☆本日の作業用BGMは『蝋人形の館』(聖飢魔Ⅱ)でスタートでした。
後半は、『さあどうしよう』(バービーボーイズ)。
ーーーーーー
土曜もお昼を過ぎ――これから爽太くんと湯島天神へ向かいます。
お友達のお姉さんが大学受験だそうで、道真公へお願いに参りたいと。
爽太くんがお優しいのは承知の助ですが、わざわざ「他所の女」のためにお詣りするなんて……。
「家庭教師に来てくれた人なんです。お世話になりましたから」
……私は洗面台で自分の青白い顔を鏡に映しつつ、しみじみ呟いた爽太くんを思い出し、バスタオルをギリと噛んでみたのでございます。
☆☆☆
昼食前の軽い昼食を食み。
道場での稽古を経て昼食を済ませ。
急いで着替えるものの――。
いつもと勝手が違う所為か気も急いて存外手間取り、慌てて外へ飛び出しました。
既に爽太くんがお待ちでした。
「お待たせして申し訳ございません」
「いえ、それほど――」
言い差した爽太くんがこちらへ顔を向けると、蝋人形のように硬直しました。
——あれ? やっちまったか?
聖○魔ⅡのBGMはまずかったでしょうか?
ひとしきり、二人の睨み合い(?)が続き――。
「……僕の目に狂いはありませんでした。神幸さん、完璧です。圧勝です。五馬身は千切ってます」
なぜか爽太くんの目に涙が滲みます。なして?
「……よ、よかったです。こんな格好、記憶の限り生まれて初めてなもので……」
「良くお似合いです。お美しいです……もう参拝はやめて、夕方まで眺めていたい心持ちです」
「ええー……」
褒めていただいた? のです?
衒いもなく、恥ずかしい言葉がつらつら流れるように出て来るのですね。
——あ、死ねと? 恥ずか死ねと?
ああ、何やら膝が揺れ出し……。
「ピローン、ピローン」
突然、爽太くんがスマホを向け、チョメチョメを始めます。
「あべしっ?! いけません、逝ってしまいますっ! およしになって殿! 平にっ!」
「ならぬ! 待ち受け決定じゃ!」
両手を翳してわたわた逃げ惑う私を、妙に冷たいお顔で爽太くんが追い回します。
パスコースを切りまくるハセベ~キャプテンの如く、行く手を悉く遮る少年。
狭いエリアでキャッキャ戯れていると、
「何やってんだ?」
通りがかりのハゲがひと声掛け、
「早くどっか去ねバカップル――じゃねえ、『ましかップル』が!」
苦々し気に吐き捨てると、二人寺を追い出されたのでございます。
☆☆☆
昼過ぎでもさして高くない陽が目を射る中、かっぱ橋道具街まで手を繋いで歩きます。
歩幅を合わせようとしますが、膝がフワフワして言う事を聞きません。
湯島付近までは循環バスです。
先程からちらちら窺う爽太くんは……何と言ったらよいでしょう。
珍しく外気に晒された膝頭のあたりに、熱視線(て歌がございましたね)が穿たれております。
これっ○りだなんて決○て言わせない――玉○さんがシャウトしてましたが……この装いも今日限り、とはいかないでしょか。
今日は、サンシ○イン60からダイヴする心持ちで、爽太くんに忖度したつもりなのですよ、お母さま。
★★★
「少しはお洒落に気を遣ってくれろ、お姉さま」
綾女に付き添われ、昨年暮れ上野のA●ABでひと揃え購入してみました。
半日がかりのうえ最後は時間切れ引き分けの様相でした。
☆☆☆
結局、黒で統一っす。
黒のミニワンピ(ぐはっ)に黒のジャケット、マフラー、黒光りするレザーブーツに黒タイツ。ちなみにパンツは、「お婆ちゃんの原宿」こと巣鴨で購入したおば○んパンツ。それでもお股スースーです。
お母さまの黒っぽいベレーを拝借し、
「デコ出すと『通』感が出るよ」
という綾女のひと言で、珍しく前髪を入れ込んでおでこを出しております。滅多にシャバへ披露することのない額は、ウェットな光沢を撒き散らしているものと思われます。
爽太くんは白無地のタートルネックカットソーッ!(必殺技名?)にベージュのコーチジャケットを羽織り、黒のスキニーパンツに某ブランドのキャンバスシューズという出で立ち。
「決まってます。ちょっと大人っぽいですね」
「ありがとうございます。でも今日の神幸さんに及ぶものではありません」
暖房が効き過ぎたバスの車中――で、もそもそイチャつくのは、想像以上に胸中もお股も熱くなる幸せなひと時でございました。
☆☆☆
天神へ着くと早々にお詣りを済ませ、ぼーっと露店を冷やかして回ります。
「お箸」を並べた珍しいお店で足を止め、前屈みに眺めていると、
