あの日と同じ灼熱の赤い太陽。快晴の空。

 あれから――。


「はぁ、本当に一夜限りだったんだね」
「伝説は伝説に……か」
「あの時代に生まれて、リアルタイムで見たかったなー」
「俺最初Mashiroの歌やばいと思ってたんだけどよくよく聞いたらやっぱいいと思ってきたんだよね」
「腹や喉で歌ってるんじゃないんだよ、心で歌ってるんだよ」
「なんかMashiroって今あんまり耳がよく聞こえないらしいよ」
「マジで?!」
「それであの歌はやっぱやばすぎ」
「ホント、いい意味でやばすぎな」


 西山さんの狙い通り今の若い世代のファンがまた爆発的に増えた。
 リアルタイムに活動していた時期を知らない世代の人達がCDを買ってくれている。

 声や意思は受け継がれる。
 例えもう発信することはないメッセージだとしても……


 それは世代を越えていく。




 パチパチパチと鳴る拍手が今日は少し力強い。


「ましろさん、最高です」
「美鈴ちゃん、ありがとう」



「あれ? Mashiroじゃない? ブラモンの」

「まさか」

「そうだって……え、隣見て! Sora! ギター持ってる!」



「ふふっ、早速バレちゃいましたね」



 空さんの方を見ると、空さんは困ったね、って眉を下げて小さく笑う。


 いつもするこの表情にたまらなく胸がときめく。

「でも、続けますよ?」


 そう言うと、空さんは力強く頷いた。それはまるで私の背中を押ししてくれるように。


 それに安心して私は探りながら音を出す。




「え、マジでそうじゃん」

「やばい」

「もしもし? MashiroとSoraがいる。路上で。すぐ来て! いや嘘じゃないって」



 どんなに小さくても、届いてほしいメッセージを私はこれからも届けると誓った。



 二人で、一緒に。




 [了]