接吻がうまく繋がらない』『何度「せっぷん」と入力しても漢字変換されない』『接吻メールを受信できない』『接吻をアップデートすると動きが重くなってしまう』……と、こんな感じですかね」
真面目にメモるんだな。感心感心。
だが、それじゃダメなんだよ晋三。そんなトラブルシューティング載ってねーし。
【あのう……ホントにこれで繋がりますか?】
目的を見失っているぞ晋三。
何を繋げようとしているんだお前。
ポカンとするな。
「『冗談はなしだ、俺は○ソまじめな男だ』(by キ○コ・キュービィー)」
【? そ、そうですか……】
「接吻の仕方」が問題なワケじゃないんだよ。
「貴方、己が欲望の赴くまま、お相手の心持ちも斟酌せず、接吻に臨んだのですね」
【う……そ、そりゃ、まあ……そうだったかもですが……】
ひたすらモジる晋三。
ほどほどにしとけ、千切れちゃうぜ? 世紀末が来るぜ?(byシブ○き隊)
……若い――つーか、青いねえ。良き哉良き哉。
「大丈夫。お相手の女性を、心底大切に大切に思うようになれば…………この先、接吻やらで流血沙汰になる事も無いでしょう」
【…………】
「自然に、優しく、接することが出来るようになりますよ、きっと。もう二度と歯なんて当たりません」
【……そうでしょうか……】
「そうですそうです、♪そ○が~一番大事~」
【……】
「これからこれから。これからよろしくね?」
【えと……はい、よろしくお願い申し上げます?】
今一つ釈然としない顔をする晋三に、俺は言ってやったのだ。
「ゴッド・ブレス・ユー――」
☆☆☆
「ただいま戻りました」
おー暖かい。纏わりつく暖気がひっじょーに心地良いです。
幸せ。
留守番のお人は、ぼーっと夕刊をつらつら眺めておりました。
「お疲れ。随分遅かったな」
「夕餉も済ませましたので」
「なに? 一人だけずるいじゃん」
「『メシ食ってきていいぞ?』の野口さんだと解釈いたしましたので」
「ぐぬ……」
恨めし気にジト目を寄越します。
「お客さん、いらっしゃいましたか?」
ハゲはぴしゃん! とてっぺんをひと叩きして、
「お客さんは無ぇけど、晋三が来たぜ」
「…………へえ」
「アイツ、彼女出来たんだってな。晋三のくせしてよぅ」
「ああ……初めて、というワケではないそうですが」
「ほーん。あの晋三がねえ……」
兄様は両手を頭にまわすと、仰け反って中空に視線をぼんやり向けました。
私は黙って薬の入った袋をその腹に投げ捨て、じっと兄様の顔を窺います。
ハゲは暫し視線を彷徨わせておりましたが、
「俺も歳をとるわけだ……」
しみじみと呟き、微かに笑みを浮かべたのでした。
☆☆☆
閉店の支度を終え事務所内へ戻ると――
いつの間にか兄様は椅子の上で結跏趺坐になり、瞑想に耽っていました。
いえ、ひょっとすると爆睡中かもしれぬ……。
私はマッキー(黒)を掴み後ろから忍び寄ると、兄様の頭頂部に「高血圧」と草書体で優しく認めました。
細い方で。そのくらいの慎みはあります。
——どうですかお母さま、こんな感じで。
今や独りでもオリジナル ラヴ……。
「独りでもハ○ンド・ド○グ」という方もいらっしゃいます。田島さんにも頑張っていただきたいと思うのであります。
☆もう一本、やはりサブタイトル絡み『炎のさだめ』(TETSU)。
『装甲騎兵ボ○ムズ』です。
ニコ動面白いっす。歌ってらっしゃるのが織○哲郎さんと知ったのはかなり後です。
ーーーーーー
週末金曜、開店準備に(だらだら)精を出しておりますと、
「お疲れちゃーん! 神幸ちゃんヤッテル?」
珍しくハゲ(兄様)が顔を出しました。
「……」
「ノリが悪いな。そこは『やってるやってる!』だろ」
「何の用です」
「おお、ちょっとお遣いに行って欲しいのである」
崩れ落ちるようにドッカと椅子に落下すると、作務衣の懐から千円札を二枚抜き取りました。
眼前でピラピラ揺らしてみせます。
「…………」
「要らないの? 要らないんなら脇汗拭いちゃうけど」
「待って待って、行きます、行きますよ。東M○Xの真似はよしてください」
「病院行って——薬局まで。薬貰ってきてほしいのである」
「ご自身で行かれては?」
「面倒臭いんだもん。よろしこ」
私は暫し兄様の顔と英世・野口のご尊顔をチラチラ見比べ。
男らしく「ピッ」とお札を抜き取ると、
「では、お客さんがいらしたら……」
「任せてくりょう!」
私はダッフルコートを掴むと、不本意ながらニヤつく男を残し、寒風吹きすさぶ街へと繰り出したのでございます。
☆☆☆
——平和だ。暇すぎるな。
仕様もない、神幸のタブレットで遊ぼ♥
……と思っていたら、表でカランて鳴ったぞ?
