☆本話の作業用BGMは、『五星戦隊ダイレンジャー』でした。
(なんとなく既視感……)
まんま戦隊ヒーローもの(アクションと決めポーズが秀逸!)、OP主題歌です。
作曲が大野克夫氏(太陽にほえろ!など)。ちよと変わった曲だなと思いました。
歌っている方がまた凄い。
その名も「NEW JACK拓郎」さん。もはやナニ人なのか……。
(→日本人らしいです。東京都出身とのこと)
〆は『俺たち無敵さ!! ダイレンジャー』。
気力! 転身!
ーーーーー
★★
そろそろ夏本番を迎えようかという七月。
無意識に、暑い暑いと口癖のように繰り返しておりましたら、
「そんなに暑けりゃ、お前も剃髪してやろうか!」
などとパワハラ(?)をかます、聖●魔IIお喋り●ソ野郎がウチにおります。
嘗て坂道大好きタ●リさんが、友達の友達はみな友達だと、毎日口癖のようにTV番組で繰り返していたそうですが。
兄様の言は、そんな心持ちから発せられたのかもしれません(※慈愛気味の解釈)。
世界に広げよう、友達の輪――素晴らしい志とは存じますが、そこまで行くと、最早友達とも言えないのでは……?
神社詣でが大好物、そんな唯一無二の友人に引っ張られるうちに、寺の娘もいずれは「神道」に目覚める日が訪れるのでしょうか。
☆
学校帰り、その無二のチョメチョメ(※ある種、乙女の恥じらい)に導かれ、め●りん(台東区の循環バス)に揺られております。
例年、浅草寺では9日・10日に「ほおずき市」なるものが催され、赤一色の屋台に彩られた境内が一層賑わうそうですが、今年は中止と相成り(※当時はコロナ渦)。
じゃなんで、かの寺に向かっているの? なワケですが。
この日は「四万六千日」という功徳日だそうで。
参拝すると、四万六千日分の功徳が得られるんですと。美冬ちゃんが鼻息荒く説明してくださいまして。昨年一昨年と、きっちりお参りしたそうです。神社の催しではないのですが。
何年分のご利益? と疑問には思ったものの、右手に酷だと自重して、数えるのはやめたワケであります。
平日の午後、夏服の美少女二人、普通の賑わいを見せる境内を彷徨きます。
最近お昼どきは、伊予神(華菜)さんと三人、机をくっつけてキャッキャウフフ状態になることも多く。
それは吝かではないのですが、今まで私だけの十字架だった美冬ちゃんが一段遠くに感じられて、少しおセンチな気分で涙が滲むこともしばしば。
その三白眼(もはや四白眼かも)……大学へ上がる気など毛ほども持ち合わせていない柔道娘は、引退を先延ばしにして、最後の夏に精魂を傾けております。
ので今日は私が、鳥越の至宝をお守りせねばなりません。むふー。
あちこちの屋台から抑え気味なソースの香りが漂う中、あっさりと参拝を終えました。
安堵したように恥ずかしい部分がぐぅと鳴ります。ちょ、黙ってー。
取り敢えず、何年分か知りませんが、まんまと天に功徳を積みました。
――この時、私は純粋にそう信じていたのだと思います。
湯気が立ち上る(嘘)アスファルトを越えて、右手の浅草神社へ。
お社と二天門の背後に連なるビル群が、強い陽を浴びて白くぼやけて見えます。
鳥居を潜り、二人扇子を揺らしながら参道を歩みます。
浅草寺に比して、実に気持ちの良い長閑さ。
この静けさには清涼感すら漂います。
ほう、と息が漏れました。
少し離れたスペースに、ナニやら蠢く一対の影。
猿回し? でしょうか。初めて見掛けました。日光から?
