俺達はついにましろの消息をつかんだ。


***


「ましろちゃん見つかったって?」
「はい、ちょっと俺達会いに行ってきますね」
「僕達も会いたいけど……あんまり人多くない方がいいよね」


 そう言って楓雅さんは悲しげに少し肩を落とした。

 楓雅さんに会うのは久しぶりだ。俺が芸能界を去ってからは会ってない。

 もちろんテレビで見ない日はないけど、龍とはたまに会うしいつかまたみんなで会いたいねって話をしていた。

 けど、俺達はましろを抜きにまた会おうとは本当は思ってなくて、ましろがいないことが、そんな日々が例え日常になっていったとしてもそれでもまだ信じていたんだ。

 またいつかみんなで会える日を。

「あの後やっぱりアメリカに行ったっぽいんですよね、目撃がたまに出てて、ファンの子の間でもちょっと話題になってて」
「それやのに声掛けた人の話とかないし、写真撮った人もおらん。ほんまにおるんかな?」
「分からない。噂によると路上で歌ってたらしい。その声がましろに似てるって話。けど、違う気もするらしい。似てるんだけど、別人のような……」


「そっか、ましろちゃんだったらいいな」

 龍と一緒に会いに行こうと思って。もしかしたら帰れなくて困ってるかもしれないだろ、ひとりぼっちで寂しがってるのかもしれない。


 ……んなわけないのは分かってるけど、可能性、ゼロじゃないだろ。

 あの日、あのままアメリカに行ったのかな? 衝動で? ……そうとは考えにくい。

 だけど、日本でましろを知らない人はいない。誰にも見つからず何年も過ごしていられるとは思えない。

 かと言ってビザは? 仕事は? お金はあるのかな? お金はあるか、印税あるもんな。

 とにかく龍の休みが取りづらかったんだけど、無理を言って一週間の休みをもらった。

 龍は結構人脈があってましろを見かけたって場所を聞いたし実際ましろはアメリカにいたらしい。

 だけど……

 この時アメリカにましろはいなかったんだ。まるでかくれんぼをしているみたいにましろはいつもするりと姿を消す。

 そして、思わぬところでましろの名前を聞くことになった。

 ましろは東京から車で二時間もかからないところにいたんだ。


「こんな近くにおったとか信じられる?」
「いや……だけどずっと住んでたみたいだな」
「まー、ビザもそんなに簡単に取れるわけちゃうしな、普通に考えたら田舎町でひっそりと暮らしてる方が現実的か」