「ぇえらっしゃい神幸ちゃん! お? そーたも一緒か」
「…………綾女ちゃんは呼び捨てですよね」
何故か、綾女がジャージ姿で店番をしていました。
ジト目で軽く睨むと、
「神幸ちゃんこそ呼び捨てでいいじゃん」
「私は…………そ、爽太さん……」
「し○かちゃんかよ。『の○太さん』じゃねーし」
芥をみるような目は勘弁しください。
「ここで何を?」
「パイセンの店なの。ちょっと留守番してるダケ」
綾女は爽太くんに向き直り、
「今日の神幸ちゃん決まってるっしょ!」
「はい! 圧勝です、七馬身は千切ってます!」
「でしょ? あたしのコーデだぜい!」
「それは……お手数をお掛けし誠に恐縮です。この御恩は一生忘るるものではありません。忝うござります」
爽太くんはメッチャ深々と腰を折り、丁寧に綾女へ頭を下げました。
件の先輩が戻って来てお役御免となった綾女は、
「デートの邪魔して悪ぃけど……なんか甘~いもんでも食べ行かね?」
「すまないねぇ」という顔をして、綾女がお腹をさすりながらのたまいました。
☆☆☆
汁粉を所望する綾女の案内で、神田須田町の甘味処へ。
裏通りを進むと、ビルの谷間に重厚な木造建築がどしっと構えているのが見えます。
綾女によれば、都の歴史的建造物に選定されているのだとか。
店へ入り、小上がりへ。
お茶を啜っていると、
「神幸ちゃん、スカウトとかナンパされなかったん?」
「僕が目を光らせておりました。無問題です!」
爽太くんがドヤ顔。
妙に方々へ鋭い視線を飛ばしてるなあと思ってましたが……。
三人仲良く「ぜんざい」をハフハフ頂いておりますと、
「あんが違う! 舌触りが滑らかだろ?」
恐らくドヤ顔でのたまうおじさんの声が背後から飛んで来ました。
へえ……まるで分かりませんけど。「舌ましか」の私には。
「美味しかったあ。お腹一杯です。ちょっと眠くなってきました……」
トロンとした顔の爽太くんと目が合います。
「子供だなあ、そーた」
脇から綾女がゲップと共に突っ込みます。
ふと爽太くんの――眼鏡の奥で何かを欲するような眼を見詰めているうち――
「横になりますか? 10分程の仮眠でもスッキリするそうですよ?」
稽古もありましたし、そりゃお疲れですよね。
無意識に正座の腿をポンポン叩くと、
「膝枕か?! っかー! 条例だいじょぶかよ!」
綾女が小さく叫びました。
「では遠慮なく!」
爽太くんはカッと目を見開くと、風のように太腿へと頭を滑らせました。
お顔が私のお臍へ向いております。
「そーた大胆だなあ」
知らぬ間に眼鏡がテーブルに置いてあります。
こちらへ向いて目を瞑る爽太くんの耳も横顔も、ほんのり白桃のような塩梅です。
彼の吐息が下腹部を襲い、何気にうっすら暖かい……。
膝枕は初体験ですが、お腹が暖まって良い心持ちです。
あ、奇天烈な音は単なる(お腹の)チューニング音です、お気になさらず。
「神幸ちゃん……」
「なんでしょう?」
「普通はさ、向きが逆だよ?」
呆れたような綾女のひと言を脳内でトロトロ咀嚼しつつ――軽い寝息をたてる彼の横顔を眺めながら、言葉を発する事ができませんでした……。
ーーーーーー
☆蛇足ながら、本日登場の甘味処は、某仮面の特撮とアニメにおける「聖地」として知られているそうです。自分が食んだのは「あんみつ」でした。
後半は、『さあどうしよう』(バービーボーイズ)。
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土曜もお昼を過ぎ――これから爽太くんと湯島天神へ向かいます。
お友達のお姉さんが大学受験だそうで、道真公へお願いに参りたいと。
爽太くんがお優しいのは承知の助ですが、わざわざ「他所の女」のためにお詣りするなんて……。
「家庭教師に来てくれた人なんです。お世話になりましたから」
……私は洗面台で自分の青白い顔を鏡に映しつつ、しみじみ呟いた爽太くんを思い出し、バスタオルをギリと噛んでみたのでございます。
☆☆☆
昼食前の軽い昼食を食み。
道場での稽古を経て昼食を済ませ。
急いで着替えるものの――。
いつもと勝手が違う所為か気も急いて存外手間取り、慌てて外へ飛び出しました。
既に爽太くんがお待ちでした。
「お待たせして申し訳ございません」
「いえ、それほど――」
言い差した爽太くんがこちらへ顔を向けると、蝋人形のように硬直しました。
——あれ? やっちまったか?