精悍な顔をした法被姿の青年と、紐に繋がれた無表情の猿が一匹、黙々とプラクティスを重ねているようです。何故か、伊予神さんのお顔が脳裡に浮かびます。
バク宙を繰り返す青年――じゃなくて赤い顔をした方が、ちらとこちらを窺いました。美少女が珍しいのでしょうか。
「お気をつけください姫。モンキーマジックが狙っております」
「マチャアキだったら是非とも配下に。一緒に觔斗雲へ乗ってみましょう、鬼太郎」
ご機嫌な美冬ちゃん、舌も滑らか。
鬼太郎呼ばわりされても、私は無上の喜びを感じて震えおります。
いつも通り、奇抜な装いの観光客と頻繁にすれ違います。
大概、中・韓の方々です。
面はそう変わらないのに、どこか異質な雰囲気を纏う皆さん。
宝蔵門前へ戻ると、派手な色合いのそんな皆さんが、常香炉へ集っておりました。
私たちも隙間へ身を入れ、穢れを払うべく煙を浴びようとします――が。
気の所為か灰色の煙は、頑なに美冬ちゃんの身をとぅるんと避けていくように見えるのです。
問う言葉が見当たらず、ポカンとご尊顔を眺めてしまいました。
せかせか仰ぐ美冬ちゃんが顔を上げ、こちらの視線に気付くと、唇を波打たせて可愛いらしくはにかみます。えへって。もぉーこんちくしょー。
心の内で(ご馳走様です)と謝意を述べたタイミングで、美冬ちゃんの頭上から、空気がひしゃげる小さな音が聞こえました。
途端、弱い耳鳴りがしたのでございます。
☆
「いつも、寄る場所があるのです」
姫の先導でやって来たのは、本堂東南にある、ぐるりを囲まれた大木の前。
嘗て天然記念物に指定されていた、「いちょう」の御神木なのだとか。
かの源頼朝公が浅草寺参拝の折、挿した枝から発芽したそうで。
伝承どおりなら、樹齢は800年を越えることに?
大きな日陰に身を隠し、仰け反って彼方を見上げてみます。
緑濃い天辺までに至る所々、痛々しい傷痕。
「戦災で半ば消失したものの、どうにか生き延びたのだそうです」
手を併せ終わった美冬ちゃんがポツリ。
眼鏡奥の静謐な眼差しに――睫毛なげえな――とドッキンコしつつ。
本命の彼(?)はこちらだったのかな……下世話なアレを胸の内で囁いてしまいました。
ぐるりを歩むと、反対側に日傘を傾けた女性が一人、佇んでらっしゃいました。
髪を結い上げた、薄紫の訪問着姿。
女性が首を傾げて目を見開きます。
「あらー神幸ちゃん、ぐー☆ぜん!」
「……お母さん……?」
ぽやっと立ち竦む美冬ちゃんに、
「あ……美冬ちゃん、は、母です……」
唐突な紹介にすかさず慇懃な挨拶を述べると、深く身を折る姫。
その様子をじっと眺めていた母が、
「まあ……神幸ちゃんの……お、オトモダチ……?」
母は――片手でそっと口を覆うと、感極まった風にホロホロ涙を流した……のであります。
私と美冬ちゃんが顔を見合わせて気まずい笑みを浮かべておりますと。
突然腕を手繰られ、何故か母上とガッツリハグ。
啜り泣く音が耳元に直で届くと、不意に私の涙腺も決壊してしまったのでございます。
勘弁して……。
☆
所謂、スーパー功徳日なもんで――。
「お参り来るの当たり前でしょ? はい論破!」(?)
と宣い、母上はこの場でパパっと化粧を直しました。
何故か忙しなく日傘を閉じたり開いたり。落ち着きがありません。
臆面もなく、どこぞの花の子のように「ルンルン♪」と口にして憚らない妙齢の女性は、跳ねるようなステップを踏みつつ、二人強引に仲見世を引き摺って行きます。
孟スピードで人混みを縫うと、裏の甘味処へ放り込まれました。
「粟ぜんざい食べよ!」(※命令)
無言のうちメニューも押し切られ……申し訳なさと恥ずかしさとで、おずおず横目で窺うと。
美冬ちゃんはうっすら紅潮したお顔で、妙に嬉しげに見えました。
思いがけず、まったりとした空気に面食らった私は、改めて居心地の悪さを痛感したのでございます。
目の前では――頬杖をついて細い目を一杯に見開き、キラッキラと自発的に発光する母が……無言でこちらを観察しております。
☆
冷房の効いた店内で食む暖かい粟ぜんざいは、胃にしっとりと優しく馴染む逸品――だと思うのですが。
肝心のお味に意識が向く余裕のない私を差し置いて、二人はまるで親子のように、自然にほっこり語り合ってるワケで……。
――この日ばかりは、母の顔が幾分ふっくらして見えたのを、よく覚えています。
真夏前、なんということのない一日……。
(なんとなく既視感……)
まんま戦隊ヒーローもの(アクションと決めポーズが秀逸!)、OP主題歌です。
作曲が大野克夫氏(太陽にほえろ!など)。ちよと変わった曲だなと思いました。
歌っている方がまた凄い。
その名も「NEW JACK拓郎」さん。もはやナニ人なのか……。
(→日本人らしいです。東京都出身とのこと)
〆は『俺たち無敵さ!! ダイレンジャー』。
気力! 転身!
