天文部の活動は、週に二回。火曜と木曜の夕方で、屋上で天体観測をしたり、星座にまつわる本を読んだりしている。部員数が多い年は、部費も多くなるのでプラネタリウムへ勉強に行く事もあった。

 観測は暗くなってからの為、冬場がメインとなる。校舎から十九時には退出しなければならないため、いつまでも空が明るい夏場はなかなか屋上観測をする事ができなかった。

 今日は通常の活動曜日ではなかったけれど、部室に二年と一年のみが集まり、引退する三年生への贈り物を何にするか話し合う事になっている。

 舞衣ちゃんが進行役をしてくれて、相談が始まった。
 しかし同じ二年の芝野さんと佐藤くんは、先ほどから早く帰りたいというような空気を出しており、相談の会話に全く参加していない。舞衣ちゃんが声を掛けても、「別に何でもいい」と答えるだけだった。

 私達の高校は生徒全員部活参加制の決まりになっているため帰宅部がない。だから各文化部には『なんとなく楽そうだったから』という理由でとりあえず入部してきた『とり部員』と呼ばれる人達が存在する。天文部にも勿論、各学年に二人ずつ、このとり部員がいた。

「ねぇ、もうちょっとちゃんと考えてよ!」

 舞衣ちゃんの声が苛立つ。

「うちら別に、そこまで思い入れないし……」

 横を向いて小さく呟いた芝野さんの声に、ついに舞衣ちゃんが椅子から立ち上がる。

「何よ、その言い方!」
「なんでもいいって言ってるのに、無理やり案を出せって言うからでしょ!」

 次第に舞衣ちゃんと芝野さんが口論になっていく。
 こういう瞬間、私は重い空気に飲まれてしまい、うまく声を出せなくなってしまう。
 自分も意見を言ったり、場が和むような事を言ったり。そういう事ができるようになりたいのに、結局なにもできずにいる自分に自己嫌悪ばかり繰り返していた。