その言葉が二人の長い、長い時間を一瞬で埋めた。
 それは本当はあの日、再会した日から、いや、もっと前、離れた時から既にこうやってお互いがお互いを求めていたようで。


 もう離れたくない、もう離したくない。そんな想いがぶつかり、不器用にも交わる。私達二人の間に言葉はいらない。

 そう、確信した。



 空さんの声が例え出なくなっても、私の耳が例え聞こえなくなったとしても、私達は何度も何度でもお互いが重力のように引き合う。


 赤と黒は一つになるんだ。


 そして一つに重なった赤と黒はもう二度と分離することなく混ざり合うんだ。

 それを求めていたのは、再会したあの日……いや、違う。

 別れたあの日……それも、違う。

 出会ったあの日から……違う。

 きっと、生まれた時からそれか生まれる前から……

 宿命のように赤と黒になり、運命のように導かれた。

 二人を離すことなんて最初から誰にもできないんだ。

 大きな部屋に響き渡る小さなリップ音。

 漏れる吐息、小さな部屋の小さなベッドで落ちないように離れないようにしがみついた、そんな昔の記憶が鮮明に蘇ってきた。

 きっとこの匂いのせいだ、久しぶりの空さんのこの匂い。

 極限まで近付かないと感じることができないこの匂いが鮮明にあの時の記憶を呼び起こす。

「(もう二度と離れないから)」

 この先何が起きても、誰に何を言われても、絶対に離してはいけない手に気付いた。


 私は空さんと離れて、もう二度と見られない光をもう一度見ようと足掻くことなく暮らしていた。

 空さんも感じていた。

 後悔と孤独を肌で感じた時、私達は離れてはいけないことを痛感した。

 不思議ですね、こんなに真逆なのになんでこんなに惹かれ合うんでしょう。

 やっぱりそれは真逆だからでしょうか? それ以外納得出来る説明が見当たらないです。

 もしも私達が赤と赤だったら、もしも私達が黒と黒だったら、すんなりと物語はハッピーエンドになったのでしょうか。

 いえ、それは違うかもしれないですね。

 赤と黒だから私達はこんなに惹かれ合ったんでしょうから。