「今回のこと、嘘ですよね?」
「ブラモンは解散しないですよね?」
「Mashiroの歌、聴けなくなったら私嫌です」
「もうVOICE聞けないんですか?」
それは私と同じように不安を抱えてるファンの子からのメッセージだった。ニュースを見てすぐに書いたのか焦っているのが字体からうかがえる。
ペラペラと一枚ずつ丁寧に読んで、一つの見覚えのある字に気がついた。
美鈴ちゃんだ……
「Mashiroさんお疲れ様です! ファーストツアーとってもよかったです。昔、Mashiroさんが路上で歌ってる頃にその声に惹かれてMashiroさんのファンになった頃のことを思い出しました。Mashiroさんの歌がどんどん沢山の人の心に触れていく度に喜びと同時にまるで自分の夢が叶っていくような達成感を感じていました。それと少し昔から知っていた優越感もあります(笑)」
美鈴ちゃんの手紙はいつもと変わらない私を元気付ける言葉だった。
そしてネガティブな発言は一切ない。
いつだって挫けそうになる私の心を美鈴ちゃんは力強く肯定し続けるんだ。
不安になりそうになっても美鈴ちゃんの力強さに根負けして私は自信を取り戻すことが出来るんだ。
「Mashiroさんの歌は世界一です。ずっと応援してます」
結びの言葉。いつも変わらないこの言葉のパワーは強大だ。
夜になり西山さんが戻ってきた。
「飯食った?」
「はい、食べました」
そして西山さんは話しだした。私達が知らなかった真実を。
「レドモンはファーストツアーをもって解散となった。……それを決めたのは……少し前、ドームツアーの前辺りかな」
その話は、あまりにも辛い真実だった。
「ずっと幸翔が辞めたいって言ってた。だけど事務所で止めていたし、一番止めてたのは紛れもなく……空だ。幸翔を辞めさせないように空は裏で色んな手を使って阻止してたんだよ」
言葉を選びながら慎重に話し続ける。
「結局、契約も残ってるし、そもそもスケジュールもびっちりで辞めることなんて現実的に不可能だった。相馬はどうにかして少しレドモンに休みを与えられないかスケジュール調整をしてたんだけど、稼ぎ頭だし、なかなか……そうさせてはもらえなかったんだよ」
そしてお茶を一口、口に含んで落ち着かせるように飲み込んだ。
「でも相馬は最後、自分の地位を捨ててレドモンに休みを与えたんだよ。相馬が辞めたのにはそんな意味も含まれてるんだよ」
「休むだけやったら解散せんでも……」
「それが、休むだけじゃダメなことになったんだ」
「ダメなことって?」
「空が………入院した」
「ええ?」
狼狽える私に両側から陸と龍が手を握る。
落ち着け、落ち着けって窘められた。
「もう限界が来てたんだよ」
「限界……?」
「喉。多分…もう………歌えない」
絶望の音を初めて聞いた。
ねぇ、神様、私は一生歌っていたいって思ってた。
でももうそれは望まない。
たとえ私の声が出なくなってもいいから、空さんの声を……返して。
「幸翔はもう限界に近付いてる空の喉を気にして休ませるために辞めるって言ってたんだよ。だけど空は絶対レドモンを守りたかったから幸翔を説得してたんだよ、幸翔だって本心は辞めたくないはずだし、楓雅の居場所もなくさないように」
「空さん……手術したんすか?」
「あぁ、手術はとりあえずは成功したよ」
「よかった……」
とりあえずは……
「なぁましろ、最後はお前のために歌ってたんだよ、力を振り絞って……」
空さんの最後の声、確かドームのスタンバイ直前
『大好き』
あの声が最後の声になるなんて想像もつかなかった。
これから声が出なくなる可能性を懸念して空さんは最後に私に伝えてくれたんだ。
「ブラモンは解散しないですよね?」
「Mashiroの歌、聴けなくなったら私嫌です」
「もうVOICE聞けないんですか?」
それは私と同じように不安を抱えてるファンの子からのメッセージだった。ニュースを見てすぐに書いたのか焦っているのが字体からうかがえる。
ペラペラと一枚ずつ丁寧に読んで、一つの見覚えのある字に気がついた。
美鈴ちゃんだ……
「Mashiroさんお疲れ様です! ファーストツアーとってもよかったです。昔、Mashiroさんが路上で歌ってる頃にその声に惹かれてMashiroさんのファンになった頃のことを思い出しました。Mashiroさんの歌がどんどん沢山の人の心に触れていく度に喜びと同時にまるで自分の夢が叶っていくような達成感を感じていました。それと少し昔から知っていた優越感もあります(笑)」
美鈴ちゃんの手紙はいつもと変わらない私を元気付ける言葉だった。
そしてネガティブな発言は一切ない。
いつだって挫けそうになる私の心を美鈴ちゃんは力強く肯定し続けるんだ。
不安になりそうになっても美鈴ちゃんの力強さに根負けして私は自信を取り戻すことが出来るんだ。
「Mashiroさんの歌は世界一です。ずっと応援してます」
結びの言葉。いつも変わらないこの言葉のパワーは強大だ。
夜になり西山さんが戻ってきた。
「飯食った?」
「はい、食べました」
そして西山さんは話しだした。私達が知らなかった真実を。
「レドモンはファーストツアーをもって解散となった。……それを決めたのは……少し前、ドームツアーの前辺りかな」
その話は、あまりにも辛い真実だった。
「ずっと幸翔が辞めたいって言ってた。だけど事務所で止めていたし、一番止めてたのは紛れもなく……空だ。幸翔を辞めさせないように空は裏で色んな手を使って阻止してたんだよ」
言葉を選びながら慎重に話し続ける。
「結局、契約も残ってるし、そもそもスケジュールもびっちりで辞めることなんて現実的に不可能だった。相馬はどうにかして少しレドモンに休みを与えられないかスケジュール調整をしてたんだけど、稼ぎ頭だし、なかなか……そうさせてはもらえなかったんだよ」
そしてお茶を一口、口に含んで落ち着かせるように飲み込んだ。
「でも相馬は最後、自分の地位を捨ててレドモンに休みを与えたんだよ。相馬が辞めたのにはそんな意味も含まれてるんだよ」
「休むだけやったら解散せんでも……」
「それが、休むだけじゃダメなことになったんだ」
「ダメなことって?」
「空が………入院した」
「ええ?」
狼狽える私に両側から陸と龍が手を握る。
落ち着け、落ち着けって窘められた。
「もう限界が来てたんだよ」
「限界……?」
「喉。多分…もう………歌えない」
絶望の音を初めて聞いた。
ねぇ、神様、私は一生歌っていたいって思ってた。
でももうそれは望まない。
たとえ私の声が出なくなってもいいから、空さんの声を……返して。
「幸翔はもう限界に近付いてる空の喉を気にして休ませるために辞めるって言ってたんだよ。だけど空は絶対レドモンを守りたかったから幸翔を説得してたんだよ、幸翔だって本心は辞めたくないはずだし、楓雅の居場所もなくさないように」
「空さん……手術したんすか?」
「あぁ、手術はとりあえずは成功したよ」
「よかった……」
とりあえずは……
「なぁましろ、最後はお前のために歌ってたんだよ、力を振り絞って……」
空さんの最後の声、確かドームのスタンバイ直前
『大好き』
あの声が最後の声になるなんて想像もつかなかった。
これから声が出なくなる可能性を懸念して空さんは最後に私に伝えてくれたんだ。