聖○魔ⅡのBGMはまずかったでしょうか?
ひとしきり、二人の睨み合い(?)が続き――。
「……僕の目に狂いはありませんでした。神幸さん、完璧です。圧勝です。五馬身は千切ってます」
なぜか爽太くんの目に涙が滲みます。なして?
「……よ、よかったです。こんな格好、記憶の限り生まれて初めてなもので……」
「良くお似合いです。お美しいです……もう参拝はやめて、夕方まで眺めていたい心持ちです」
「ええー……」
褒めていただいた? のです?
衒いもなく、恥ずかしい言葉がつらつら流れるように出て来るのですね。
——あ、死ねと? 恥ずか死ねと?
ああ、何やら膝が揺れ出し……。
「ピローン、ピローン」
突然、爽太くんがスマホを向け、チョメチョメを始めます。
「あべしっ?! いけません、逝ってしまいますっ! およしになって殿! 平にっ!」
「ならぬ! 待ち受け決定じゃ!」
両手を翳してわたわた逃げ惑う私を、妙に冷たいお顔で爽太くんが追い回します。
パスコースを切りまくるハセベ~キャプテンの如く、行く手を悉く遮る少年。
狭いエリアでキャッキャ戯れていると、
「何やってんだ?」
通りがかりのハゲがひと声掛け、
「早くどっか去ねバカップル――じゃねえ、『ましかップル』が!」
苦々し気に吐き捨てると、二人寺を追い出されたのでございます。
☆☆☆
昼過ぎでもさして高くない陽が目を射る中、かっぱ橋道具街まで手を繋いで歩きます。
歩幅を合わせようとしますが、膝がフワフワして言う事を聞きません。
湯島付近までは循環バスです。
先程からちらちら窺う爽太くんは……何と言ったらよいでしょう。
珍しく外気に晒された膝頭のあたりに、熱視線(て歌がございましたね)が穿たれております。
これっ○りだなんて決○て言わせない――玉○さんがシャウトしてましたが……この装いも今日限り、とはいかないでしょか。
今日は、サンシ○イン60からダイヴする心持ちで、爽太くんに忖度したつもりなのですよ、お母さま。
★★★
「少しはお洒落に気を遣ってくれろ、お姉さま」
綾女に付き添われ、昨年暮れ上野のA●ABでひと揃え購入してみました。
半日がかりのうえ最後は時間切れ引き分けの様相でした。
☆☆☆
結局、黒で統一っす。
黒のミニワンピ(ぐはっ)に黒のジャケット、マフラー、黒光りするレザーブーツに黒タイツ。ちなみにパンツは、「お婆ちゃんの原宿」こと巣鴨で購入したおば○んパンツ。それでもお股スースーです。
お母さまの黒っぽいベレーを拝借し、
「デコ出すと『通』感が出るよ」
という綾女のひと言で、珍しく前髪を入れ込んでおでこを出しております。滅多にシャバへ披露することのない額は、ウェットな光沢を撒き散らしているものと思われます。
爽太くんは白無地のタートルネックカットソーッ!(必殺技名?)にベージュのコーチジャケットを羽織り、黒のスキニーパンツに某ブランドのキャンバスシューズという出で立ち。
「決まってます。ちょっと大人っぽいですね」
「ありがとうございます。でも今日の神幸さんに及ぶものではありません」
暖房が効き過ぎたバスの車中――で、もそもそイチャつくのは、想像以上に胸中もお股も熱くなる幸せなひと時でございました。
☆☆☆
天神へ着くと早々にお詣りを済ませ、ぼーっと露店を冷やかして回ります。
「お箸」を並べた珍しいお店で足を止め、前屈みに眺めていると、
