そして夏の足音が近付く六月上旬、ついにデビュー日を迎えた。


 私達三人は本当にCDショップにCDが並ぶのか半信半疑なのと、CDを手に取る人の反応が見たくて店頭に赴いた。


「ちょっと陸、もっと離れて」
「あ、ごめん前がよく見えなくて」
「そんなサングラス掛けてくるからだよ」

 下を向きながらコソコソと歩いていた私達に龍が声を出した。

「そんなんしてたら余計目立つねん、堂々としとったら案外バレへんもんや」

 その少し高くて大きな声が……目立つ。



「あれ?」
「え? ブラモン?」
「Ryuじゃない?」
「え、嘘でしょ、Rikuもいる」
「Mashiroもいる!」


「バレた、走るよ」

 陸と龍の腕を取り勢いよく走った。

「はぁはぁ……」
「お前声でけーよ」
「え? 俺?」


 結局お店には辿り着けなかった。


「あ、見て」

 見上げると大型ビジョンに映し出される私達の映像。

「俺ら、デビューしたんだな……」

 そこに映っているのは確実に私達なんだけど、どこか私達じゃないようで、道端で歌ってたのが遠い昔のように感じる。

 まだそんなに昔じゃないのに。





「勝とうな」

「うん」