来たか。さすがに回避できなかった。
よし来た、気合入れてお相手仕るぜ。
あん? お客さんかと思ったら……晋三じゃねーか。
なんだ。尻から溜息みたいな屁が出ちまったよ。
あいつ、そんなツイてない高校生活を送ってるんかな。
可哀想に。足も引き摺ってるし……。
☆☆☆
晋三は椅子に腰掛けコインを投入すると、あっという間にボタンを押した。常連の所作だ。……哀れなヤツ。
『ワ○ズマンの後継者』か。釣れた釣れた! 古いアニメを知っているじゃないか。
ちょっと血が滾るな。いや「むせる」が正解か(笑)。
では、郷○さんの声で渋くいってみようじゃないの皆の衆(?)。
【こんにちは!】
おお、よしよし。ちゃんと機能してるな。
「ワ・レ・ワ・レ・ワ」って一度聞いてみたいもんだ。
「ツイてない御苑へようこそ。……足を怪我していらっしゃる?」
【いやだからこれはスキップで……あ、あれ? みゅ――(危ない)いつもの方ではないです?】
「ちょっと出張で(病院まで)。私は臨時のお助けPSなのです」
【プ○イステーション?】
「パー○ェクトソ○ジャーです」
【はぁ……噂のド○ンジョ様ではないですよね?】
「(ドロ○ジョ?)えーと……ン・ジョでしたら、タンザニアでイカ○ガーと一緒に支店を切り盛りしております」
【イ○ンガーと?! それは凄いですネ!】
よっく考えろ晋三。ちっせい寺にそんなツテがあるわけないだろ。
愉しそうな顔しやがって。ピュアかっ!
ふむ――。モニタだとちょっと見辛いな。前面はマジックミラーに改修するか?