「ぇえらっしゃい神幸ちゃん! お? そーたも一緒か」
「…………綾女ちゃんは呼び捨てですよね」
何故か、綾女がジャージ姿で店番をしていました。
ジト目で軽く睨むと、
「神幸ちゃんこそ呼び捨てでいいじゃん」
「私は…………そ、爽太さん……」
「し○かちゃんかよ。『の○太さん』じゃねーし」
芥をみるような目は勘弁しください。
「ここで何を?」
「パイセンの店なの。ちょっと留守番してるダケ」
綾女は爽太くんに向き直り、
「今日の神幸ちゃん決まってるっしょ!」
「はい! 圧勝です、七馬身は千切ってます!」
「でしょ? あたしのコーデだぜい!」
「それは……お手数をお掛けし誠に恐縮です。この御恩は一生忘るるものではありません。忝うござります」
爽太くんはメッチャ深々と腰を折り、丁寧に綾女へ頭を下げました。
件の先輩が戻って来てお役御免となった綾女は、
「デートの邪魔して悪ぃけど……なんか甘~いもんでも食べ行かね?」
「すまないねぇ」という顔をして、綾女がお腹をさすりながらのたまいました。
☆☆☆
汁粉を所望する綾女の案内で、神田須田町の甘味処へ。
裏通りを進むと、ビルの谷間に重厚な木造建築がどしっと構えているのが見えます。
綾女によれば、都の歴史的建造物に選定されているのだとか。
店へ入り、小上がりへ。
お茶を啜っていると、
「神幸ちゃん、スカウトとかナンパされなかったん?」
「僕が目を光らせておりました。無問題です!」
爽太くんがドヤ顔。
妙に方々へ鋭い視線を飛ばしてるなあと思ってましたが……。
三人仲良く「ぜんざい」をハフハフ頂いておりますと、
「あんが違う! 舌触りが滑らかだろ?」
恐らくドヤ顔でのたまうおじさんの声が背後から飛んで来ました。
へえ……まるで分かりませんけど。「舌ましか」の私には。
「美味しかったあ。お腹一杯です。ちょっと眠くなってきました……」
トロンとした顔の爽太くんと目が合います。
「子供だなあ、そーた」
脇から綾女がゲップと共に突っ込みます。
ふと爽太くんの――眼鏡の奥で何かを欲するような眼を見詰めているうち――
「横になりますか? 10分程の仮眠でもスッキリするそうですよ?」
稽古もありましたし、そりゃお疲れですよね。
無意識に正座の腿をポンポン叩くと、
「膝枕か?! っかー! 条例だいじょぶかよ!」
綾女が小さく叫びました。
「では遠慮なく!」
爽太くんはカッと目を見開くと、風のように太腿へと頭を滑らせました。
お顔が私のお臍へ向いております。
「そーた大胆だなあ」
知らぬ間に眼鏡がテーブルに置いてあります。
こちらへ向いて目を瞑る爽太くんの耳も横顔も、ほんのり白桃のような塩梅です。
彼の吐息が下腹部を襲い、何気にうっすら暖かい……。
膝枕は初体験ですが、お腹が暖まって良い心持ちです。
あ、奇天烈な音は単なる(お腹の)チューニング音です、お気になさらず。
「神幸ちゃん……」
「なんでしょう?」
「普通はさ、向きが逆だよ?」
呆れたような綾女のひと言を脳内でトロトロ咀嚼しつつ――軽い寝息をたてる彼の横顔を眺めながら、言葉を発する事ができませんでした……。
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☆蛇足ながら、本日登場の甘味処は、某仮面の特撮とアニメにおける「聖地」として知られているそうです。自分が食んだのは「あんみつ」でした。