時計の音、シャーペンの音が今日はやけに部屋に
響く。


「何もきかないのね」


ピタリと動かす手を止めた。


顔をあげて隣をみれば、「ひかるちゃん」と小さくて消え入りそうな声で私の名前を呼ぶ。


「きいて、ほしいんですか。田吹先生」



暁くんと別れて、大人しく家に戻ってきた私を安心したような表情でむかえた田吹先生。

何事もなかったかのように、いつものように、勉強が始まったけれど、この異様な空気に耐えられなくなったのは田吹先生が先だった。



「郁実くんと、同じ学校なのね」


「...はい」


「2人は恋人なの?」



その言葉に首を横に振ると、「そう」と返事をする。安心したんだろうか、先程彼女がもらした『尚文くんに似てきたね』という言葉がひっかかる。