「駆けつけるって……これじゃまるで私が主役みたいじゃない」
そんな不満を零すと
「ましろが主役なんだよ」
そう返ってきた。
六人が集まっているところを写真に撮られるわけにはいかない。
六人集合の画はライブの当日に見せたかった。
だから私達は三人に分かれて練習を始めた。
「なぁ、ちょっといい?」
突然龍にそう言われた。
「うん、なに?」
「今夜七時。ここ行って」
「な、なに?」
そこにはホテルの名前と部屋番号。
さっと不審がり身構えた私に
「……んなわけあるかー!」
想像通りのツッコミが返ってきた。
「あはは、冗談、何これ」
「俺ちゃうわ……空さん」
「……え?」
「待ってるから、見られへんように行き」
「え、なんで」
「会いたいねんて、ましろに」
「会いたい」ストレートなその言葉。
私もずっと思っていて、だけどずっと閉じ込めていた言葉。
「……うん」
小さくそう返し、その紙を畳んでカバンにしまった。
二人きりで会うのなんてどのくらいぶりだろう。全国ツアーの時既にもう会えてなかったし、それが叶うことももう考えてなかった。
練習が終わりタクシーでホテルに向かう前、自分のホテルに一度戻った。
シャワーを浴びて、練習用の動きやすい服ではなくて、少しオシャレな服を着た。
鏡に向かい、紅を引く自分と目が合った。
突然カーッと恥ずかしくなりティッシュでキュッと紅を落とす。
けど、また紅を引く……何やってるんだろう。
手放した恋なのに色気づいて、少しでも綺麗に見られたいと思ってる自分に呆れる。
だけど、やっぱり騒ぎ続けるこの胸、振り払っても脳裏に浮かぶあの笑顔、どうしようもなく空さんで頭がいっぱいになってることを思い知らされる。
珍しく髪の毛を上げた。耳の高さで纏めた。新しい自分で会いに行くような、そんな気分で。
タクシーに乗り、約束の時間の少し前、周りを警戒しながらホテルに着くと部屋に向かって歩き出した。
私達がまた一緒にライブをする、その報道からまた私達を追う人が増えた。
エレベーターのボタンを押す手が震える。下を向き誰にも見られないよう部屋まで向かう。
言われた部屋の前、左右を確認してふぅっと一つ息を吐いた。押したボタン、中の人を呼び出すその音は想像以上に大きく感じた。
中から鍵が外れる音がして、ドアがゆっくりと開いた。
「空さん……」
みんなで集まったあの日、二人で話すことはなかった。
一夜限りの再結成には同意してくれたけど、本当は私の事は怒ってるんじゃないかとも思っていた。
空さんと目が合うと空さんは優しく笑って私の手を引いた。
バタン、と私の背後、扉が閉まる音がした。
手を引いた空さんは離れることなく私越しの扉に手をついた。
こんな近い距離で空さんの顔を見るのは久しぶり。
これは友達の距離じゃない。知り合いの距離じゃない。
これはあの時、一瞬だけいられた恋人の距離。
「ましろ……」
声が……聞こえる。
空さんの声が。
「空さん……」
胸がいっぱいになって溢れてくる涙。
踏ん張って立っているのがもう限界にきている。
呼吸が乱れる。
「(この距離なら……聞こえる? 俺の声)」
掠れた声。
だけど一生懸命発してくれる。
うん、うんと言葉にならず頷く。
泣き崩れそうになる私を崩れないようにそっと抱きしめた。
耳元にダイレクトに聞こえる息遣い。
「(会いたかった)」
もう、声を出して泣いた。
そんな不満を零すと
「ましろが主役なんだよ」
そう返ってきた。
六人が集まっているところを写真に撮られるわけにはいかない。
六人集合の画はライブの当日に見せたかった。
だから私達は三人に分かれて練習を始めた。
「なぁ、ちょっといい?」
突然龍にそう言われた。
「うん、なに?」
「今夜七時。ここ行って」
「な、なに?」
そこにはホテルの名前と部屋番号。
さっと不審がり身構えた私に
「……んなわけあるかー!」
想像通りのツッコミが返ってきた。
「あはは、冗談、何これ」
「俺ちゃうわ……空さん」
「……え?」
「待ってるから、見られへんように行き」
「え、なんで」
「会いたいねんて、ましろに」
「会いたい」ストレートなその言葉。
私もずっと思っていて、だけどずっと閉じ込めていた言葉。
「……うん」
小さくそう返し、その紙を畳んでカバンにしまった。
二人きりで会うのなんてどのくらいぶりだろう。全国ツアーの時既にもう会えてなかったし、それが叶うことももう考えてなかった。
練習が終わりタクシーでホテルに向かう前、自分のホテルに一度戻った。
シャワーを浴びて、練習用の動きやすい服ではなくて、少しオシャレな服を着た。
鏡に向かい、紅を引く自分と目が合った。
突然カーッと恥ずかしくなりティッシュでキュッと紅を落とす。
けど、また紅を引く……何やってるんだろう。
手放した恋なのに色気づいて、少しでも綺麗に見られたいと思ってる自分に呆れる。
だけど、やっぱり騒ぎ続けるこの胸、振り払っても脳裏に浮かぶあの笑顔、どうしようもなく空さんで頭がいっぱいになってることを思い知らされる。
珍しく髪の毛を上げた。耳の高さで纏めた。新しい自分で会いに行くような、そんな気分で。
タクシーに乗り、約束の時間の少し前、周りを警戒しながらホテルに着くと部屋に向かって歩き出した。
私達がまた一緒にライブをする、その報道からまた私達を追う人が増えた。
エレベーターのボタンを押す手が震える。下を向き誰にも見られないよう部屋まで向かう。
言われた部屋の前、左右を確認してふぅっと一つ息を吐いた。押したボタン、中の人を呼び出すその音は想像以上に大きく感じた。
中から鍵が外れる音がして、ドアがゆっくりと開いた。
「空さん……」
みんなで集まったあの日、二人で話すことはなかった。
一夜限りの再結成には同意してくれたけど、本当は私の事は怒ってるんじゃないかとも思っていた。
空さんと目が合うと空さんは優しく笑って私の手を引いた。
バタン、と私の背後、扉が閉まる音がした。
手を引いた空さんは離れることなく私越しの扉に手をついた。
こんな近い距離で空さんの顔を見るのは久しぶり。
これは友達の距離じゃない。知り合いの距離じゃない。
これはあの時、一瞬だけいられた恋人の距離。
「ましろ……」
声が……聞こえる。
空さんの声が。
「空さん……」
胸がいっぱいになって溢れてくる涙。
踏ん張って立っているのがもう限界にきている。
呼吸が乱れる。
「(この距離なら……聞こえる? 俺の声)」
掠れた声。
だけど一生懸命発してくれる。
うん、うんと言葉にならず頷く。
泣き崩れそうになる私を崩れないようにそっと抱きしめた。
耳元にダイレクトに聞こえる息遣い。
「(会いたかった)」
もう、声を出して泣いた。