ーーーーー
★★
そろそろ夏本番を迎えようかという七月。
無意識に、暑い暑いと口癖のように繰り返しておりましたら、
「そんなに暑けりゃ、お前も剃髪してやろうか!」
などとパワハラ(?)をかます、聖●魔IIお喋り●ソ野郎がウチにおります。
嘗て坂道大好きタ●リさんが、友達の友達はみな友達だと、毎日口癖のようにTV番組で繰り返していたそうですが。
兄様の言は、そんな心持ちから発せられたのかもしれません(※慈愛気味の解釈)。
世界に広げよう、友達の輪――素晴らしい志とは存じますが、そこまで行くと、最早友達とも言えないのでは……?
神社詣でが大好物、そんな唯一無二の友人に引っ張られるうちに、寺の娘もいずれは「神道」に目覚める日が訪れるのでしょうか。
☆
学校帰り、その無二のチョメチョメ(※ある種、乙女の恥じらい)に導かれ、め●りん(台東区の循環バス)に揺られております。
例年、浅草寺では9日・10日に「ほおずき市」なるものが催され、赤一色の屋台に彩られた境内が一層賑わうそうですが、今年は中止と相成り(※当時はコロナ渦)。
じゃなんで、かの寺に向かっているの? なワケですが。
この日は「四万六千日」という功徳日だそうで。
参拝すると、四万六千日分の功徳が得られるんですと。美冬ちゃんが鼻息荒く説明してくださいまして。昨年一昨年と、きっちりお参りしたそうです。神社の催しではないのですが。
何年分のご利益? と疑問には思ったものの、右手に酷だと自重して、数えるのはやめたワケであります。
平日の午後、夏服の美少女二人、普通の賑わいを見せる境内を彷徨きます。
最近お昼どきは、伊予神(華菜)さんと三人、机をくっつけてキャッキャウフフ状態になることも多く。
それは吝かではないのですが、今まで私だけの十字架だった美冬ちゃんが一段遠くに感じられて、少しおセンチな気分で涙が滲むこともしばしば。
その三白眼(もはや四白眼かも)……大学へ上がる気など毛ほども持ち合わせていない柔道娘は、引退を先延ばしにして、最後の夏に精魂を傾けております。
ので今日は私が、鳥越の至宝をお守りせねばなりません。むふー。
あちこちの屋台から抑え気味なソースの香りが漂う中、あっさりと参拝を終えました。
安堵したように恥ずかしい部分がぐぅと鳴ります。ちょ、黙ってー。
取り敢えず、何年分か知りませんが、まんまと天に功徳を積みました。
――この時、私は純粋にそう信じていたのだと思います。
湯気が立ち上る(嘘)アスファルトを越えて、右手の浅草神社へ。
お社と二天門の背後に連なるビル群が、強い陽を浴びて白くぼやけて見えます。
鳥居を潜り、二人扇子を揺らしながら参道を歩みます。
浅草寺に比して、実に気持ちの良い長閑さ。
この静けさには清涼感すら漂います。
ほう、と息が漏れました。
少し離れたスペースに、ナニやら蠢く一対の影。
猿回し? でしょうか。初めて見掛けました。日光から?
