顔を上げるとぼんやりと見慣れた姿。二人並ぶといつも目立つ。
かっこよくてオーラすごくて嫌でも視線を奪われる、それはこの二人の天性のものだと思う思う。
「ましろ……」
二人から同時に出たその口の動きで私の名前を呼んでることに気付いた。それを脳内に保存しているあの声で再生させる。
私は跪き震える体を必死に抑えながら頭を下げた。
「陸、龍……ごめんなさい本当に……ごめんなさい」
「はっ何してんねん」
「顔上げて」
「ごめんなさい、勝手に出ていって……ごめんなさい」
「ましろさん、お二人は怒ってなんかなかったんですよ、迎えに来てくれたんですよ。帰りましょう。東京に」
「怒ってるわけないやん、心配しただけやで、もう帰ろう、空さんも楓雅さんも幸翔さんも待ってんで」
「もっと耳元で」
「あっ、そうやな、ましろ、空さん待ってんで」
空さん……
その名前を聞いただけで胸が焦げてしまうほど熱くて痛くて苦しい。
「空さんは……歌ってる?」
その質問に龍は陸の顔を見た。
追うように私も陸の顔を見たら陸は視線を下に落とした。
それが答えだと絶望した。
あまりテレビを見ないようになった美鈴ちゃんは何も話さない。あえて何も話さずいつも通りを装ってくれている。
相馬さんのメッセージを全うするかのように歌ってはいたけれど、このまま歌を歌うことに一体なんの意味があるんだろう、そう思う日が続いた。
「ましろ、歌、楽しい?」
唐突な龍のその言葉、返すことは出来なかった。昔ならそれは愚問とばかりに答えていただろうに。
「なぁ、ましろ。一度、みんなで会わない?」
戸惑う私。
「美鈴ちゃんも一緒に」
「ましろさん! 行きましょうよ」
美鈴ちゃんはいつだって怖気ずく私の背中をゆっくりと押してくれる。
その瞬間あの時と同じ冷たい風がまたぴゅうと吹いた。
一緒に歌うと決めた日、デビューに向かって頑張ろうって誓い合った日。
今日の風も同じ。
決断の風。
「……うん」
「よっしゃぁぁぁぁぁ」
「でけーよ声」
ふっと顔が綻ぶと嬉しそうに龍も同じ表情をした。
「……笑った」
こんなに風は冷たくて震えるほど寒いのに、心の中、充満するように広がるこの思い。こんな感覚久しぶり。
「……今度は泣いた」
「なんで泣きながら笑ってるんだよ」
「ふふ……ごめ……」
かっこよくてオーラすごくて嫌でも視線を奪われる、それはこの二人の天性のものだと思う思う。
「ましろ……」
二人から同時に出たその口の動きで私の名前を呼んでることに気付いた。それを脳内に保存しているあの声で再生させる。
私は跪き震える体を必死に抑えながら頭を下げた。
「陸、龍……ごめんなさい本当に……ごめんなさい」
「はっ何してんねん」
「顔上げて」
「ごめんなさい、勝手に出ていって……ごめんなさい」
「ましろさん、お二人は怒ってなんかなかったんですよ、迎えに来てくれたんですよ。帰りましょう。東京に」
「怒ってるわけないやん、心配しただけやで、もう帰ろう、空さんも楓雅さんも幸翔さんも待ってんで」
「もっと耳元で」
「あっ、そうやな、ましろ、空さん待ってんで」
空さん……
その名前を聞いただけで胸が焦げてしまうほど熱くて痛くて苦しい。
「空さんは……歌ってる?」
その質問に龍は陸の顔を見た。
追うように私も陸の顔を見たら陸は視線を下に落とした。
それが答えだと絶望した。
あまりテレビを見ないようになった美鈴ちゃんは何も話さない。あえて何も話さずいつも通りを装ってくれている。
相馬さんのメッセージを全うするかのように歌ってはいたけれど、このまま歌を歌うことに一体なんの意味があるんだろう、そう思う日が続いた。
「ましろ、歌、楽しい?」
唐突な龍のその言葉、返すことは出来なかった。昔ならそれは愚問とばかりに答えていただろうに。
「なぁ、ましろ。一度、みんなで会わない?」
戸惑う私。
「美鈴ちゃんも一緒に」
「ましろさん! 行きましょうよ」
美鈴ちゃんはいつだって怖気ずく私の背中をゆっくりと押してくれる。
その瞬間あの時と同じ冷たい風がまたぴゅうと吹いた。
一緒に歌うと決めた日、デビューに向かって頑張ろうって誓い合った日。
今日の風も同じ。
決断の風。
「……うん」
「よっしゃぁぁぁぁぁ」
「でけーよ声」
ふっと顔が綻ぶと嬉しそうに龍も同じ表情をした。
「……笑った」
こんなに風は冷たくて震えるほど寒いのに、心の中、充満するように広がるこの思い。こんな感覚久しぶり。
「……今度は泣いた」
「なんで泣きながら笑ってるんだよ」
「ふふ……ごめ……」