【あのう……もしもし?】
「はいはい。なんぞツイてないコトがございましたか?」
☆☆☆
晋三は暫しキョロついた後、
【あ、あの、僕、彼女が出来まして】
「それはそれはおめでとうございます」
【ど、ども。……この間、ちょっといい雰囲気になりまして(※あくまで晋三の見解)】
「ほほう。付き合いたてですか?」
【10日くらいです……で、勢いで、せ、接吻を――】
「ワカチコワカチコ!」
【あ?! 知ってます! ゆ○てぃですね!】
「残念。少○隊です」
ゆ○てぃね。さすがにワコー●チカコ(元競走馬・GⅡ京都記念勝ちなど。名牝!)という返しは無いよな。
【……間合いを違えたというか、心が波打っていたというか……】
「フェード・イン出来ませんでしたか?」
【彼女の八重歯に激突してしまいまして……彼女は口を押えて悶絶、僕は唇を切って流血という事態に……暫く口を利いてくれませんでした】
「左様で。それはツイておりませんでしたな」
マズイ。何故かテンションが上がる。
この「匿名感」は新鮮だな。面白い。
躊躇もなく語るし。
【次は負けるわけにまいりません(?)。どうしたらよいものかと……】
両腕を突っ張って、じっと己が拳を見詰める晋三。
そんなに思い詰めたような顔をするな。
――弄りたくなるだろうが。
「……参考になるものかどうか」
【はいっ! なんなりとっ!】
「○○○というサイトで、『カテゴリ』内の『接吻』をチョイスして、FAQ内『トラブルシューティング』をご覧いただくとよろしいかもしれません」
【へえーFAQですか。どの辺を】
「そうですね……『接吻がうまく繋がらない』『何度「せっぷん」と入力しても漢字変換されない』『接吻メールを受信できない』『接吻をアップデートすると動きが重くなってしまう』……と、こんな感じですかね」
真面目にメモるんだな。感心感心。
だが、それじゃダメなんだよ晋三。そんなトラブルシューティング載ってねーし。
【あのう……ホントにこれで繋がりますか?】
目的を見失っているぞ晋三。
何を繋げようとしているんだお前。
ポカンとするな。
「『冗談はなしだ、俺は○ソまじめな男だ』(by キ○コ・キュービィー)」
【? そ、そうですか……】
「接吻の仕方」が問題なワケじゃないんだよ。
「貴方、己が欲望の赴くまま、お相手の心持ちも斟酌せず、接吻に臨んだのですね」
【う……そ、そりゃ、まあ……そうだったかもですが……】
ひたすらモジる晋三。
ほどほどにしとけ、千切れちゃうぜ? 世紀末が来るぜ?(byシブ○き隊)
……若い――つーか、青いねえ。良き哉良き哉。
「大丈夫。お相手の女性を、心底大切に大切に思うようになれば…………この先、接吻やらで流血沙汰になる事も無いでしょう」
【…………】
「自然に、優しく、接することが出来るようになりますよ、きっと。もう二度と歯なんて当たりません」
【……そうでしょうか……】
「そうですそうです、♪そ○が~一番大事~」
【……】
「これからこれから。これからよろしくね?」
【えと……はい、よろしくお願い申し上げます?】
今一つ釈然としない顔をする晋三に、俺は言ってやったのだ。
「ゴッド・ブレス・ユー――」
☆☆☆
「ただいま戻りました」
おー暖かい。纏わりつく暖気がひっじょーに心地良いです。
幸せ。
留守番のお人は、ぼーっと夕刊をつらつら眺めておりました。
「お疲れ。随分遅かったな」
「夕餉も済ませましたので」
「なに? 一人だけずるいじゃん」
「『メシ食ってきていいぞ?』の野口さんだと解釈いたしましたので」
「ぐぬ……」
恨めし気にジト目を寄越します。
「お客さん、いらっしゃいましたか?」
ハゲはぴしゃん! とてっぺんをひと叩きして、
「お客さんは無ぇけど、晋三が来たぜ」
「…………へえ」
「アイツ、彼女出来たんだってな。晋三のくせしてよぅ」
「ああ……初めて、というワケではないそうですが」
「ほーん。あの晋三がねえ……」
兄様は両手を頭にまわすと、仰け反って中空に視線をぼんやり向けました。
私は黙って薬の入った袋をその腹に投げ捨て、じっと兄様の顔を窺います。
ハゲは暫し視線を彷徨わせておりましたが、
「俺も歳をとるわけだ……」
しみじみと呟き、微かに笑みを浮かべたのでした。
☆☆☆
閉店の支度を終え事務所内へ戻ると――
いつの間にか兄様は椅子の上で結跏趺坐になり、瞑想に耽っていました。
いえ、ひょっとすると爆睡中かもしれぬ……。
私はマッキー(黒)を掴み後ろから忍び寄ると、兄様の頭頂部に「高血圧」と草書体で優しく認めました。
細い方で。そのくらいの慎みはあります。
——どうですかお母さま、こんな感じで。