精悍な顔をした法被姿の青年と、紐に繋がれた無表情の猿が一匹、黙々とプラクティスを重ねているようです。何故か、伊予神さんのお顔が脳裡に浮かびます。
バク宙を繰り返す青年――じゃなくて赤い顔をした方が、ちらとこちらを窺いました。美少女が珍しいのでしょうか。
「お気をつけください姫。モンキーマジックが狙っております」
「マチャアキだったら是非とも配下に。一緒に觔斗雲へ乗ってみましょう、鬼太郎」
ご機嫌な美冬ちゃん、舌も滑らか。
鬼太郎呼ばわりされても、私は無上の喜びを感じて震えおります。
いつも通り、奇抜な装いの観光客と頻繁にすれ違います。
大概、中・韓の方々です。
面はそう変わらないのに、どこか異質な雰囲気を纏う皆さん。
宝蔵門前へ戻ると、派手な色合いのそんな皆さんが、常香炉へ集っておりました。
私たちも隙間へ身を入れ、穢れを払うべく煙を浴びようとします――が。
気の所為か灰色の煙は、頑なに美冬ちゃんの身をとぅるんと避けていくように見えるのです。
問う言葉が見当たらず、ポカンとご尊顔を眺めてしまいました。
せかせか仰ぐ美冬ちゃんが顔を上げ、こちらの視線に気付くと、唇を波打たせて可愛いらしくはにかみます。えへって。もぉーこんちくしょー。
心の内で(ご馳走様です)と謝意を述べたタイミングで、美冬ちゃんの頭上から、空気がひしゃげる小さな音が聞こえました。
途端、弱い耳鳴りがしたのでございます。
☆
「いつも、寄る場所があるのです」
姫の先導でやって来たのは、本堂東南にある、ぐるりを囲まれた大木の前。
嘗て天然記念物に指定されていた、「いちょう」の御神木なのだとか。
かの源頼朝公が浅草寺参拝の折、挿した枝から発芽したそうで。
伝承どおりなら、樹齢は800年を越えることに?
大きな日陰に身を隠し、仰け反って彼方を見上げてみます。
緑濃い天辺までに至る所々、痛々しい傷痕。
「戦災で半ば消失したものの、どうにか生き延びたのだそうです」
手を併せ終わった美冬ちゃんがポツリ。
眼鏡奥の静謐な眼差しに――睫毛なげえな――とドッキンコしつつ。
本命の彼(?)はこちらだったのかな……下世話なアレを胸の内で囁いてしまいました。
ぐるりを歩むと、反対側に日傘を傾けた女性が一人、佇んでらっしゃいました。
髪を結い上げた、薄紫の訪問着姿。
女性が首を傾げて目を見開きます。
「あらー神幸ちゃん、ぐー☆ぜん!」
「……お母さん……?」
ぽやっと立ち竦む美冬ちゃんに、
「あ……美冬ちゃん、は、母です……」
唐突な紹介にすかさず慇懃な挨拶を述べると、深く身を折る姫。
その様子をじっと眺めていた母が、
「まあ……神幸ちゃんの……お、オトモダチ……?」
母は――片手でそっと口を覆うと、感極まった風にホロホロ涙を流した……のであります。
私と美冬ちゃんが顔を見合わせて気まずい笑みを浮かべておりますと。
突然腕を手繰られ、何故か母上とガッツリハグ。
啜り泣く音が耳元に直で届くと、不意に私の涙腺も決壊してしまったのでございます。
勘弁して……。
☆
所謂、スーパー功徳日なもんで――。
「お参り来るの当たり前でしょ? はい論破!」(?)
と宣い、母上はこの場でパパっと化粧を直しました。
何故か忙しなく日傘を閉じたり開いたり。落ち着きがありません。
臆面もなく、どこぞの花の子のように「ルンルン♪」と口にして憚らない妙齢の女性は、跳ねるようなステップを踏みつつ、二人強引に仲見世を引き摺って行きます。
孟スピードで人混みを縫うと、裏の甘味処へ放り込まれました。
「粟ぜんざい食べよ!」(※命令)
無言のうちメニューも押し切られ……申し訳なさと恥ずかしさとで、おずおず横目で窺うと。
美冬ちゃんはうっすら紅潮したお顔で、妙に嬉しげに見えました。
思いがけず、まったりとした空気に面食らった私は、改めて居心地の悪さを痛感したのでございます。
目の前では――頬杖をついて細い目を一杯に見開き、キラッキラと自発的に発光する母が……無言でこちらを観察しております。
☆
冷房の効いた店内で食む暖かい粟ぜんざいは、胃にしっとりと優しく馴染む逸品――だと思うのですが。
肝心のお味に意識が向く余裕のない私を差し置いて、二人はまるで親子のように、自然にほっこり語り合ってるワケで……。
――この日ばかりは、母の顔が幾分ふっくらして見えたのを、よく覚えています。
真夏前、なんということのない一日……。


