チケットの応募が殺到した。それは想像に容易かった。


 あの伝説のバンドが!
 一夜限りの!
 無料ライブ!


 私達のこの日の報せはどこをどう取っても興味を引くもので、不満の声も少なくなかった。

 もっと大きい箱でやってほしい。
 無料だとたいして好きじゃない人も応募するからお金を取ってほしい。
 昔からのファンを優先してほしい。
 一夜限りではなく復活してほしい。



 不満は期待の表れ。


 その声に少しでも応えるようにライブを生でネット配信することも決定した。



 想像通りの不満に、この六人の凄さを改めて思い知らされることになった。


 ……だけど、ステージの幕が開き、翌日のスポーツ紙を飾る言葉がセンセーショナルなものであること、それはここにいる誰もが想像がつかなかった。

 いや、想像がつかないというよりは、気付かなかった、この方が正しいかな。




VOICE


忘れはしないよ例えこの喉が潰れて俺の声が出なくなったとしても
君と歌ったこのメロディを俺が忘れるわけないだろ


掬われた足と救われた心
どうしても伝えなきゃいけないことはいつだってそんな大事なこととは限らない


見上げた空に星が瞬けば
いつか君が言った声を思い出す。


俺が歌を歌い続ける限り
何回だって君に伝えるよ
拍子抜けするくらい大したことない話を。



忘れてもいいよなもう俺の声は限界を迎えてる、そんな気がするんだ。
君と歌ったこのメロディをたとえ俺が
忘れたとしても


傷ついた心に気付いた想い
どうしても伝えなきゃいけないことはいつだって腹抱えて笑える話とは限らない


見上げた空に星が瞬けば
いつか君が言った声を思い出す


俺が歌を歌い続ける限り
何回だって君に伝えるよ
眠たくなるくらいくだらない話を