浴びるスポットライトをただ見つめてた。

 そうでもしてないと踏ん張っていられなかったから。

 五万五千人の視線は時として凶器となったから私はいつも少し視線をずらしてスポットライトを見つめていた。

 イヤモニをいつしか外さなくなっていった。

 五万五千人の声は時として凶器となったから私はいつもイヤモニを外すことはなく中から流れてくるメロディーを聴き続けた。


 空さん、赤と黒は真逆だけど対になっている。

 不完全な赤と黒は巡り会うことで完全になる。

 最近そんな風に思います。

 これは私の勝手な願望なんでしょうか。


 ひっそりと歌っていた田舎町、ギャラリーは農業が終わり軽トラックを軽快に飛ばして来てくれるおじいさんとおばあさん。

「これ、食べなさい」

 掌に乗せられたみかん。

「こりゃ懐かしいわ、昔を思い出すな、ばぁさん」
「そうね、こんな古い歌、よく知ってるわね」

 時代を彩ってきた歌にリスペクトがあった。
 生まれる前の歌も沢山歌っていた。

 ジャンルも拘らず歌った。

 それが一人でも多くの人の心に届くこと願って。